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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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やれば出来る子

 裏クリスタルタワー。
 この日も人工太陽をつくって、ユーリエの腕の中でのんびりまったりしていた。

 いや、いつもよりのんびりしているかもしれない
 理由は、ちょっと前から居着いたルーシアだ。

 まったりした状態の俺が腹を空かせば。

「食事を用意しました。師匠の好きな川魚の塩焼きです」

 ルーシアがめざとく察してメシを用意する。
 喉がかわけば。

「お水をお持ちしました。師匠が好きな一度蒸発した真水です」

 と水を用意してくれる。
 シェスタを突破して裏クリスタルタワーに侵入して来る勇者も。

「ここは通行止めだ妄者(もうじゃ)ども」

 入って来た瞬間にガリオンソードと魔法のコンビネーションで瞬殺した。
 まさに至れり尽くせり、ここまで邪魔が入らず、のんびり出来たのは何時以来か、ってくらいのんびり出来た。

 他の教え子同様に俺を慕ってるが、そのベクトルが違うルーシア。
 彼女は俺を前に押し出す様なことはしなく、のんびりだらけたい俺を全肯定してくれる。

 正直やってくれる事は全部自分でやった方が速いけどこれは嬉しかった。
 そのルーシアが生真面目な顔をしてかいがいしく尽くしてくれる一方で、俺を抱っこしてるユーリエが仏頂面をしていた。

 ぶすっとして唇をすぼめて、ルーシアを半ば睨んでいる。
 どうしたんだろうって思っていると。

「師匠、こちらを尿瓶代わりにしてください」
「お姉さん!」

 俺の生理現象を察知し、どこからともなく深い容器を取り出したルーシアに対し、ユーリエがいよいよキレ(、、)てしまった。
 容器を持って近づいてくるルーシアに対し、それまで俺を抱っこしたまますわっていたユーリエが立ち上がりにらみつけた。

「なんだ?」
「なんだじゃありません。いくら何でもそれは度が過ぎます!」
「度が過ぎる?」
「そんな事をスライム様にして侮辱だとは思わないのですか? それにそんな事をしているのが他人の目に触れたらスライム様がどれだけ恥ずかしいって考えたことはないんですか」

 ユーリエはルーシアを怒鳴った。言いたい事は分かる。

 この日、ルーシアが俺にしてくれた事はまるっきりおじいちゃんの介護だ。
 至れり尽くせりってレベルじゃない、何も出来ないおじいちゃんに介護している様なもんだ。

 腹が減ればメシ、喉が渇けば水、生理現象が来れば尿瓶。
 こんなにしてもらってると、ダメ人間になっていきそうな気がしてくる。

「侮辱だとは思わん。師匠がこれを望んでおられる。楽にのんびり過ごす事を望んでおられるのだ」

 その通り。
 確かに全部が全部、自分でやった方が速いんだけど、何もしないでそれが出てくるのは楽でいい。
 俺の事をよく知ってるルーシアだから出来る事だ。

「そ、そうだとしてもそれをスライム様にするのを他の人が見たら、スライム様の威厳に傷がつきます」
「師匠のすごさはこの程度の事でなんら目減りするものではない。それにわからん輩、失望する輩は勝手にそうすればいい。師匠のすごさを知るのは選ばれた人間だけでいい」
「選ばれた人間だけなのは分かりますけど、それとスライム様の名を傷つけるのとは話が別です」

「――」
「――」

 争いがヒートアップ、エキサイトしていく二人。

 ユーリエはアレックスタイプだ。
 (リュウ)が究極で、全人類はそれをしって傅くべきだっていう考え方で、それ故にだらける俺を表舞台に引っ張り出したがるタイプ。

 ルーシアは逆に、しってるヤツだけ知ってればいいって言うスタンス、俺に好きなことを好きなときにやればいいと思っているタイプ。

 どっちがいいか悪いかって話じゃないけど、俺にはルーシアタイプの方がありがたい。
 のんびりしたがる俺を、無理矢理どこかに引っ張り出そうとしないからだ。

 俺の頭上で言い争う二人。
 しばらく聞いていたけど、どうやら両方とも俺を巻き込むつもりはないようで、互いに自己主張を繰り返しているだけ。

 それ幸いとばかりに、俺は魔法を使って、聴覚をシャットアウトした。
 二人の声が聞こえなくなった。しかし触覚で、皮膚の震動で二人の話している声が空気の振動で伝わってくるので、触覚も切っておいた。

 そうして、だらける俺。
 二人の声と言い合う内容がまったく聞こえてこなくなったので、ユーリエの腕の中で全力でだらけた。

 極楽だ。
 何もしないでいいなんて極楽だ。
 視覚は切り損ねたから、ルーシアが再び裏に辿り着いた勇者を瞬殺するのが見えたから、それを機に視覚も切った。

 まるでぬるま湯の中に浸かって、プカプカ浮かんでいるような最高にまったりした感覚になった。

 今日はもうこのまま何もしたくない……って思ったけどそうもいかなかったみたいだ。

 強い存在を感じた。
 かなり強い勇者がクリスタルタワーに向かってくるのを感じた。

 オレ流ランク付けだと、上から三番目のB、SABCDEFのCランク。
 放っておけばシェスタは抜けるしその後裏にちょこちょこ来られると面倒臭いランクだ。

 クリスタルタワー最上階に辿り着くまでに追い返した方がイイ勇者。

 感覚を解放。ルーシアとユーリエが頭上で言い争う中、密かに探知魔法を放つ。
 探知の結果、精神攻撃に弱そうだから遠隔でナイトメアを放った。

 カレンの技、相手に淫夢を見せる技。
 勇者を眠らせて最高の淫夢を見せる。最後にオチをつけて、このクリスタルタワーにはもう用はないと誘導する。

 ナイトメアを設定して放った後、勇者の気配はその場で止まった。
 この後一昼夜掛けて最高に幸せな淫夢を見て、それから去っていくだろう。

 これでよし、と。
 さてまたのんびりするか。

「師匠はやるときにはやるお方だ」
「そんなのダメな子供の擁護でスライム様の株を下げてしまいます!」

 二人はまだ言い争っていた。
 やっぱり俺を巻き込む様な気配はないから、俺は再び感覚を切ってのんびりした。

 やればできる? その通り。
 今はやる必要がないから、のんびりさせてもらうことにした。
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