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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第一章

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美の神と二人のロリババア

「喰らえ! インディグネーション!」

 魔法を唱えられた瞬間、頭上がパカッと開いた。
 日差しが入ってこない森の茂みを突破して、空から稲妻が落ちてくる。

「ダブル!!!」

 一撃で終わらなかった。
 魔力を振り絞った神罰の雷は連続で降り注いできた。

 空が雷鳴で轟き、地上は衝撃に揺れて放電する。
 雷の流れ弾で一部の木が引火して森が燃え上がった。

「はあ……はあ……これで、どうだ……」
「……」
「――なっ!」

 爆煙がはれていく中、徐々に浮かんでくるシルエットに勇者が戦慄した。

「む、無傷……だと。馬鹿な、スライムが……ただのスライムが……」

 愕然とする勇者。すでにおれがただのスライムじゃないって分かってるからインディグネーションを放ったんだろうが、それでもまだこの姿に囚われていた。

「お前……何者だ」
「リュウ……ただのスライムだよ」

 名乗ってもまだ愕然としている勇者。
 こいつの事は知ってる、その強さ故に魔物の巣にはいつもソロで侵入する勇者トール。
 またの名を獄雷トール。強さも攻撃性も高く、目的は魔物の殲滅という、危険度Aランクの勇者だ。

「わりぃな、お前を通す被害が大きくなりすぎる」
「くっ!」

 息をすう、スライムの体が膨らむ。
 直後、口から炎を吹いた。魔法じゃない、ただの炎吹き。
 転生直後に母さんから「余の息子ならこの程度出来てあたり前だ」とスパルタで叩き込まれた特技だ。

 白く輝く炎がトールを包む。
 トールはもがく、レジストしようとする。

 必死の抵抗むなしく、一分も経たない内にトールは焼き尽くされ、姿も形も残らなかったのだった。

「ふう……」
「みてたよーん」
「うわっ!」

 いきなり背後から抱きつかれた。
 よく知っている声、そしてよく知っている行動。

 抱き上げられたまま顔を向ける。
 ヴァンパイアのヒメだった。
 森の重鎮にして実力者、その力は母さんと並んで災害級の大モンスター……なのだが。

「何するんですかヒメさん」
「ノンノンノン、姫さんじゃなくて、ヒ・メ。リピートアフターミー」
「いやしかし……」
「呼ばないと体中の体液吸い尽くしちゃうゾ♪」

 可愛らしい言い方、だけど内容はちっとも可愛らしくない。
 スライムは99%液体の様なものだ、いやもっと多い。キュウリでも99%だからもっと割合大きいだろう。
 ヴァンパイアの彼女はスライムの体液に興味があるとは思えないが、完食されるのはごめんだから素直に従うことにした。

「わかりました……ヒメ」
「うーん、いいこいいこ。チュッ」

 ヒメはおれを目一杯撫でて、(からだ)にキスをした。
 軽くすったので、音が立ってスライムの体が「どぅるん!」と波打った。
 他人ごとだったらちょっと面白いと思ったかも知れない光景だ。

「それよりどうしたんだよヒメ、こんなどころまで」
「お散歩、それに物色」
「物色?」
「うん! 勇者の血をね。知ってる? 人間の血って男よりも女の方がうまいんだよ」
「へえ、そういうものなんだ。男はまずいのか?」
「まずいね、なんか変な臭みがあるんだよね。あっでも、アレをちょぎった男の血はそこそこいけたよ」
「あれ?」
「あれ」

 ……あれ?
 …………あれ(ち○こ)か!?

「どったのリュウ、顔が青いよ」
「その話はちょっと厳しい」

 転生する前男だったからな、ち○こちょん切るとかそう言う話は聞いてるだけでズキズキする。
 股間もそこにぶらさがってるものはもうないけど、それでもズキズキと幻肢痛がする。

「よ、よくそんなの分かったな」
「人間が同じことやってたもん」
「人間が?」
「人間って食用に牛を飼うじゃん? 肉用の牛はオスのあれをちょん切ったら肉がやらかくなるって聞いてさ、それでためしてみたんだ」
「……」

 まだズキズキとした。
 試されたひとの冥福を祈るよ。いや死んでないかもしれないが。
 ……死んでた方がマシなのかもしれないけど。

 ヒメはおれを抱き上げたまま、歩き出す。

「まあでも普通に女の子の血の方がうまいけどね、しかも処女」
「テリーみたいな事言ってるな」
「だっておいしーんだもーん。でもさ、勇者って処女すくないんだよね」
「そうなのか?」

