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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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妹の尻拭い

 裏クリスタルタワー。
 俺がいつも通りユーリエの腕でミラクルフィットしてのんびりしてる中、他のみんなもいつも通り過ごしている。

 ルーシアは壁際で背筋を伸ばして正座してて、クリスは膝を抱えて壁の隙間から生えてきた花をじっと見つめてる。
 表は散発的に勇者が来てるみたいだけど、途中のモンスターに返り討ちに遭う程度だから、俺は何もしないでのんびりしてられた。

 ……られたんだが。

「ねえねえユイちゃん」
「ユイちゃんって呼ばないでよ! あたしはマザードラゴンの娘、誇り高き黄金竜なんだからね」
「えー、でもユイちゃん可愛いからユイちゃんでいいじゃない」

 カレンがユイに絡んでいた。
 カレンはいつも通りで、ユイの反応もいつも通りだ。
 二人ともいつも通りだけど、二人が絡むと途端に面倒くさそうな気配がする。

 カレンの話しかけは、油の上で火のついたたいまつをジャグリングしているように見えてしまう。

 落としても落とさなくても火がつきそう、それくらい面倒臭そうに見えた。

「ユイちゃんはさ、なんでここにいるの?」
「はあ?」
「わかった、お兄ちゃんのそばにいたいんだ」
「なっ――ば、ばっかじゃないの!?」

 ユイは赤面して必死に否定した。

「違うの?」
「当たり前でしょ? そんな事あるわけないじゃん」
「へえ、あたしはてっきりそうだと思ってたよ。だってここにいるみんなってリュウ様のそばにいたいからいるんだもん」
「え?」

 驚き、言葉を失うユイ。

「ねっ、二人ともそうでしょ」
「その通りだ、私は師匠のそばで自分を鍛えなおしたいからここにいる」
「スライムのそばに花が咲く」

 ルーシアとクリスもいつも通り、本当の事を答えた。
 ただの事実で普通はなんの問題もないけど……ほらきた。
 ユイがわなわなと体を震わせていた。

「何よそれ……」
「だからみんなリュウ様のそばにいたいのよ。あたしもナイトクイーンに進化させてくれたリュウ様のそばにいたいんだ。だからユイちゃんもそうなのかなって思って。ぶっちゃけそうでしょ」
「ち、違うもん! そんなんじゃないもん!」
「本当は?」
「な、何それ」
「ほらほら、あっちにリュウ様がいるよー」

 カレンはそう言って、ユイの可愛らしい顔に手を添えて、視線をこっちの方にむりやり向かせてきた。

 ゆであがったタコのようなユイの顔がますます赤くなる。

「ユー正直に行っちゃいなよ、リュウ様のそばにいたいって。それ当たり前だから、強くて格好良くて素敵なリュウ様のそばにいたいって思うのなにも恥ずかしい事じゃないから」
「違う、あたしは……」
「そうそう、言い忘れたけどナイトクイーンってサキュバスだから、あたしそういうの何となく分かるんだ」
「――っ!」

 びっくりしすぎて顔が更に赤くなって、その後青ざめて、また口をパクパクして赤くなる――ユイの顔はそれを繰り返した。

「おい、その辺にしとけ、それ以上いじるとユイが――」

 さすがにまずいと見かねて口を挟んだが――一歩遅かった。

 ユイはぷっつん(、、、、)した。
 一瞬だけ白目を剥いて天井を仰いだかと思えば、体が瞬時に膨らみ上がって見た目が分かった。

 可愛らしい人間の姿から、荘厳な黄金竜の姿に変わった。

「げっ、これってもしかしてヤバイ?」
「ぐおおおおお!」

 ドラゴンの姿に戻ったユイは咆哮を上げて、無差別に攻撃を繰り出した。
 至近距離にいたカレンはかろうじてよけて、ルーシアは飛んできた塔のがれきをガリアンソードで吹っ飛ばし、クリスは身を挺して花を守った。

