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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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お兄ちゃんのプレゼント

 裏クリスタルタワー、ユーリエに抱っこされたままルーシアと向き合う。
 俺の頭上で二人が密かに火花を散らしている気がするけど、あえて気にしない。

 俺はルーシアに向き合って、彼女の鎧を調整した。
 元々の姫鎧にスライムの体でコーディングして「闇堕ち」を演出したつもりだが、色合いだけで微妙に足りないから微調整を施した。

 色をさらにまがまがしく、一部はダークな色で明滅させる。
 さらに鎧の襟から首にかけて「肉体を侵食している」用に見える「筋」も作った。

「ユーリエ、何歩か下がってくれ」
「はい」

 ルーシアから距離をとって、できばえを確認。
 うん、前より大分よくなった。
 もはやどこからどう見ても「闇落ちした王女」にしか見えない。

「これでよし。見た目でわかるようになってるから、もう変に絶叫しなくていいぞ」
「ありがとう師匠。すまない手を煩わせてしまって」
「気にするな、これも修行だ」
「修行?」
「キーワードはお前に修行をつけ始めた頃に教えたやつだ、試しにやってみろ」
「はあ……」

 ルーシアは狐につままれたような顔をしたが、そこは師匠(おれ)のいうことだ、と言わんばかりに素直に何かをつぶやいた。

 瞬間、鎧が一斉にパージする。
 彼女が元々きていて、俺がスライムのボディでコーディングした闇の鎧がパージされた。

 軽装になった彼女は自分の手のひらを見て驚く。

「こ、これは一体……」
「力が上がっただろ? 一時的なものだ。そういう呪法で作っといた。オレ流の修行法だとその鎧は実質拘束具みたいなもんだ。体力と魔力の両方に緩やかな負荷をかけて日常の中でも鍛える方法だからな」
「ああ」
「だから拘束具を外した瞬間、体が再びそれになれるまで一時的に飛躍的に能力が跳ね上がる。必要なときに使うといい」
「ありがとう師匠!」

 ルーシアは思いっきり感動した顔で俺を見つめた。

「礼はいい。その代わり勇者が侵入してきたときに排除してくれればいい」
「任せてくれ、師匠のためにあらゆる敵を粉砕する」
「よし」

 ユーリエと違うベクトルのくそ真面目なルーシアだ、これで彼女に全部任せることができるぞ。
 スライム武器で洗脳してるって設定はテリーとリリにも言って納得してもらってるから、二人がいても俺はサボれる。

 うん、いい形だ。
 ここに来てようやく完全にのんびりできる形になったかな?

 さて、今日も人工太陽を作ってひなたぼっこするか――と思ったそのとき。
 一人の少女が裏クリスタルタワーに入ってきた。

 角と翼をはやしているドラゴンの少女。
 俺の義理の妹、ドラゴンのユイだ。

「お兄ちゃん、ちょっと話が――むっ」

 裏に入ってきて、俺を呼んだユイだったがルーシアに気づいた顔色を変えた。

「勇者? 見たことある顔だ。こんなどころまで!」

 ユイは問答無用とばかりにルーシアに襲いかかった。
 人型をしていてもドラゴンはドラゴン、強靱な肉体から放たれる一撃がルーシアを襲う。

 ルーシアは座してやられるような子じゃない。拘束具をパージしたまま――能力が上昇したままでガリアンソードを抜き放ち応戦する。

 ガキーン!

 裏クリスタルタワー全体が震撼するほどの衝撃が突き抜ける。
 ユーリエが「きゃっ」と尻餅をついてしまうほどだ。

「まてまて」

 俺はユーリエから飛び降りて、二人の間に割り込んだ。

「どいてお兄ちゃん、そいつ殺せない」
「いや殺さなくていいから」

 俺はユイからルーシアをかばって、言った。

「ルーシア、鎧を着け直せ」
「わかった」
「見ての通りだ、こいつは今俺の支配下にある」

 ルーシアとの関係を説明するには俺の前世を話す必要がある、それはユイにも話せないことだ(面倒くさいから)。
 ユイは俺の力を知ってるから、彼女には。

「俺が自分の体を一部変形させて彼女の鎧にとりついた。ルーシアは今完全に俺の支配下だ」
「……」

 ユイはいったん手を下ろし、俺越しにルーシアを見た。

「お兄ちゃんの体で……洗脳と支配……」

 俺がいいわけに使ったキーワードをブツブツと復唱するユイ。
 衝動的な性格だが、そこはやはりドラゴン。
 彼女も聡明的だから、すぐに理解するはずだ。

「……うらやましい」
「え? なんか言ったか?」
「話はわかった」
「そうか、じゃあ――」
「お兄ちゃんといて、そいつ殺せない」
「今話を理解したはずだよな!」

 何でまだ殺したがってるんだ?

「だって……」

 唇をとがらせて、ぶすっとするユイ。
 なんだ? 一体何が不満なんだ?

『あの、スライム様』

 さっき尻餅をついたユーリエが念話で話しかけてきた。

『どうした』
『もしかしてなんですけど……』

 ユーリエは彼女の考えと、こうしたらいいかもしれない、ってアドバイスをしてくれた。

 正直意味不明だけど、やって損はないことだからとりあえず言われた通りにやってみることにした。

「ユイ」
「なにさ!」
「これ」

 俺は体の一部を溶かして、魔力を込めて整形した。
 作ったのは、リボン。
 何の変哲もないただのリボン。

 おどろおどろしくもなく、魔力の負荷がかかるわけでもない。

 俺の体、スライムの体からできたということを除けばただのリボンだ。

 それをユイの髪に結んだ。

「こ、これって」
「ユイにあげる」
「私に……? ふ、ふん」

 満足しなかったのか、ユイは鼻を鳴らして顔を背けてしまった。

「こんなのでごまかされないんだからね」
「ごまかしてって言うか……」

 ごますりの方が近いけど……それは言わないでおく。

 というかだめじゃないか、ってユーリエをにらんだ。
 何が「スライム様の体で作ったアクセサリーをプレゼントすればいい」だよ。
 全然だめじゃないか。

 と、思ったけど。

「――♪」

 さっきまで不機嫌そうだったユイが、リボンをなでながら鼻歌を歌い出した。
 急に機嫌がよくなったっぽい。

「――はっ」

 俺が見てることに気づいて、今度は慌て出すユイ。
 感情がころころ変わって、忙しいやつだな。

「べ、別に気に入ってるとかじゃないんだからね」
「ああ」
「こんなのいらないから、処分してくる」
「いやいらないんなら俺が――」
「じゃあね!」

 ユイはリボンをつけたまま裏クリスタルタワーから出て行った。
 最後はリボンを外して、両手で抱えるように持っていた。

 それを見送った俺とルーシア。

「一体なんなんだ?」
「さあ?」

「二人ともにぶっ!」

 俺とルーシアに、ユーリエはなぜか突っ込んできたのだった。
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