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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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シスコンじゃない

 裏クリスタルタワーに入ってきた勇者を瞬殺した。
 シェスタを倒して、移転した瞬間何が起こったのかわからないままでいるやつに、問答無用のドラゴンの前足(ファイナルストライク)

 何が起きたのかわからない、俺がやったとさえわからない
 そんな速攻で勇者を倒した。

「ああ、やっぱりお兄ちゃんはすごい……ここまで無傷で上がってきた相手に何もさせないまま一撃で倒せるなんて」

 それを見ていた――いやわざと見せつけたユイは恍惚した表情で言った。
 さすがにわかるか。

 ここ最近は何を考えてるのかわからない&やけにわがままをいっていたユイだが、腐ってもドラゴン。
 マザードラゴンの娘にして伝説の黄金竜の血筋を引くユイ、一目見ただけで俺がやったことを理解したようだ。

 理解してくれるのならありがたい、なぜならこれはカレンとユーリエにアドバイスされたことをやっただけだ。
 ユイの暴走をなくすために一日に一回勇者を倒す。
 それに俺の事情を加えて、裏クリスタルタワーに入ってきた瞬間に、俺がいると認識する前に速攻で一撃で倒す。

 それをやった結果、ユイは機嫌良さそうだった。

『これでいいのか』
『はい。妹様も満足すると思います』
『というかあれは一体何なんだ? お前もカレンも理解してるみたいだけど』
『……私の口からは。いつか妹様の口から直接聞いてください』

 ユーリエは答えてくれなかった。
 まあ、本人の口から聞けってのは道理だな。

 だから俺はそれ以上聞かなかった。
 そんなこと(、、、、、)よりもユイの機嫌がいいってことは、もうのんびりしてても大丈夫ってことだ。

 俺はのんびりすることにした、疑似太陽を作ってマッタリしようとした。

「おーい、リュウいるかー?」
「リュウ、武器を直してー」

 表からテリーとリリがやってきた。
 二人はボロボロになった武器を持ってて、俺のところに向かってくる。

 テリーのこん棒は折れてて、リリの三股フォークも先端が一本折れている。

「壊したのか」
「だってよお、今日の勇者強かったんだぜ?」
「気がついたらやられちゃったよ」

 今日の勇者ってさっきのやつか。
 そんなに強かったかな。

「ってことで早く直してくれよリュウ」
「お願いリュウ」
「ああ、ちょっと待ってろ」

 俺はいつも通り体の一部を溶かした。
 溶かした体で二人が持ってる武器をおおって、粘土のようにかたちを作り替える。
 みるみるうちに、二人のスライム武器が元の姿にもどった

「サンキューなリュウ。よーし、まってろよ処女のねーちゃん」
「ありがとうねリュウ」

 テリーとリリ、二人はやる気満々で表のクリスタルタワーに戻った。
 さてこれで休める、と思っていたら。

「お兄ちゃん! 何今の」

 ユイが血相を変えて、きつい口調で詰問してきた。

「いまのって……テリーとリリのことは知ってるだろユイ」

 俺の幼なじみになんだから今までもしょっちゅうあってる。

「そうじゃなくて、あの二人がもってる武器。あれ、お兄ちゃんが作ったの?」
「ああ。二人のためにな」
「なんでよ!」
「なんでって……そうだな、二人が弱いから見ててハラハラする、から?」

 理由を思い出しつつ、ユイに話す。
 最弱クラスのゴブリンとインプ、普通にやったら一方的に勇者に殺されるだけだ。
 そのフォローのために俺の体で作った武器を与えた。

 ……決して二人を強くしたら俺もサボれるとかそういう不純な動機じゃないぞ。

「そ、そうね……ゴブリンとインプだもんね。お兄ちゃんがなんとかしてやらないと弱くてしょうがないもんね」

 ユイはブツブツ口調でいって、引きつった笑いを浮かべていた。
 またなんなんだ? って思ってると。
 離れたところで花をじっと見つめてるクリスの姿が目に入った。

 あのまがまがしいオーラは真上に行かなくて、ちょっと漏れている。
 俺はユーリエに命じてクリスに近づく。

「クリス」
「……なに?」
「こん棒出して、補強してやる」
「ありがとう」

 クリスは素直にお礼を言った。自分のオーラのことに気づいたからだ。
 俺はさっきと同じように体を一部溶け出させて、クリスのこん棒を補修した。
 次の瞬間、横方向に漏れ出していたクリスのオーラがまた真上を向くようになった。


