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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第四章

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 クリスタルタワー一階、俺は久しぶりに裏から出てきた。
 いつもの様にユーリエに抱っこされて移動する、そのユーリエの足元にアリがいた。

 ファイヤーアントの子ども、未来の女王。
 ケーキを食べさせて可愛くなったアリはつぶらな瞳で俺を見あげていた。

「ピキ?」
「これからはこっちで暮らすんだ」
「ピキキ」
「心配するな、暮らすのがここになるだけだ。ケーキとかはちゃんと用意してやる」
「ピキ♪」

 子どものアリ――ドルチェと名付けた子は笑顔になった。
 まだ生まれたばかりの子どもって事もあって、本人が一番気にしているケーキがある事が分かったら上機嫌になった。
 現金だが、子どもらしくていい。

「おーい、リュウ」
「こっちに来たんだ」

 遠くからゴブリンのテリーと、インプのリリがこっちにやってきた。

「なんだこいつは」
「ファイヤーアントだ。知ってるだろ」
「ファイヤーアント……ってなに?」

 俺はずっこけそうになった、リリは空中に浮かんだまま器用にずっこけた。

「忘れちゃったのテリー? 前に勇者を食糧として集めてたじゃない」
「ああ! あれか」

 リリに言われてその事を思い出すテリー。
 そう、ファイヤーアントの一件はクリスタルタワーのモンスターたちもある程度は知っていることだ。
 だからこそドルチェを表に連れてきた。

「こいつがそのファイヤーアントなのか?」
「その女王の、子どもだな。大人になって独立するまでここで預かることにした」
「なるほど」
「シェスタさんと一緒だね」

 テリーとリリは納得した。
 それと同時に他のモンスターがわいわい集まってきた。
 ここにいるメンツはディープフォレストから独立してきたのがほとんどだから、ドルチェの事情もすぐに受け入れることが出来た。

『それだけじゃありませんよねスライム様』
『まあな。裏にいたんじゃ実戦経験が積めない。将来的に独立するならこっちの方がいい経験になるだろ』

 それで何回も何回も、多分ものすごい回数勇者に殺されるだろうけど、クリスタルタワーの中にいる限り復活出来るから問題ない。

『スライム様ってやっぱりスパルタです』
『本人のためだ』

 ユーリエにそう言って、ドルチェ達の様子を一歩引いた所から見守る。
 ケーキのせいで可愛らしい姿になった事もあって、クリスタルタワー一階の下級モンスターに混ざっているとすごくなじんで見える。

 これなら大丈夫か、と思ったその時。

「ここがクリスタルタワーか」
「アリは何処だ」
「あ、あんちゃん。あれじゃないのか?」

 勇者が塔に侵入してきた。
 三人組の勇者、普通なのとマッチョと、おどおどしてるデブの三人組だ。
 三人とも若いが、やり手に見える。

「間違いない、ファイヤアントだ」
「よし、やるぞ」
「まってよあんちゃん、ぼくは準備が――」

 勇者達が襲いかかってきた。
 見込み通り結構強い連中達で、ゴブリンやインプ達はあっという間に蹴散らされて、ドルチェもやられてしまった。

「よし、これでてっしゅだ」
「ダメだよ、出られないよあんちゃん」
「なに? どういうことだ」

 出ようとする勇者たちが慌てる。
 このクリスタルタワーはダンジョンスキル・『引き返し禁止』によって、勇者は引き返す事ができない仕組みだ。
 出るにはどんどん上に上がって、ダンジョンをクリアするしかない。

 その事を知らない三人が慌てる。

「なんだなんだ? 騒がしいじゃねえか……って勇者かよ」

 塔の上からなじみのダミ声がして、大ネズミが降りてきた。
 クリスタルタワーのボス、ビッグマウスのシェスタだ。

「シェスタさん!」
「シェスタさんが来た、もう安心だ!」

 生き残ってるモンスターたちがシェスタの登場に沸いた。
 シェスタは自信たっぷりの顔をして、勇者達に近づいていく。

「おい勇者、このクリスタルタワーで好き勝手は許さねえ――うごっ!」

 シェスタはやられた。三人組のうち、一番気弱そうなデブの一撃で沈められた。
 ものすごい勢いで吹っ飛び、塔を横切って反対側の壁にめり込んだ。

「シェスタさん!」
「大丈夫ですか!」

 声を上げるモンスター達。
 まったくもう。

 俺は目を閉じて、察知されないようにこっそり魔法を使った。
 いまから何をしようとしてるのかを知ってるユーリエは俺を抱っこしたまま、さりげなく注目されない物陰に隠れた。

 魔法で気絶しているシェスタを操縦する。

「なんだ、結構やるじゃねえか。見くびっていたぜ」

 シェスタが立ち上がった頃で、モンスター達は二度沸き上がる。

「おいパン、そいつを黙らせてろ」
「わ、わかったよあんちゃん。おいそこのネズミ――」

 シェスタはものすごい勢いで――吹っ飛ばされた時以上の勢いで勇者に突進した。
 兄たちから任されたデブを体当たりで吹っ飛ばして、同じように壁にめり込ませた。

「パン!?」
「お前何者だ」

 残った二人がシェスタを睨む。

「おれ様はシェスタ、ビッグマウスのシェスタ」

 シェスタに名乗らせて、同じように残った二人も瞬殺する。
 モンスターたちが大いに盛り上がった。

 毎回一度倒されてから復活して、その後きっちりと勇者を全滅させる劇場型のボス。
 自分達のボス、シェスタに惜しみない歓声を送った。

 これがクリスタルタワーの日常。
 俺が住むダンジョンの日常。

 今日も、変わらぬ一日を過ごしていた。

     ☆

 クリスタルタワー、いま人間達の間で最も注目されているダンジョンである。
 きわめて新しいダンジョンにもかかわらず、未だに完全攻略した者がいないという難関。
 そればかりか、その特殊な構造により、生きて帰れる確率すら0%という超難関ダンジョンだ。

 それがいま注目されだした。
 歴戦の勇者達が注目しだした。

 その中にアレックスという。
 ある意味、このダンジョンにとって最もやっかいな男が含まれていた。
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