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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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夢の外で

 最強のスライム・リュウが力を使い果たして休眠する中、五人の女が戦いを繰り広げていた。

「わ、わたしがこのままスライム様を抱っこしてます。スライム様をどう抱っこすれば一番休まるのか知ってます」
「それよりもあたしに任せなよ。あたしなら肉体と精神の両方をまとめて癒やせるよ」

 おずおずと主張するユーリエに対し、カレンは露出の多い衣装を活かして、胸を強調するセクシーポーズをとった。
 健全な男子なら一発で鼻血大噴射するほどのセクシーポーズだ。

「それよりも私に任せてくれ。師匠直伝の『無茶をした時の超回復』が出来る。ケガの功名だけど今が恩返しする時だ」
「人間は引っ込んでなさいよ。お兄ちゃんを癒やせるのはあたし。お兄ちゃんと同じ竜気を出せるあたしが一番いやせるんだから」

 ルーシアがいうと、ユイは毛を逆立てたネコの様にアピールしつつ、威嚇した。
 そんな四人の傍らで、クリスが祭壇に生えた花を手入れしている。

「花の香りは最高の癒やし」

 アピールするよりも、せっせと準備をしていた。

 お面をかぶって表情の読めないクリス、ニコニコ顔のカレン、真顔のルーシア、おどおどしているユーリエに、全員を威嚇しているユイ。
 それぞれ違う表情をしているが、主張している事は同じ。

 今疲れ果てて気を失っているリュウを一番癒やせるのが自分だ、という事だ。

 空気がビリビリと張り詰めている、どんな魔境でもこれほどではないという張り詰め方。

「やあやあ我こそはルイス・ルース、人間の新たな希望の光に――」

 空気を読まずに侵入してきた勇者がたった一撃で、ガリアンソードに刻まれこん棒につぶされ、ドラゴンブレスで灰まで燃やし尽くされた後ナイトクイーンの魅了で魂をぐちゃぐちゃにされた。

 にらみ合う五人、誰も譲らず、一触即発の空気が続く。
 そんな中、五人のまん中にいたリュウが動いた。
 軟体動物のスライムらしく、ナメクジのように地面を這って移動する。
 目は閉ざされていて。

「スライム様?」
「……」

 呼びかけにも応じない。
 ただただ、地面を這っている。

「なんかこれ夢遊病っぽいね」

 カレンはサキュバスらしい感想を漏らした。
 そんなカレンのつぶやきにも反応せず、リュウは地面を這って移動し、やがてダンジョンの中心に辿り着いた。
 四つの祭壇が十字になっている、その中心。
 勇者を騙すためのフェイクの卵の上に登って、半分溶けた状態で再び止まった。

 傍から見れば卵の上に何らかのソースがかかっているような、ちょっと不思議な光景。

「これは――」
「あっ、そういうことなんですね」

 人間コンビのルーシアとユーリエがハッとした。

「なになに、どったの?」
「このダンジョンは師匠が作ったものなんだ、そして勇者を騙すために、師匠が作った時四つの祭壇から魔力が流れこむようにした」
「それを求めてスライム様が半分眠った状態で移動したんですよ」

 人間コンビ……と言うよりリュウの弟子コンビがそう言った。
 二人ともリュウの弟子であるため、彼が操る魔力の流れを感じ取る事ができるのだ。

「自分の魔力、一番なじむ」
「そかそか、うん、それは納得」
「お兄ちゃんのこんな顔……始めてみた……」

 ユイがつぶやくように言ったあと、全員がリュウの顔をのぞき込んだ。

「ほえ……」

 偽の卵の上で半溶けになっているリュウは珍しく、締まりの無いニヘラ顔になった。
 それはモンスターのスライムではなく、愛玩用の小動物のような顔だ。

「か、かわいい……」
「こんな一面があったなんて」
「食べてしまいたいね」

 絶句しているクリスとユイを含め、全員がリュウに見とれていた。

「というかずるい! リュウ様強いのに可愛いってずるい!」
「お兄ちゃんなんだから当たり前じゃん!」
「あんたそれを本人がおきてる時に言いなさいよ!」
「え? え? それってなんなんだ?」
「ルーシアお姉さん……まだ分からないの?」

 女三人あつまれば姦しいというが、ここにいるのは三人ところじゃない二倍近いかずだ。
 姦しさも相応のものになる。

 が、それが却って良かった。
 リュウが意図せず見せた行動で、四人は一致団結した。

「師匠はこのままにするのが一番いいはずだ」
「同感」
「あたしも賛成。って事は」
「……そうね、そうした方がいいわね」

 ルーシア、クリス、カレン、ユイ。
 リュウ四天王と呼ばれそうなポジションにいる四人がうなずき合って、同時に身を翻した。

 それぞれの祭壇に戻っていく、と思いきやそこは素通りしてダンジョンの外にでた。

 東西南北、ダンジョンの四方に散って、仁王立ちしてそこを守る。
 ダンジョンの中ではなく、外。入り口を守っていた。

 何人たりともここはとおさん、という意思が強く出ていた。

 実際、誰も通らなかった。
 この日襲ってきた勇者は、ダンジョンに入ることすらなく瞬殺された。

 リュウが久しぶりの熟睡をしている間に、四天王によって数多の勇者が星となって散っていったのだった。
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