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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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百年に一回だけの花

 花畑の近くでひなたぼっこをたっぷりして、天然の太陽の光を浴びれて、満足した。
 あまり開けすぎるのもよくないから、俺はクリスタルタワーへの家路についた。

 いつも通りユーリエに抱っこされたまま、運んでもらう。

 テクテクテク、ドッスン、ドッスン。
 テクテクテク、ドッスン、ドッスン。

 ユーリエの後ろを、鬼の巨人がついてきていた。

 ユーリエに言って立ち止まって、振り向く。

「どうした――っておい!」
「?」

 キョトン、と小首を傾げるクリス。
 仕草そのものは可愛らしいが、鬼の面をかぶったオーガがするとちょっと怖い。
 いやちょっとどころじゃない結構怖い。

「なにか?」
「なにかじゃなくて……気づいてないのか自分で」
「?」

 やっぱり首をかしげるクリス、ようやく俺の視線を追って振り向いた。
 俺たちが――クリスが歩いてきた道は死屍累々だった。

 鳥や蝶々といった飛ぶ生き物が地面で息絶えてる。
 通ってきた道で息絶えて、それが道を作っている。

 どういうことなのか、って不思議がってるとすぐに理由が分かった。
 また一羽、小鳥が墜ちてきたからだ。

 クリスの真上から、まがまがしいオーラが立ちこめる真上から墜ちてきた。
 体の一部がオーラに絡み取られて、地面で苦しそうにもがいたが、すぐに動かなくなった。

 クリスの通った道が、自身のオーラによって死体の道を作りあげられていた。
 絵本で「パンをちぎって来た道を忘れないようにする」って話を見た事がある、それに似た、でも大分見た目がエグい。

 一方で、それを見たクリスがますます首をかしげた。

「なに?」
「鳥とか蝶々はいいのか?」
「……?」

 更に首をかしげる、何を言いたいのかわからないって顔だ。

『本当に花だけなんですね』
『そうみたいだ』

 念話でユーリエが言ってきて、俺も頷き帰した。
 花と、小鳥や蝶々の様なものは、ユーリエそして元人間である俺の中では同じカテゴリーになってる。

 花を好きな人間が、100%とは言わないが小鳥や蝶々も好きな可能性が高い。
 それを、クリスはまったく気にしなかった。

 そういうヤツなのか、と俺はまた一つ、クリスの事をよく知った気分になった。

 再び歩き出すユーリエ、クリスはまたついてくる。

 このままクリスタルタワーまでついてくるのか。それはそれで別に構わないか。
 クリスタルタワーに強いモンスターがいる分にはまったく問題が無い、むしろ俺がサボれていい。

 だから何もいわず、クリスの好きなようにさせた。

 そうして歩いてると、ユーリエの疲労がたまったみたいだから、休憩をする様にいった。
 俺を抱っこしてるユーリエはただ歩いてるようでそうじゃない。
 常に肉体と魔力の両方に負荷を掛けている、いわば常時筋トレ状態だ。
 俺は丸一日持つように負荷を微調整しているが、まだ俺の教えを受けてそんなに経ってないユーリエは飛ばしすぎてつかれる事も多い。

 それに休めと命じたのだ。

 俺を抱っこしたユーリエがすわると、クリスも近くにすわった。
 巨体のオーガが膝を抱えてすわっている、凶悪きわまりないオーラを立ちこめながら。

 ものすごいビジュアルだ、デフォルメされたイラストならそういうのもアリだろうが、現実で見た場合そのアンバランスさにちょっとどうにかなりそうだ。

 そんなクリスは、ある一点をじっと見つめていた。

「何をみてるんだ?」
「花」
「花?」

 クリスの視線を追いかける、木の切り株のところにそれを見つけた。

『雑草にみえる……』

 ユーリエがつぶやくように、それはただの雑草に見える。
 もっとも、クリスの方が正しい……というか。

「よくそれが花だって分かるな」
「うん、分かる。花なら」
「それの正体は知ってるのか?」
「分からない。でも花なのは分かる」
「そうか」

『本当に花なんですかスライム様』
『ミフリマ、っていうすっごい珍しい花だ、数年に一回しか咲かない。咲いてないときはこんな風にただの雑草にしか見えない』
『そっか』

 ユーリエは普通に納得した。
 花の中にはそういうものもあるんだと、体験的に分かっているんだ。

 ……。

『ユーリエ、俺を下ろしてくれ』
『はい』

 ユーリエは訝しみながらも言われた通りにした。
 俺は地面に降りて、来た道を引き返した。

 クリスが気づきあげた、死屍累々の道を。
 その道を通って、鳥や蝶々、トンボとか。

 ついさっきまで飛んでいた生き物をスライムの体の中に取り込んでいく。

 魔法を行使、そしてイメージ。
 粉砕、攪拌、そして熟成。

 最後に付与もして、できあがりだ。

 クリスとユーリエのところに戻ってくる。

「クリス」
「なに?」
「見てな」

 俺は体に取り込んだものを吐き出した。
 淡い光を帯びたそれを、雑草に見える花のまわりに幕。

「それは」
「肥料みたいなものだな。俺オリジナルだ」
「肥料……」

 首をかしげるクリス。
 しばらく経って、変化が起きる。
 雑草に見えていたそれに蕾がつき、蕾がそのまま咲いた。

 花が、二輪。
 金色の花と銀色の花だ。

「あっ……」
「ミフリマ。こういう花だ。滅多に咲かないが、咲いたときは金と銀の花が同時につく」
「綺麗……」
「気に入ったみたいだな」

 クリスはうっとりして花を見つめた。心なしかオーラが更に禍々しさをましたが、それも喜んでる証拠でこっちまでが嬉しくなる。

 俺はユーリエの腕に飛び乗る。

『つかれたから、後は頼むぞ』
『そんなにつかれたんですか?』

 俺は答えない、本当にちょっとだけつかれたから。
 あれは本来百年に一度しか咲かないような花、咲いてるのをみかけるとなんでも願いが叶うって伝説までもってる花だ。

 咲かせるために大分魔力を使った。
 まあ、でも。

 ごごごごごごご。

 クリスは喜んでるみたいだし、やってよかったと思った。
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