 その間ユイは暴れた。

「ちょ、ちょっとまって、謝る、謝るから――きゃん!」

 必死にユイの攻撃を躱し続けながらなんとか矛を収めてもらおうとしたカレンだが、石すら溶かす火炎のブレスをよけた直後に待ち構えていた尻尾に吹っ飛ばされた。
 塔の壁に突っ込んで、頭から血を流す。

「いたたた……見境なしか」
「あなたが悪い」
「ちょっかい出し過ぎ」

 ルーシアとクリスは同時にカレンを責めた。

「だって分かるんだもん、そしたらなんとかしてやりたいじゃん」

 頭を押さえて立ち上がるカレン。
 何を分かったって言うんだ?

『スライム様やっぱり鈍い……』
『わかるのユーリエ――』

 ユーリエに聞こうとしたが、ユイの攻撃はますます激しさを増した。
 目は完全に正気を失っていて、無差別に攻撃を始めていた。

「あらら、ヤバイねこれ。止められるかな……」
「覚悟がいる」
「花は守る」

 カレン達三人はそれぞれの言葉を口にして、ユイに立ち向かおうとした。
 三人ともかなり強いが、それでも暴走した黄金竜相手には分が悪い。

「しょうがないな……三人とも下がれ」

 俺はそう言って半溶けから普段の状態に戻って、ユーリエの腕から跳び降りた。
 ぴょんぴょんぴょん、と跳ねながらユイの前に向かう。

「だ、大丈夫なのリュウ様」
「みてろ――せーの!」

 俺は力を解放した。
 解放された力は俺の頭上で具現化した。

「大人しく……してろ!」

 それをユイめがけて振り下ろした。
 必殺の一撃、ドラゴンの前足(ファイナルストライク)

 振り下ろされた前足はユイにクリーンヒットした。
 クリスタルタワーが激しく揺れる程の一撃。
 ユイは吹っ飛ばされず、真下に――地面にぺちゃんこになった。

「ちょ、ちょっと。大丈夫なのユイちゃんは」
「これくらいしないと止まらないんだよ、暴走したドラゴンは」

 シェスタなら軽く一万回は死んでるであろう最強の一撃。ユイはグデっとなって、舌をだして目を回していた。

「気絶しているようだ、致命傷には程遠い。さすが師匠、命を奪わず止めるだけの、絶妙にコントロールされた一撃だった」」

 状況判断能力に長けているルーシアは即座に判断した、一方のクリスは早くも興味を無くして、壁際の花を見つめるために元の場所に戻った。

「あんな一撃は普通コントロールどころじゃない全力なんだけどね」

 つぶやくカレン。
 目を回していたユイは次第にしぼんで、人間の姿に戻っていく。

「う……ん、あれ? これって……」

 気がついたユイはあたりを訝しげに見回した。

「ユイ」
「お、お兄ちゃん? これってまさか、あたしが……?」

 返事の代わりにまっすぐユイを見つめる。

「うっ……しょ、しょうがないじゃん、あんな事をいわれたら――」
「ユイ」
「――ごめんなさい」

 ユイはシュンとなって、素直に謝った。
 これはドラゴンのほこりによるものだ。

 誇り高き黄金竜である末裔のユイは、力を制御できずに暴走する未熟な行為を恥じる。
 例えどんなに挑発されても自分を見失わないのがドラゴンなのだ。

 それに乗って暴走した自分を反省している用だ。

「はあ……仕方ない」
「ごめんなさいお兄ちゃん! もうしないから追い出すのだけは――」
「俺がコントロールの方法を教えてやる」
「――やめて、ってえ?」
「コントロールの方法を教えてやるからしばらくここにいろ」
「い、いていいの?」
「ああ」
「やったぁ……」

 ユイは小さくガッツポーズした、なんでガッツポーズなんかを?
 分からないけど、とりあえずユイが暴走しないでコントロール出来る様にしないとだめだな。

「……やったぁ」
「ほらやっぱりなんとかした方がよかったじゃん」

 カレンがなんか得意げな顔をしてて妙に腹が立ったから、体当たりで頭突きしといた。
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