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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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エピローグ、親から子へ……

 クリスタルタワーの異空間。
 土地神のじいさんに、ファイヤーアントの女王が無事に卵から孵った事を報告した。

「よくぞ最後まで守り通してくれた、礼を言うのじゃ」
「あれでよかったんだな」
「うむ、わしの旧知も喜んでいるのじゃ。アリの血脈がつながったと、な」

 なんでそこまでこだわるのか――を聞こうとしたけどやめた。
 多分聞いたら面倒臭いことになる、そして聞いてしまったら巻き込まれるに決まってる。
 好奇心はスライムを殺す、気にしないに越した事はない。

「何か礼をせねばな」
「いいよ。それよりもしばらくの間ほっといてくれ、面倒臭い事が無いのが一番の礼になるから」
「欲がないのじゃ。それでよいのか?」
「……カミサマにはわからないと思うけど、暇ってのはこの世で一番の贅沢なんだ」
「ふむ、そこまで言うのなら無理強いはせん」

 納得してくれたっぽい土地神に別れを告げて、俺は異空間から裏クリスタルタワーに戻った。

「ピキー♪」

 戻った瞬間、何かにタックルされた。
 よく見るとあのファイヤーアントだ。
 アリは俺に飛びついて頬ずりしてくる、昆虫特有の外骨格がゴリゴリ削ってくる。

「こらこら、痛いからやめろ」
「ピキ……?」
「いやそこまで落ち込まんでも、しかってるとかそういうわけじゃないんだ」
「ピキー♪」

 更に大喜びして俺に頬ずりしてくる。
 結構なサイズのアリだが、ケーキ食でデフォルメされた事もあって、仕草と相まってまるで子犬っぽい。

 あの後、こいつをつれてクリスタルタワーに戻ってきた。
 あそこに置いておくわけにはいかなかった。
 ファイヤーアントの女王はふかしてから女王としてアリを生み始めるまでそれなりの時間がかかる。それまでは無防備のままだ。
 ケーキをやって懐かれた事もあって、いずれ成虫になってアリを生んで自分で新しいダンジョンを作れる様になるまで、引き取って育てることにしたのだ。

 アリの女王にふさわしいように力をつけさせて、育てることにした。

「ピキキ」
「甘えすぎだ。女王になるんだからそれ相応の威厳がつくように――」

 そう言いかけた俺は一瞬固まった。
 頭の中に白い閃光が突き抜けていって、何かを思い出した。

「ピキー♪」

 それを狙われて、アリに更にじゃれつかれた。

「お帰りなさいスライム様――わわ! スライム様がチーズみたいに削られてる!?」

 じゃれつかれるのも気にならない位、その事(、、、)を考えた。
 立ち上がる、俺にしがみついてたアリが地面におちた。
 めげずに再び飛びかかってくるアリをひょいとかわして、魔法を使う。

「大丈夫ですかスライム様」
「ちょっと出かけてくる」
「え? 出かけるってどこへ――あっスライム様!」

 滅多に使わない瞬間移動の魔法を使った。
 魔力が俺の体を包み、浮遊感とともに運んでくれた。
 やってきたのは久々のディープフォレスト、マザードラゴンの前。

 濃密な魔力、そして圧倒的な存在感。
 マザードラゴンは静かにまぶたをあけて、ぎょろり、と俺を見た。

「何をしに来た息子よ」
「一つ聞きたい」
「なんだ」
「なんで俺を育てた」
「……」

 マザードラゴンは押し黙った。
 力と知性を同時に併せ持った瞳で俺をじっと見つめるが、何も話さなかった。

 やがて。

「息子を育てるのに理由は必要か?」
「ユイとの教育方針の違いは?」
「息子と娘は違うものだ」
「……そうかよ」

 シンプルなやりとり、しかしそれで分かった。
 マザードラゴン、母さんははぐらかすだけで何も喋らないだろう。
 前から俺とユイの接し方が違うって気にはなってたけど、それがアリの事でこう思うようになった。

 母さんは、俺をこんな風に(、、、、、)育てたんじゃないかって。

 それを聞きに来た、だが母さんは答えるつもりはないようだ。
 好奇心はある、それを知りたい。
 が母さんは答えないだろう。

「……じゃあな」

 俺は好奇心を抑えて、魔法で再び裏クリスタルタワーに戻った。

     ☆

 リュウがいなくなった後、マザードラゴンの前に一人の少女が現われた。
 ディープフォレストの大幹部、上級魔族ヴァンパイアのヒメ。

「言ってあげなくてよかったの?」
「何をだ」

 マザードラゴンはぎょろり、と数千年来の友人を睨んだ。

「一目見て分かった、この子は何かあると黙ってられない性格なんだって」
「……」
「どうせあれこれに首を突っ込むだろうから、だったらそのための力が必要なんだって。それをいってやればいいじゃんか」
「必要無い」
「そう?」
「それに気づいたと言うことは、あれも同じ事をしようとしたからであろう」
「だからいいってこと? 難儀な正確だねえあんたも」
「うるさい……」

 マザードラゴンはそう言って静かにめを閉じた。
 旧友の目には、それが照れ隠しと幾ばくかのイジケがいれ混じったものに見えた。
 ヒメはため息つきながら、密かに上がってるドラゴンの口角をペシッとはたいたのだった。
第三章エピローグです、いかがでしたでしょうか。
ここまで面白かったらブクマ評価してくれるとすごく嬉しいです!
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