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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第一章

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二人の引率役

 森の中、勇者の侵入をしって、モンスターたちが次々と迎撃に出かけて行く。
 メンツは宝石から生まれたカーバンクルとか、人間の子供くらいのサイズがある虫のワームとかだ。
 そんなに強くなく、最弱に毛が生えた程度のモンスター。

 迎撃メンバーがそれらだというのは、侵入してきた勇者の力がその程度だということだ。

 しめしめと思った、そんなに強くないモンスターということは、母さんとかヒメとか、上のおれの力を知ってる幹部連中に無理矢理かり出されずにすむこと。
 今日はのんびりするぞ……って思っていたが。

「なあなあ、おれ達も行こうぜ」
「勇者退治、今こそドラゴンナイトの出番だね」

 幼なじみの二人、パーティーを組んでるテリーとリリがやる気満々だった。

「うへへへ、処女の白エルフとかいねえかな」
「もうテリーってば、そんな事ばっかり」
「いいだろ別に」
「よくないよ、戦う前からそういうことを考えるの。ちゃんと勝った後にしなきゃ」
「まじめだなあリリは」

 おれもそう思う。

「それよりも行こうぜ、早くしないと勇者が全部倒されちまうぞ」
「それもそうだね。いこうリュウ」
「いやおれは……」
「ほらほら」
「いこーよ」

 テリーとリリ、二人はおれを無理矢理つれて行こうとした。
 テリーは背後に回って背中を押してきて、リリはおれの上に乗っかって頭を掴んで手綱のようにさばこうとしてる。

 しょうがねえなあ、まあ、勇者も弱いし面倒臭い事にはならないだろ。

「こら! 何をしてるガキども」

 他のモンスターが向かって行った方向に進もうとしたら聞き覚えのある声に怒鳴られた。

 テリーとリリがビクッとして、三人で一斉に振り向く。
 知っているかお、ビッグマウスのシェスタだった。

 シェスタは怒ってる様な、呆れてる様な表情をおれ達に向けている。

「シェ、シェスタのおじさん」
「こんにちは」
「こんにちは、じゃねえ。何をしてるんだって聞いてんだ」
「えっと、ちょっと勇者を倒しに――」
「――行こうかなあ、って」
「お前らにゃ10年はやえよ。いいからここで大人しく見てろ」
「えー」
「でもぉ……」
「わ か っ た な」

 シェスタに睨まれて、渋々引き下がる二人。

「シェスタさんは行くの?」
「おうよ、監督兼サポートで頼まれたんだ」

 得意げに威張るシェスタ。
 下級モンスターだけで迎撃する場合、万が一の事を考えて強いモンスターをつけてサポートさせる事がある。
 強かったり、状況判断がうまいモンスターにしか任せれない結構な大役だ。
 それを頼まれたビッグマウスのシェスタは上機嫌だ。

「いいか、絶対くるんじゃねえぞ、分かったな」
「「はーい」」

 シェスタは自信満々に大股で勇者が侵入してきた方角に向かって歩き出した。
 とりあえずナイスだシェスタ、あんたのおかげで堂々とサボれる。

「残念だったな、まあまた弱い勇者が来るだろうから、その時にでも――」
「いくぞリュウ」
「――え?」
「レッツゴー」
「ちょ、ちょっと待って」

 シェスタの姿が見えなくなったあと、二人は改めておれの背中を押して歩き出した。

「お、おいやめろよ。来るなっていわれただろ」
「へーきへーき」
「そうそう、あたし達は最強のドラゴンナイトなんだから。こう言う時はちゃんと活躍しないとね」
「おいおい……」

 止められたのにまったく気にする様子はなく、それどころかますますテンションが上がっている二人。
 しょうがねえなあ。
 ……まあ、ざっと感知魔法をかけたところそんなに強い勇者はいなかった。おれがこっそり二人にうすーい補助魔法(バフ)でもかけときゃ平気だろ。

