欲
この話は正直、前話の蛇足です。
綺麗には終わりません。
読まなくていいですよ。
中身の無い話ですから――
私には好きな人がいた。けれど、彼は絶対に手に入らないと思っていた。
ずっと見ていたから判ってしまう。彼はあの子を見ている。私になんて振り向くことはない。
叶わないと解っているのだから、私は何も望まなかった。望まなかったから2人には私から離れて欲しかった。
なのに、彼は口に出さないけれど3人でいることを望んでいる。それがどれだけ罪なことか解っていないんだろう。
そういう人だから、私は好きになった。
2人になりたかった。
――ふっ、罪人は私か。
⁂
「こんなところで何をしているんですか?」
私は泉の畔で倒れ込んでいる少女に声を掛けました。
「眠いから、寝てるのよ」
「冗談にも程がありますよ……」
「ははっ……ちょっと、恨みを買っちゃったと言うか、何と言うか……」
息を切らしながら話す少女の周りでは、真紅の液体が雪をじんわりと溶かしています。
――ああ、この子はもうすぐ死ぬな。
手当しても手遅れだなと思った私は、女神として何かできることは無いか問いました。
「あなたは、女神様なの?……もしかして、月の女神様?」
「その通りですよ。私は月の女神です。良く分かりましたね」
そう言って瀕死の少女に尋ねると、彼女は小さく笑みを浮かべました。
「だって、まるで月みたいな美しい瞳を持っているんだもの」
彼女はそう言って「本当にいたんだ」と小さく呟きました。
「……ねぇ、最後に私の願いを聞いてくれる?」
「いいですよ。あなたの願いを叶えます。――女神ですからね」
読みました?
蛇足でしょう?
では、次の作品で会いましょう。




