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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第四章

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闇の中の黄金竜

 スーヨンの村に向かう道中、シェスタとテリーにリリ、そして俺の合計四人。

 シェスタがのっしのっしと前を歩き、テリーとリリが後ろについていく。
 渋る俺は、幼なじみの二人に無理矢理連行されてる、って形だ。

「まったく、何だってお前らも来るんだよ」
「いいじゃねえかよ、おっちゃんだけいい思いはずるいぞ」
「そうそう。村の宴会に招待されたんでしょ。あたし達も普段から戦ってるんだから、ちょっとくらいは招待される資格があるもん。ねっ、リュウもそう思うでしょ」
「俺は別に――」
「それよりスーヨンの村の宴会ってどんなのかな! 村長の娘とかどんななのかな」

 またそれかよ。
 好きだなあ、村長の娘とやらが。
 なんでそれがすきなのか俺にはちっとも分からないけど。

「村長の娘は知らないけど、確か小さな教会があったはずだよテリー」
「マジか! って事はシスターもいるのかな! 俺、清らかなシスターも大好き」

 なんでもいいのかよ。

「おまえらくるのはいいけど、主賓はおれ様だからな。でしゃばるんじゃねえぞ、いいな」
「「はーい」」

 テリーとリリは明るく返事をした。
 本当に分かってるのか、って不安になってくる返事だ。

     ☆

 スーヨンの村に着いた頃には日が暮れていたが、村は明るかった。
 広場を中心にあっちこっちにかがり火が焚かれていて、その広場は大宴会の準備が出来ている。
 そして村長を始め、村人達が綺麗に整列してシェスタを出迎えた。

「ようこそスーヨンの村で。お待ちしておりましたですだ」

 先頭に立つ男、この村の村長が恭しく頭を下げた。

「おう、出迎えご苦労。すまねえが、こいつらも適当に飲み食いさせてやってくれ」
「はい! シェスタ様の部下の方々ももてなさせてもらうですだ」
「それじゃ案内してくれ」

 大股で進むシェスタの後についていく。
 傘下に加わったスーヨンの村。新しく主になったシェスタの接待の為に、この宴会を開いたって話した。

 広場には様々なごちそうが並んでいて、こういった村にありがちな素朴な踊り子と、簡単な打楽器と奏者がもうスタンバっていた。

 シェスタが到着すると歓迎の音楽が始まり、踊り子が踊り出した。
 それとは別に、若い少女達が出てきて、シェスタを取り囲んできゃいきゃい言い始めた。

 どこからどう見ても文句のつけようがない接待だ。
 シェスタは主賓の席に導かれ、俺たち三人は少し離れた所に案内されて、ごちそうが運ばれてきた。

「ああん、ネズミ様とっても素敵ですわ」
「おおう? そうかそうか?」
「細長い顔に髭、それに出っ張った前歯。もうたまらないですわ」
「あーははははは、お前見る目があるな。名前は」

 女の子達の接待にご機嫌なシェスタ――いやいや。
 普通の人間の女の子がそんなところ素敵って言うわけがないって、完璧に接待モードだって。
 でもシェスタは嬉しそうだ。それならそれでいいかって思う。

「なあなあ、この村ってシスターがいるんだよな。どこだよ」
「その服可愛いね。自分で作ったの? ねえねえその作り方教えて?」

 テリーとリリも、村人に囲まれて機嫌は上々のようだ。

 みんなが楽しそうにしていた。
 俺は念の為に魔法で村全体を一度調べて見たが、村人達に敵意はなく、何かがしかけられてる事もなかったから。
 安心して、宴会を適当に付き合ったのだった。

     ☆

 深夜の街広場。
 人間もモンスターも、俺以外全員が酔い潰れていた。

 最初はシェスタに接待をしていた村人だったが、途中からシェスタが「俺の酒が飲めねえのか?」モードに入って、村人達にしこたま飲ませた。

 正直ウザイ絡み酒だけど、村人からすれば支配者の大モンスター(、、、、、、)がそれをやってくることにむしろ親しみを感じたようで、男も女も加速度的にシェスタと仲良くなった。

 そうして今、全員が酔い潰れている。

 俺はぴょんぴょん跳ねて、村の中をぶらついて回った。
 ちょっと回るだけでもこの村の日常が見えて来る。
 農業と狩猟が半々、あまり貨幣を使わないでも日常が成り立つタイプの村だ。

 貨幣を使わないというのは、勇者があまり来ないと言うことでもある。
 土地に根を下ろす人間とは違って、勇者の大半は流れ者、どうしたって金を使う様になってる。

 だからこそ降伏してきたのか。

 ふと、気配に気づく。
 歩みを止める、気配を探る。

 東から、何者かがかなりの速度で近づいてきている。
 おそらくは人間、そして相当の敵意を感じる。

 この村に向かって放たれた敵意だ。

 こういうこともよくある。
 人間なのにモンスター側につくことをおもしろく思わない連中が腹いせに襲撃する事がよくある。
 そういう輩から村を守るのがモンスターだ。

 俺は急いで広場に戻って、シェスタの所にきた。

「シェスタさん! おきて! 敵が来たよ」
「むにゃむにゃ……カテリナちゅわーん」

 シェスタは酒瓶を抱いて、その瓶にキスをしていた。
 何回か起こしたがおきなかった。

 まいっか、酔い潰れたならつぶれたで、そのまま操れば……いや違うぞ。

 俺は周りを見た。
 村の全員が酔い潰れている。
 酒を飲めない子供達も踊ったり歌ったりで、疲れ果てて寝ている。

 この村でおきているのは俺だけだ。

 誰も……見ていない。

 ならば。

 俺は力を解放して、敵が向かってくる方角に近づいていく。
 ドラゴンの力、ほぼ全力の力。
 誰も見ていないのだから解放しても平気だ。

 スライムの体から立ちこめる力は、闇夜の中で黄金の竜をかたどった。

 念の為にいくつか魔法をかけておいた。

 消音の魔法、耐震の魔法、防風の魔法。
 暴れても寝ている人間がおきないように、副次的なものが届かないように何重もの障壁をはった。

 そして敵に向かっていく。
 数は20。
 たいした数じゃない、ドラゴンの力を解放した俺はまさしく一ひねりで、そいつらを壊滅させた。

 障壁は完璧で、村の東側の外を不毛の地に変える程の攻撃をしても、村人は一人もおきてこなかった。

     ☆

 ナックル・オンリー。
 唯一生き残った男は足を引きずって、来た道を逃げ帰った。
 同行者は全滅した、街で大金払って雇った傭兵だが、何も出来ずにモンスターに殲滅されてしまった。

 ナックル自身も、大けがを負っている。
 持っている回復薬を全部使って、命からがら逃げ出す程の大ダメージ。
 スーヨンの村にいるモンスターは予想をはるかに上回っていた。

 予想外な事はもう一つある。
 ナックルは受けた攻撃にデジャブを感じた。
 黄金の竜のブレスだが、それをガードした瞬間懐かしさにも似た何かを感じた。
 まるで師匠に殴られたような、そんな感覚。

 何故ドラゴンに攻撃されて師匠を連想するのか、逃走を続ける彼にはわからなかった。

 ナックル・オンリーは好奇心旺盛で、素直な青年だった。
 分からない事はわからないと素直に認め、わかる人にきく、それが彼だ。

 ナックルはその謎を解くため、久しくあっていない師匠を。
 アレックスを訪ねると決めたのだった。
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