表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/279

0118 無料のおっぱいを見逃すとはなあ。俺も焼きが回ったかなぁ。無料なのになぁ

 ヴェロニクの祝福も一週間分の睡眠の代わりにはならなかったらしい。ノエラは俺の膝枕ひざまくら爆睡ばくすいしていた。俺は出来れば毛布でも掛けてやりたかったが、そんな物ここには無いので、代わりに着ていたぬののふくを掛けておく。


 しばらくの間は、何も起こらなかった。


「う、うう」


 やがて、壁際に倒れていたゴールドがうめき声を上げ始める。


「おっと()()()()気をつけな、敵はまだ近くに居るぜ」


 それを聞いたゴールドは身をひねって素早く立ち上がろうとしたが……足をもつれさせ、無様に転倒してしまう。


「うぐ……あああ!」


 魔力も体力も尽きているのか、回復呪文を知らないのか……ゴールドは這いつくばったまま、敵意に歪んだツラをこちらに向けた。


「お、おのれ弱き者が……」


 俺はただノエラに膝枕ひざまくらをしたまま、そちらを見る。上半身はシャツ一枚しか着てないから、ちょっと寒いんだよねー。


「足でも折れてるんじゃねえのか? 無理すんなよ」

「ふざけるな! 貴様など……我が力が戻れば一捻ひとひねりにしてやるというのに……!」


 手足でも縛っておけば良かったのかもしれないが、縄なんて物は都合よく落ちてはいない。ここが砦なら探せばあるのかもしれないが、今はノエラに膝枕ひざまくらを貸し続けたい気持ちの方が優勢だったので、俺は探さなかった。


 さて……一応聞いてみるか。俺はノエラが奪い取っていた青い瓢箪ひょうたんをちらつかせる。


()()()()よ、今こいつに吸い込まれている連中の名前を教えてくれるつもりはないか? 例えば……人間とか、犬とか。教えてくれたらその足に治療魔法を掛けてやるよ」

「なっ……!」


 ゴールドは苦痛と憎悪に顔をゆがめ、ますます敵意に満ちた目でこちらをにらむ。


「いいじゃねえか。取り引きだよ、取り引き」

「お断りだ……例えそんなものを知っていたとしても、貴様に教えるくらいなら、私は死を選ぶ」


 ああ、そう……まあそうだろうと思ったよ。


 だけどあのきつねっ子をこの瓢箪ひょうたんから救うには、どうしても彼女の名前を知らなきゃならねえんだわ。

 きつねっ子の言ってる雰囲気だと、この瓢箪ひょうたんの持ち主は今までにも何度も変わっていて、ゴールドもあの子の事はマジで知らないっぽいんだけどね。

 だけどワンチャン可能性があるなら、それを潰してはならない。


「そうか。じゃあ気が変わった」


 俺は右手をかざし、ゴールドに遠隔でしゅくふくを放つ。念のためパワーは最小限でお願いします、そう、そのくらい。


「ひッ……!」


 ゴールドは俺の手から放たれた光を攻撃魔法だと思ったのか、身を固くして目をつぶるが……やがて自分の足が楽になっている事に気づき、顔を上げる。へー、しゅくふくって魔族にも効くんだあ。


「何の真似だ……何の真似だ弱き者風情が! 魔族にとってこれ以上の屈辱は無い、貴様なんぞがこの私に情けをかけたつもりか!? 許さん、許さんぞォ!」


 ゴールドは今度こそ立ち上がり、俺を指差してえる。


「うるさいなあ。見て解んないの? 今いいとこなんだよ」


 俺は眠っているノエラを胸に抱き寄せ、いい子いい子と頭をでる。


「歩けるようになったんなら消えてくんない? 邪魔だから」


 ゴールドのほほが、怒りに痙攣けいれんする。


「その女……その女は悪魔(・・)のようだった! 昼夜を問わず追いすがり二言目にはウサジウサジと、ああもうその面と声は二度と御免だ……だがウサジ、貴様には必ず、必ず後悔させてやる、この私に人間の分際ぶんざいで情けを掛けてしまった事を!」

「情けなんて掛けてねえよ、早くどっか行けよ」


 あと後悔はめちゃくちゃしてる。何故俺はゴールドちゃんのおっぱいをんでおかなかったのか? あのFカップぴちぴちボディスーツのおっぱいが、ついさっきまでみ放題だったのに……ゴールドちゃん、もう一度気絶してくれないかなあ。みたかったなあ、Fカップのおっぱい。


「このままにはしない……ウサジ! 貴様はいつか必ずこのゴールドが殺す!」

「お前、もうちょっと妹と仲良くしろよな」

「や……やかましいッ!」



 ゴールドが去って、辺りは本当に静かになった。

 この場所はシャツ一枚では少々肌寒(はだざむ)いのだが、ノエラを胸に抱えて上からぬののふくを掛けていたら、だいぶ暖かい。


 そしてノエラの穏やかな寝息を聞いていたら、俺も少しだけ眠くなって来た。このままヴェロニクに会いに行くか……


 いやいや、さすがに俺まで眠る訳には行かないだろ、ノエラも青い瓢箪ひょうたんも、しっかり守らないといけないからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
[一言] 地味に今回みたいな主人公が助けてもらうしかないような展開になるの好き しっかり助けてもらえるとこまで含めて
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