挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

66/77

勇者の生態

 ドゴーン!
 一日一殺、これが最近の俺の標語だ。

 ユイを暴走させないために、一日に一回は全力を出して、侵入してきたばかりの勇者を瞬殺する。
 今日もシェスタを抜けてきた東国の巫女勇者をドラゴンの前足(ファイナルストライク)で叩き潰した。
 塔の地面に広がる原型を留めてない勇者の死体、そして壁まで伸びているひび割れた床。

 それを見て、ユイは何故か満足そうだった。
 未だに意味がよく分からないけど、ユイが暴走しないのなら問題ない。
 全力の一撃はそれなりに消耗するけど、一日一回でその後はサボってても何もいわれないから、むしろ全力を出した後のほどよい疲労感でのんびり出来る。

 この形態を提案してくれたカレンたちはすごいな、後でお礼を言わなきゃ。

 そんな感じで、俺は今日も裏クリスタルタワーで、疑似太陽を使ってのんびりしていると。

「お兄ちゃん!?」

 離れたところにいたユイがいきなり切羽詰まった声で俺を呼んだ。
 何事かと思っていると、足元に魔法陣がいつの間にか広がってるのが見えた。
 理解するよりも早く、俺は魔法陣に呑み込まれた。

「来たようじゃな」

 次の瞬間、土地神の異空間にいた。
 顔見知りのじいさんは俺をみてニカッと笑った。

 その背後に以前送った生け贄の美少年がいる、美少年はラバースーツを着せられて、上気した顔で土地神の背後に控えている。
 そっちは何がどうなってるのかは……想像しない方がいいだろう。

 俺は土地神だけを見て質問した。

「じいさんが俺を呼んだのか?」
「いかにもそうじゃ。お主に頼みたいことがあって呼んだのじゃ」
「頼みたい事?」
「わしの旧知がのう、自分のダンジョンに住むモンスターのためにあるものを守りたいのじゃ。じゃがそのものは直接人間には干渉できぬし、ダンジョンのモンスターは人間にやられて全滅寸前じゃ」
「……それを俺が守れと?」
「ご明察じゃ」

 ご明察も何も、そこまで言ったらほとんど最後まで言ってるようなものだろうが。

「なあに、時間は取らせん。10日程度人間に奪われず――無論破壊されずに守り通せばいいだけじゃ。普段お主がやってる事と同じじゃろ?」
「そりゃ……ダンジョンを壊されずに勇者を撃退してるから一緒だけど」
「なら余裕じゃろ?」
「……ちなみに断ったらどうなる」
「今のダンジョンを没収じゃ」
「選択の余地なしか」

 俺はため息ついた。
 元から選択の余地があるとは思ってなかった。
 土地神のじいさんの無茶ぶりは前に体験してるし、こんな形で俺を呼び寄せたんだからかなり本気だと感じた。
 こんなにストレートな脅しをかけてくるのは予想外といえば予想外だが、まあ、じいさんの本気度が分かっただけでもよしとするか。

「スライムよ」
「え?」

 さっきより幾分、真剣なトーンだった。
 よく見ればじいさんは俺を見つめている。表情はさほど変わってないが、懇願にも似た瞳で俺を見ている。

「頼める者がお主しかいないのじゃ」
「……しょうがないな」

 どうやら本気でそうみたいだ。
 まあ、土地神なんてある意味その土地に縛られたもんだし、別のところの土地神から助けを求められても行くことは出来ない。
 できることといえば自分の土地、そこにたってるダンジョンのモンスターに頼むことしかないからな。
 俺しか頼れないのは本音だろう。

「で、何を守ればいいんだ?」
「うむ。ファイヤーアントの卵じゃ」

 じいさんから言われたのは俺とは全くの無関係でもない話だった。

     ☆

「……なんでみんなついてくるんだ?」

 クリスタルタワーを出て、ユーリエに抱っこされたままじいさんに指定された目的地に移動してると、その後ろにぞろぞろみんながついてきた。
 カレン、ルーシア、クリス、ユイ。
 裏クリスタルタワーに住み着いた四人がぞろぞろついてきた。

