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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第四章

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女王と脱衣

「リュウ! 助けてくれよリュウ!」

 裏クリスタルタワー、疑似太陽の下で満喫していた俺のマッタリはテリーの騒々しさに破られた。
 騒がしいのは、表からやってきたテリーだ。

「どうしただよ」
「いいから、こっち来いよ」
「だからどうしたんだ――ってわわわ!」

 テリーは問答無用とばかりに、ユーリエの腕の中から俺を強引に取り上げた。
 両手で持ち上げ、頭の上に担いで駆け出した。
 そのまま裏クリスタルタワーを出て、クリスタルタワー一階に戻ってきた。

「みんな、リュウを連れてきたぞ」
「「「おおお」」」

 そこで待っていたのはゴブリン達だった。
 シェスタについてきたゴブリンほぼ全員、このクリスタルタワーにいるゴブリンが全員勢揃いしていた。

 どういうわけか、みんな瞳を輝かせて、何かを期待するような目で俺を見つめている。
 若干悪い予感がする、こういうのって面倒臭い事になりそうな気がする。

「おいテリー、これはどういう事なんだよ」
「これをみてくれよ」

 テリーはこん棒を見せた。
 俺が作ってやったスライム武器のこん棒だ。

「これがどうしたんだ?」
「これ、リュウが作ってくれたヤツだろ?」
「ああ」
「あのオーガの姉ちゃんの武器もリュウが作ったんだよな」
「オーガの姉ちゃん? クリスのことか?」

 テリーが大きく頷く。

「あのねーちゃんの武器みたいな特殊機能をこれにもつけてほしい!」
「なんだ、そういうことか」

 俺はホッとした。
 いきなりひったくられてここに来たから身構えたけど、そういう話か。

 改めてゴブリン達をみる、全員が期待の眼差しをしている。
 全員分作らないといけない流れだが、まあ、その程度の事なら大して面倒じゃない。

「で、どういう機能をつけてほしいんだ?」
「「「脱衣!!」」」
「うおびっくりした!」

 まるで示し合わせたかのように……いや多分してないだろう。
 ゴブリン達は全員一緒に心からの叫びを口にした。

 俺と親しいテリーがゴブリンを代表して更に続く。

「こん棒に脱衣機能をつけてほしいんだ。これを使って殴ったら相手の服が脱げるように」
「なるほど」

 頷き、ゴブリン達をみる。さっきにもまして瞳を輝かせている。
 相変わらずなゴブリンたちに、ちょっとだけクスッときた。

「分かった、やってやる」
「本当か!?」
「ああ、そのこん棒を地面に置いてくれ」

 テリーは言われた通り、自分のこん棒を地面に置いた。
 俺はそれを見つめて、少し考えた。
 武器改造のプランを頭の中で練って、それがまとまったから、体全体でこん棒を呑み込んだ。

 体の中でこん棒をこねくり回して、イメージした通りに能力を付与してから、吐き出す。

「おっと! 出来たのかリュウ?」

 吐き出したこん棒を慌ててキャッチするテリー、瞳の期待の色は最高潮に達していた。

「ああ。こん棒が違う色になってるだろ?」
「どれどれ……本当だ、まん中から線を引いたみてえに違う色になってる。赤と青だな」
「青の方で殴れば今まで通りのこん棒、普通に物理ダメージを与える。赤の方で殴ったらダメージはゼロだけ殴られたところだけ服がはじけ飛ぶようになってる」
「すげえ!」

 テリーが更に興奮した。
 俺は他のゴブリン達の方を向いて。

「みんなも武器を出してくれ、まとめて改造するから」

 ゴブリン達は言われた通りこん棒を出して、地面に置いた。
 小山のように積み上がったこん棒をまとめて呑み込んで、一つずつ改造して、吐き出してかえす。

 たいした改造じゃないから、すぐに終わった。
 ゴブリンの全員の手に武器が渡った。

「これで本当に服だけ脱げるのか?」
「こっちで殴っても痛くないぞ」
「本当だ! すげえ全力で殴っても痛くねえ」

 早速試し撃ちをするゴブリンたち。
 そこに運良く――向こうからすれば実に運悪く、一人の勇者が現われた。

 年は二十歳前後、金色の長髪をなびかせ、上乳を強調している様な気品のあるドレスを纏い、手には鞭を持っている。
 どこぞの貴族のように見え――。

「「「凌辱映えする女王キタ━(・∀・)━!!!!」」」

 ゴブリン達は一瞬で沸いた。

 え? 女王なのか? 貴族っぽいのは分かるけど女王要素何処だ?