 そう思って、二人と一緒に戦闘が行われている場に向かって行った。

     ☆

 せっかくだから回り込んで挟み撃ちにしようぜ、っていうおれの提案に二人はノリノリで乗ってきた。

 もちろんそれは時間稼ぎ、おれ達は森の中を大回りして勇者どもの背後にやってきた。
 大回りしてるうちにだいぶ時間を食った――わざと時間を使ったから、回り込んだ頃にはもうだいぶ決着がついてて、勇者の数が減っていた。

「おいおい、勇者がいなくなっちまうぞ。早く行こうぜ」
「うん! リュウもほら!」
「はいはい」

「「ドラゴンナイトだ!!!」」
「……だぁ」

 二人が意気込んで飛び出して、おれはローテンションで後についていった。
 ゴブリンのテリー、インプのリリ、そしてスライムのおれ。

「挟み撃ちか!」
「こんな時に!」
「ザコが三体だけだ、落ち着いて倒せ」

 勇者たちは一瞬動揺したが、現われたのが下級モンスターばっかりと見てすぐに落ち着きを取り戻した。

「あ……のバカガキども……」

 勇者たちの向こうでシェスタの姿が見えた。
 呆れ半分怒ってる半分の顔だ。

「こらーガキども、ここは危ないからどっか行け」
「シェスタさんの言うとおりだ、ここはおれ達に任せて」
「ケガをしないうちに帰って」

 他のモンスターたちも同じような事をいってきた。
 庇護される側なのは嫌いじゃない、面倒臭い事が少ないからだ。

 まあ、今回は別にいい。
 勇者たちと、迎撃しに出てきたモンスターたちの強さをざっと量る。
 ここで勇者たちを倒しても「子供が背伸びしてよくやった」くらいの話に収まる。

 もちろんおれがやり過ぎると面倒臭くなるから、テリーとリリにやらせた。
 こっそり魔法を使う、強化魔法と補助魔法を最低ランクに落として二人にかける。
 気持ちだけ二人を強化した。

 テリーとリリは鞭を持つ女勇者を囲んで、こん棒と三叉のフォークで挟み撃ちにする。
 二人がかりでボコって、途中でおれが回復魔法とかつかって、補助魔法の強さをさりげなく調整して立ち回って。
 結果、二人はかすり傷を負いつつ女勇者を倒した。

「やったぜ!」
「決めポーズしよ、決めポーズ」
「まてまて、それは後でだ。まだ勇者が残ってる」

 勝利決めポーズをとろうとするリリを止める。あれは目立つからあまりやりたくない。

 こうして次の勇者に向かって行き、フォローし続けながら勇者を倒す。
 二人目の勇者を倒したところで、侵入してきた勇者は他のモンスターたちに全滅させられた。

 こんどこそ決めポーズ、としようとしたところにシェスタがドスドスと近づいてきた。

「こら! くるなつっただろ」
「えー、でもぉ」
「あたしたちちゃんと戦えたよ」
「ちゃんと戦えたじゃねえ! ガキどもは危ねえから来んな!」
「それは横暴だせシェスタさん」
「ねー」

 ぶつぶつとふてくされるテリーとリリ。

「横暴じゃね――」

 また二人を怒鳴ろうとしたシェスタだが、急に白目を剥いて倒れた。
 糸が切れた人形のようにぐったりと地面に倒れ、口から泡を吹いている。

「おい、どうしたんだシェスタさん」
「寝ちゃったの?」
「二人とも危ない!」

 横からタックルして二人を弾き飛ばした。
 直後、二人がたっていたところの地面が溶けた。

 高熱に灼かれた一瞬で溶岩化している。

「なにもの――ぐへ!」
「またいたのかぐはっ!」

 さっきまで勇者たちと戦っていた他のモンスターも次々と悲鳴を上げてやられていった。
 全員致命傷じゃないがかなりの深手だ。

 一体――。

「やれやれ、ついてきた正解だったな。新人の引率なんてやりたくもねえが、しゃーねえ」

 うっすらとなにかが見えた。
 声と共になにかが複数打ち出されてまだ残ってるモンスターたちを狙った。

 ――やらせるか!