「べ、別にいきたくないけど、見てないとお兄ちゃんがまたサボるからしょうがなくよ」
「いや今回のはサボりようがない」
「――」

 キッ、とユイに睨まれた。
 いや本当についてこなくても大丈夫だから今回は。何せちゃんと働かないとクリスタルタワーを取り上げられちゃうからな。

「そういうことじゃないけどねー。あっ、あたしはリュウ様がいるところなら何処へだってついていくよー」
「いやお前はいいんだ」
「ええ!?」

 カレンにそんなことを言ったら、何故かユイが悲鳴の様な声を上げた。
 彼女はすねた様な顔で、唇を尖らせ俺を睨む、何故かちょっと涙目だ。

「どうしたユイ」
「べ、別に? ダメでも監視のためについていくだけだし」
「はあ……」

 それはさっきも宣言したよな。
 まあいい、ユイのそれ(、、)は昨日今日始まった事じゃないから、とりあえずスルーした。

 俺が聞くよりも早く、ルーシアが答えた。

「師匠の行くところについて行く。私は自分を鍛えなおしている途中、師匠に見ててもらわないと困る」
「まあなあ……放っておくと変な解釈でいらん努力するからなお前は」

 今までの事を考えるとそうだ。
 ルーシアは普通に連れて言った方がいいと思う。

「クリスは……」
「これ、途中で壊れたら困る」

 そう言ってこん棒を掲げた。
 俺が改造してやったスライムこん棒、クリスが花を至近距離で見れるようにしたこん棒。

「困る……」

 同じ台詞をつぶやくクリス。
 空気が一瞬で重くなった、ズーン、って擬音が聞こえてきそうな位重くなった。
 まあ、そういうことならしょうがないな。

 ユイ以外みんな理由があるか、ならしょうがない。

「ドラゴン様がいい加減可哀想です」
「今は耐えるターンだからしょうがない」

 ユーリエとカレンが二人して通じ合っていた。
 この前から二人がやけに意気投合してる。仲が良いことは結構だが話してる事が大半分からなくてたまに困る。

 そんな四人と一緒に歩いた。 
 全員がかなりの実力者って事もあって、歩き通しでも体力に問題はなかった。

 丸一昼夜歩いて、じいさんに指定された場所にやってきた。
 そこは何もない荒れ地。草木も生えていないような荒れ果てた大地だ。

「ついたぞ」
「本当にここなのリュウ様? 何もないけど」
「それを今から作るんだ」
「ダンジョンを作るのか……始めてみる」

 ルーシアはそうつぶやき、興味津々って顔をした。
 彼女は元勇者だから、ダンジョンに攻め込むことはあっても作るところは見た事がないのだ。

 そんなルーシアと、カレン、クリス、ユイの四人をみる。
 四人いるし……あのタイプで行くか。

 俺はユーリエが跳び降りて、目を閉じて気配を探った。
 すぐに大地の魔力の流れ――龍脈を感じ取った。
 そこに魔力を送って、呼び水にする。

 クリスタルタワーの時と同じように、ダンジョンを作ろうとした。

 イメージをして、ダンジョンを作る。
 荒れ地の中神殿っぽいのが四つ、それが十字に結んだ中央に台座の様なものが一つ。
 台座の外側には結界のようなものがうっすらと見える。

「これって?」
「外側の四つにそれぞれ一人いてもらう。四人を倒されて、中央の結界がとかれる仕掛けだ」
「なんでそんな事をするの?」
「今回は卵を守らないといけない、ただやってただけじゃ勇者は全力で卵に群がってくる、そこで――」
「――中に結界、外に四つの神殿があると、勇者は結界の解除のために神殿から攻略する」

 元勇者のルーシアが引き継いで説明する。

「そうだ、勇者の生態を利用したしかけだ」
「なるほど」
「ってことで、ついてきたんだから、それぞれの神殿を守ってもらえるか?」

 四人は頷いてくれた。
 さあ、10日間にわたる戦いの幕開けだ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