 俺が不思議がっていると、ゴブリン達は一瞬で勇者に群がっていった。
 びっくりする位統率がとれていた、全員がこん棒の赤い方で殴りかかっていた。

 さすがゴブリン、ぶれないなあ。
 俺は手出しをしないで見守った、勇者は強く、ゴブリン達を軽くあしらって鞭の反撃で倒していたが、やはり多勢に無勢、ちょこちょこと攻撃を食らってしまう。

「――っ!」

 攻撃はもちろん赤の方、殴られたところのドレスが破けて消えて、しかし肉体にダメージがないことを察した勇者は顔色を変えた。
 まあ、そんな武器でやられたら顔色の一つもかえるわな。
 その上ゴブリン達が。

「ひゃっはー、新鮮な女王だ!」

 とか意味不明な言葉を口走って、集団で好色な表情で攻撃している。
 普通の女だったら逃げ出してるところだ。

 その勇者は壁際に追い詰められた。高貴なドレスはこん棒に殴られボロボロだ。
 ゴブリンが徐々に包囲網を狭めて、勇者は苦虫をかみつぶした顔で考えた。
 そして。

「……この身を汚されるくらいなら」

 そう言って魔法を放った。
 渦巻く炎、炎の魔法だ。
 かなり強力そうな魔法にゴブリン達は一斉に身構えたが、それはゴブリン達に向かって放たれる事はなかった。
 勇者は自分に向かって魔法を放った。
 業炎はたちまちその身を包み、肉を焦がす匂いを塔に充満させた。

 自決、か。

 直前の台詞を聞いても多分そうなんだろう、ゴブリン達の目的を察し、それをやられるならいっそ――って事だ。
 それはすごく正しい、ダンジョンの中で死んでも復活出来る勇者的にすごく正しい。

 ゴブリン達にはご愁傷様だけど――。

「おい聞いたか」
「あの台詞を久しぶりに聞いたぞ」
「この身を汚されるくらいなら……くうぅ! これだけで白米三杯はいけるぜ」

 ――でもないみたいだ。
 勇者が最後に残した台詞にゴブリン達は満足してるみたいだ。
 何が琴線なのか、相変わらずよくわからない種族だなあ。

 よく分からないけど。

「ありがとうリュウ! こいつはすげえよ」
「「「ありがとう!!」」」

 テリーの音頭で、ゴブリン達は俺に礼を言ってきた。
 満足してもらえたみたいで何より。

 俺は適当な事をいって、ゴブリン達に別れを告げて、裏クリスタルタワーに戻ってマッタリを再開させたのだった。

     ☆

 メアリー・グレイ・ステンキル。
 その名の通り、勇者でありながらステンキル王国という国の女王である。

 女王でありながら、単身で数々のモンスターを葬り、多くのダンジョンを攻略した勇者としても有名な女傑だ。
 そのメアリーがある男に会いにいこうとしている。

 手に木片を持っている。
 赤と青、魔力で変質させられた武器のかけらだ。
 彼女がダンジョンから持ち帰った――素早い判断で持ち帰ったモンスターの武器のかけらだ。

 それを持って会いに行こうとしている男の名はアレックス。
 師匠の後を継ぎ、現在はナンバーワンの勇者としてもっとも有名な男。

「この気配……出来たばかりの気配……それが意味するものは?」

 つぶやくメアリー。
 経験豊富な勇者である彼女は自分が理解した(、、、、)事に違和感を矛盾を感じた。
 その事を、最も詳しいであろうアレックスに聞きに行こうとした。

 若干悪い予感がする、こういうのって面倒臭い事になりそうな気がする。

 リュウの予感は、本人の与り知らぬ所であたりつつあった。
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