 とっさに魔力を放出、隠形、見えない魔力の弾を向こうが撃ってきたものを迎撃。
 パパパパパン! 花火のような連続した爆発音とともにあっちこっちでなにかがはじけた。

 その衝撃でテリーやリリ、他のモンスターは尻餅をついた。

「そっちにも引率がいたか」

 声が更にした、渋い男の声だ。

「おまえ、なにものだ」
「……分が悪い、ここは引かせてもらう」

 声がそう言った瞬間、わずかに感じていた気配が急速に薄れ――遠ざかっていった。

「――逃がすかッ」

 負傷して倒れているモンスターたちの姿が目に入り、おれは相手を追うことにした。
 気配が薄れていった方角に向かって飛び出す。
 スライムらしくピョンピョンのではない、魔力を放出して一直線に飛んで行く。

 飛んでるとなにかが体に迫ってくるのが感じた。
 スライムの体を変形してよける、何か(、、)が背後の木に当たって、幹を真ん中からとかした。

 何か飛び道具が飛んで来たんだ、モンスターたちをやったのと同じ何か。
 それが更に飛んできた。

 空中戦か!

 凝縮、そして追跡。
 キーワードを念じて、こっちも魔力弾をはなつ。
 まずは17発、輝く魔力弾が無規則な軌道を描いて一点に群がっていった。

「くっ!」

 向こうも何か(、、)を撃って迎撃してきた。
 さっき止めた時と同じ爆発音と衝撃波がまき散らされる。

 魔力弾の数を増やして、飽和攻撃をしかける。

 向こうの足が止まった、地面に着地して迎撃した。
 逃げながらじゃ対処しきれないって判断したんだろ。だが。

「止まっても無意味だ」

 更に魔力弾を放つ、今度はちょっとギアをあげて19発。

「くっ!」
「もっと行くぞ」

 迎撃される、向こうがアワアワしてるのが分かる。
 もうちょっとギアをあげて23発。

「くわっ」

 更にあげる、29発。
 ここで向こうの限界を超えた。
 それまでギリギリ耐えていたのが、迎撃しきれなかった魔力弾が次々と直撃する。

「く……こ、これがスライムの魔力だと? 化け物め」
「消えろ!」

 最後に魔力弾を放出し、トドメを刺した。
 勇者どものサポートをしていた男は、最後まで姿を見せる事なく倒れ、消えて行った。

 ふう……。

 深呼吸して、みんなのところに戻る。

「リュウ!」
「大丈夫だったの?」

 テリーとリリがおれの姿を見るなり駆け寄ってきた。
 同時に他のモンスターたちも集まってきた。

「危ないじゃないか、一人で飛び出したりして」

 カーバンクルの一体がそんなことを言ってきたが、おれは、戻ってくる途中に考えたいたことを実行した。

「大丈夫だ、ちゃんと倒してきた」
「「「え?」」」

 驚くモンスターたち、同時に魔法を使う。
 キーワードを念じる。
 覚醒、そして入れ替え。

 おれの体が光った、それと同時に離れたところに倒れているビッグマウスのシェスタの体も光った。

 二つの魔法陣で光ったおれ達は居場所を入れ替わった。
 ただ入れ替わっただけじゃない、タイミングをずらして、変身がとけた(、、、、、、)ように見せかけた。

 シェスタが倒れているところに移動したおれは気絶したフリをした。
 そしておれがたっているところに移動したシェスタは覚醒の魔法で目覚めた。

「あれ? お、おれは……」

 きょろきょろするシェスタ、状況を飲み込めていないようだ。
 一呼吸おくれて、まわりのモンスターがシェスタをほめだした。

「そっか、リュウくんに化けてたんだ」
「それなら追いかけて倒してきたのも納得」
「さすがビッグマウスのシェスタさん、ぱねえっす!」

 モンスターたちが口々にシェスタをほめる。
 目覚めたばかり、一撃でやられてその後の事を知らないシェスタだが――。

「……ふっ、まあおれ様にかかりゃこんなもんだ。あーっはっはっはっは」

 と、大いばりで笑い出した。
 かれならきっとこうなると思った、功績のなすりつけ、成功だ。

 おれはそのまま、もう一回だけ感知の魔法をかけて、勇者がいなくなったことを確認してから、そのまま気絶したフリをつづけたのだった。
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