「よし、完成だ――」
「そいつ強いじゃないの!」

 ユイが声を張り上げて突っ込んできた。

「どうしたユイ」
「そ、そいつつよいじゃん! オーガの中でもトップクラスに強いじゃん」
「うん? ああ強いな」

 それがどうした、って顔でユイを見つめ返す。
 ユイはわなわな震え、まなじりに涙をためる。

 本当に何がどうしたんだろう、って思ってると。
 カレンがどこからともなく現れて、ユイに近づいて耳打ちした。

 最初は「何この女」って顔をしてたユイは。

「ありがとう! あんたいい人だね!」
「あはは、これからもよろしくね」

 何を言ったのかわからないが、二人は一瞬で和解――というよりユイがフレンドリーになった。
 次の瞬間、ユイは。

「フン!」

 と、どこかのマッチョみたいな力み方をすると、彼女が来ていたドレスがボロボロになった。
 ドラゴンフォームに戻ることの応用なのか、体が一瞬だけ膨らんだユイのドレスがボロボロになった。

 ……え? 何のために、というなぜ?
 ユイだったらドレスを破かないで戻すこともできるよな、というかそれは人化するモンスターならだれでもできる。
 なんでそれをしなかった。

「きゃー、たいへんだー」
「へ?」
「ふくがやぶれてしまったー、どーしよー」

 ユイはものすごい棒読みで、俺をチラチラ見た。

「このままじゃかぜひいちゃうかもー」

 いや引かないだろ。伝説の黄金竜が服破けたくらいで風邪引くかよ。

「どーしよー」

 ユイはさらに俺をチラチラ見た。
 何がなんだか、そしてどうしたもんか、ってわからないでいると。

『スライム様、妹様に服を作ってあげては』
『服を?』
『はい』
『いや作るのは別にいいんだけど……』

 たいした労力でもないし、今までのユイのわがままに比べればお安いご用くらいなもんだが。

 ……考えてもらちがあかないな。

「ユイ」
「何かなお兄ちゃん!」
「お、落ち着け。服、直してやろうか」
「――っ! お、お兄ちゃんがどうしてもって言うのならさせてあげてもいいけど?」
「じゃあそのまま立ってろ」

 どうしてもはまあ、どうしてもだ。
 ユイみたいな若くて見目麗しい子がそんなボロボロな格好のままでいるのはあまりよくないからな。

 純粋に露出が多い服はいいけど、ボロボロなのはよくない。

 俺は体を溶かして、ちょっとだけかんがえてからユイのからだを覆った。

 ボロボロのドレスにとりついて、それを直す。

「お兄ちゃんの服……お兄ちゃんの服はあはあ……」

 ユイはなぜか鼻息を荒くして、目が血走っていた。
 ぶっちゃけ見ててちょっと怖い。

「大丈夫かユイ、それがいやなら――」
「ふ、ふん! お兄ちゃんの服なんてどうでもいいけど、どうしてもっていうから着てあげるわ」

 いやどうしてもっていうか……まあいっか。
 それよりも。

「とりあえずチャームの効果をつけたから」

 とだけ教えておいた。

「チャーム? どういうこと?」
「ユイは強いからな、強さで何か付与する必要ないだろ。でも年頃の女の子なんだから、きれいにかわいく見られた方がいいって思ってな」
「……」
「効果はシンプル、見た目の魅力、長所の部分をさらに魅力的に見せる効果だ。ユイは普通にかわいいから、こういうのでいいと思った」
「……お兄ちゃん」

 説明を終えたあと、ユイがなぜかうるうるしてることにきづいた。
 目をうるうるさせて、感動した目で俺を見る。
 それは今までになかった、初めて見る反応。

 ――ドキン。

 それがかわいくて、俺はドキッとした。
 何でドキッと?

 ……。
 …………。
 ………………。

 ああそうか、チャーム効果か。
 ふう、焦ったぜ。妹に「かわいい」って思ってどきっとするとかやばいだろ。
 まあでも、チャーム効果はちゃんと出てるようで何よりだ。

「なんか違う結論だしてるねー」
「もう諦めましょうカレンさん」

 カレンとユーリエが何か通じ合っていた。
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