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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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初集結

 クリスタルタワー前、数日ぶりの本拠にクリスも一緒についてきた。

「ここがスライムの家?」
「家って言うか……まあそうだな」
「そう」

 頷いて、中に入ろうとするクリス。
 やっぱりここに住み着くつもりなのかな。
 まあ、問題はないけど。

「また勇者か! ってクリスさん!?」
「え? クリスさんってあのクリスさん?」
「本当だ、ますます怖くなってる」

 先に入っていったクリスを、クリスタルタワー一階のモンスターたちが出迎えた。
 今のクリスタルタワーにいるのって、ルーシアとカレンをのぞけば、元々全員ディープフォレストにいたモンスター達だ。

 もちろんクリスの事を知っている、仲間だったからな。

 クリスがここに住み着いてもなんの問題。

 俺にくっついてきたという事がちょっと気がかりだけど……。

 ユーリエに抱っこされたままクリスタルタワーに入る。

「お、スライム小僧じゃねえか。お前何処にいってんだ?」

 騒ぎになってるクリス、その様子を見にちょうどシェスタが降りてきたところだ。

「ちょっとね」
「あまり出歩くなよ? 外で勇者にやられたら復活できねんだからな」
「わかってる」

 なんだかんだで仲間のモンスターには優しいし、面倒見のいいシェスタだ。
 そのシェスタはクリスに近づいていく。

 クリスタルタワーのボス、そしてディープフォレストで有名な実力者。
 二人の対面に、居合わせたモンスターたちは見るからにわくわくしているみたいだった。

 そこに勇者がやってきた。

 クリスタルタワーの入り口に現われたのは若い人間の女だった。
 若い女で、勇者らしくない格好だった。

 清楚な感じのする白いブラウスに、紺色に近いコルセットとスカート。
 胸が大きく腰が細い、色合いも相まって胸がものすごく強調される服装。

 結構可愛い。

「うおおおお!」
「童貞を殺す服キター!」
「ひゃっはー! 俺が一番乗りだ!」

 戦闘よりも何かのアピールに向いてそうな服に、一階のメインモンスターであるゴブリン連中が真っ先に飛び出した。
 中には見知った顔もいる……お前もかテリー。

 ほぼ全員が一斉に押し寄せたゴブリンだが、あっという間に蹴散らされた。
 女のスタイルは、格闘。
 いや拳法か?

 型がきっちりしてて、一撃一撃が重々しく感じる拳法だ。

 それでゴブリンを一瞬で蹴散らした後、残ったモンスター達の視線は自然と二人に注がれた。

 シェスタと、クリス。

 この場でもっとも強い二人にだ。

『一番強いのはスライム様です』
『それはいいから』

 日を追うごとにアレックス化してくユーリエを宥めつつ状況を見守る。
 現状俺は他のモンスターと同じ、その他大勢だ。
 裏クリスタルタワーならともかく、ここでしゃしゃり出る訳にはいかない。