 それは知らなかった。

「人間って戦った後とか昂ぶるらしいからねえ。戦闘になれてる勇者ほどそりゃあズッコンバッコンだよ」
「生存本能とかあるからな」

 危険になった時ほど子供が出来やすい、できるような行動をしたくなるのが人間だ。
 なるほど、それで行くと勇者は処女(童貞もだが)が少ないのは納得だ。

「唯一処女率高いのは僧侶だけど、あの連中は神に仕えてて加護もらっちゃってるから血吸いにくいんよね」

 かわりにゴブリンのテリーが美味しく頂くけどな。

「もう、リュウのせいで処女の血吸いたくなってきたじゃん」
「おいおい、おれのせいなのかよ?」
「うー、吸いたいよー。バージンブラッドの一番搾りがほしーよー」

 おれを抱きしめたまま呻くヒメ。幼げな姿と相まって小娘が駄々をこねているようにも見える。……これで御年数百歳の大パンパイアなんだよなあ。
 しかし……バージンブラッドの一番搾りって、その言い方だとジュースかなんかに聞こえるな、しかもちょっとうまそう。

「もう! こんな日に限って侵入してくる勇者に非僧侶の処女とかいないんだから。はあぁぁぁ……」

 深い深いため息をつくヒメ。
 本当に吸いたいんだろうな。

 人間は三大欲求がある、性欲と食欲と睡眠欲だ。
 パンパイアにもそれがあって、性欲と食欲の両方が吸血だ。
 その両方が出来ないのはつらいんだろうな。

「……なかったら作ればいい」
「作る?」

 きょとんとするヒメ、腕の力が緩んだので、おれは跳び降りて横に向かってピョンピョンとんで行った。
 ヒメはゴスロリ服をなびかせて後ろについてくる。

「作るってどういう事?」
「見てな……ほら、あそこにはぐれた女勇者がいるだろ」
「あの盗賊っぽいおばさんの事?」

 頷くおれ。
 ちなみにその勇者の見た目は三十路くらいでまあおばさんだろうが、実年齢はヒメの方が十倍生きてる。

「あんなのダメだよ、しかも匂いが普通に非処女だし」
「いいから見てて」

 おれはピョンピョンとんで近づいていった。
 強さは大した事のない女勇者、トールの10分の1程度だ。
 彼女にシンプルに体当たりをして、気絶させた。

 地面に仰向けになった女のへその上にのった。
 魔法を使う、複合の魔法陣を展開して、魔力を変換。

 その魔力が女勇者の頭上で具現化し、金色の輝く液体になった。

「うわあ、何それ」
「おれの魔力を精錬したものだよ、これを飲ませれば過剰回復して若返る事ができる……とと、量が多すぎたな」

 魔法をとめて、精錬した金色の水を一部すてた。

 女の体の上をはって、顔に近づき口を開ける。
 金色の魔水を口の中に流し込むと――すぐに効果が現われた。

 荒れて小じわが見えてきた肌が瑞々しくなって、体が全般的に若返っていく。
 三十路だったのが、ほんの十秒程度で10歳程度の女の子になった。

「おお! この匂いは処女じゃん!」
「匂いってすぐにかわるものなのか」
「ねえこれ吸ってイイの? いいよね。いっただきまーす」

 ヒメは若返った女の子に飛びつき、首筋にかみついた。

「ん……くぅ……はあぁ……」

 意識のない女の子、しかし血をすわれだした瞬間なまめかしいこえをあげだした。
 二人とも服をきているし、いってしまえばパンパイアの食事なんだが。
 ちょっとした濡れ場に見えてドキドキした。

 やがてヒメは満足した顔で首筋から離れて、意識はないが上気した顔で悶えている女の子のほっぺにキスをした。
 そうしてから、おれを再び抱き上げて、ぎゅっとした。

「ありがとうねリュウ」
「どういたしまして」
「こんな事もできるなんて、リュウは世界中の女の神様だね」
「やめてよそれ、超面倒臭い」

 美容と若さの神……それに群がってくる女達。
 ちょっと考えただけでその面倒くささにおれはものすごくぞっとしたのだった。
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