 動いたのはクリスだった。
 クリスはスライムこん棒を持って、ゆっくりと女勇者に近づいていく。

 間合いのぎりぎり外でにらみ合い、互いに出方をはかってる。
 すると。

「ちんたらやってんじゃねえよ、おれ様がそいつを倒してやるぜ」

 シェスタが後ろから飛んできた。
 空気を読まないシェスタ、皮肉にもそれが均衡を破るきっかけになった。

 クリスはこん棒を真横にフルスイング、女勇者はドシーン! と床を踏みならして腰構えのパンチを放つ。

 こん棒とパンチ、真っ向から打ち合って衝撃波を飛ばした。

「うおおおお――ぼげっ!」

 衝撃波に吹っ飛ばされたシェスタは壁に後頭部をあてて気絶した。
 目を回して気絶するシェスタはいつも通りでちょっと安心した。

 一方、初撃は女勇者に軍配が上がった。
 打ち合った拳とこん棒、拳はうっすらと赤みをさしただけですんだが、こん棒はへし折られてしまった。

 スライムのこん棒、それが折られてクリスのオーラが無軌道に垂れ流されるようになったから、ビジュアル的に弱体化して見えた。

 第一ラウンドは勇者の完勝に見えて、モンスター達がざわざわした。
 モンスター側が押されているということで動揺が走る。

 俺は参戦することにした。
 いつも通り魔法を使ってシェスタを操る、ちょうど頭をぶつけて気絶してるのがよかった。

 のそり、と立ち上がるシェスタ。

「クリス、お前は下がれ」
「……?」
「そいつはおれ様がやる。お前はまだここの人間じゃない。手を出すな」
「わかった」

 クリスはあっさり引き下がった。代わりにシェスタが前にでる。
 女勇者と向き合うシェスタ。

「行くぜ」

 シェスタが先に飛び出した。
 女勇者が反撃する、同じように床をドシーンを踏みしめて、今度はぐるりと円を描いてのハンマーパンチを振り下ろす。

「あまい! ……このおれ様の一撃を食らえ」

 シェスタのキャラクターを意識しつつ反撃。ハンマーパンチを真っ向から受け止めて、そのまま背中でタックルする。

 女の拳法は見た事がある、それを記憶便りに真似た背中タックルだ。
 たしかナントカこう、って技だったはずだ。

 それにやられた女勇者は吹っ飛ぶ。
 ボキボキと骨の折れる音を立てながら吹っ飛び、壁に背中を打ち付けて、糸の切れた人形のように倒れる。

「あーはっははは。百年早かったみてえだな勇者よ」

 そしてシェスタに勝利宣言をさせる。
 瞬間、クリスタルタワーはボスの勝利にいつものように沸いたのだった。

     ☆

 裏クリスタルタワー。
 一件落着して戻ってきた俺に、クリスもついてきた。

 裏ダンジョンにクリスはまったく興味を示すことなく、俺に聞いてきた。

「今の」
「え?」
「ネズミを勝たせたのスライムの仕業?」
「何を言ってるんだあれはシェスタが強いからであって――」
「こん棒と似てた」
「――そうか」

 俺は観念した、ピンポイントでそう言われるとごまかしきれないと思ったからだ。

「訳あって表向きのボスはシェスタにしてある……この事誰にも言わないでくれ」
「言わない」

 クリスは即答した。

「興味ないから」

 花じゃないから、なのか。
 クリスと言えば花、多分それ以外あらゆる事に興味が無いのが想像出来る。
 それは結構助かる。

「リュウ様お帰りー」
「お帰りなさい」

 とりあえずホッとしたところに、表からカレンがやってきた。
 それに合わせて、裏の隅っこで正座(鍛錬)してたルーシアも立ち上がってこっちに来た。

「あれ? 新顔?」
「相当つよい……多分この塔で二番目」
「……」

 カレン、ルーシア、クリス。
 三人は向かい合って、互いをみた。

 緊迫した空気が流れる、な、何が起きるんだ?
 ハラハラして見守って、場合によっては介入しなきゃってみてたが。

「あたしはカレン、リュウ様忠誠度100%のナイトクイーン。よろしく」
「ルーシアというわ。人間だけど師匠の弟子よ」
「花を見せてもらった、感謝してる」

 三人がそれぞれ何かを主張すると、緊迫感が綺麗さっぱり消えてなくなった。
 とりあえず仲良くしてくれるのはありがたい、喧嘩なんてされた日には面倒臭さMAXだからな。

 俺はユーリエを座らせて、その上でまったくした。
 半溶けのミラクルフィット、太陽の光がない時はこれが一番気持ちよくくつろげる。

 クリスは静かだし、ここに居着いても面倒臭いことにはならないだろう。
 そう思ってくつろぎはじめたが。

「お兄ちゃん帰ったなら帰ったってちゃんと――って増えてる!」

 表からやってきたユイが声を張り上げた。
 ドラゴン娘、義理の妹、ユイ。
 やってきていきなり、彼女は何故かものすごく不機嫌な顔をして。

「また増えてる……ちょっと目を離したら増える……」

 とつぶやいた。

「どうしたんだユイ、何か用か?」
「……ないわよ!」
「へ?」
「お兄ちゃんに用があるわけないじゃん」
「いや用がなくてくるわけが――」
「それよりも!」

 ユイはいつもの様に、怒りっぽい顔で宣言する。

「あたしもここに住むから」
「え? いやお前は八階に――」
「す・む・か・ら」

 ユイの剣幕におされて、思わず「お、おう」と頷いてしまった。

「これ以上増えないように見張ってなきゃ」

 ぶつぶつと何かをつぶやくユイ。
 なんか……また面倒臭いことになりそうな気がする。
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