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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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エンドレス淫夢

 裏クリスタルタワー、例の弱い勇者がまた侵入してきた。
 前回は武器を黒鋼の剣に持ち替えた、今回は剣だけじゃなくて盾も黒鋼製のに持ち替えてた。

 地味にパワーアップしてる、防御力が上がって、迎撃したテリーとリリが手こずるようになった。
 黒鋼の盾で二人のスライム武器を弾いて剣で反撃。
 互角くらいの戦いをする様になった。

「なんだよこれ、こいつの盾かってえぞ」
「リリのも刺さらないよ。なんとかしてリュウ」
「なんとかしてっていわれても……」

 そんなのは困る。
 いや倒すのは簡単だ。この程度の勇者その気になれば軽くひねることが出来る。
 人間だった頃の感覚で言えばアリを踏みつぶす程度のものだ。

 でもやり過ぎると俺の強さが二人にばれてこの後面倒な事になる。
 あくまで俺は弱い弱いスライム、ゴブリンのテリーやインプのリリと同じくらいに強い(弱い)のが大事だ。
 だから考える、勇者と戦いながら、ぎりぎりで倒したように見せかける方法を考えた。

 さんざん悩んだ結果、ある流れを思いついた。
 それを頭の中で検証する、やった後、テリーとリリの反応も含めて。
 それでいけると思って、二人に呼びかけた。

「テリー、リリ。俺があの盾を何とかするから、俺の後に全力で攻撃しろ」
「なんとかするってどうすんだよ」
「大丈夫なの?」
「スライムなりのやり方を見せてやる」

 いつもはしない、自信の籠もった言い方をすると、テリーとリリは互いを見て、うなずき合って納得してくれた。
 こっちが打ち合わせしてる間も手を緩めない勇者と斬りかかって、その勢いで二人は大きく飛び下がった。

『ユーリエ、俺を投げろ、無造作にでいい』
『分かりました』

 念話で指示をだして、ユーリエに俺を投げてもらった。
 一直線に、しかし大して勢いもなく勇者に向かって飛んでいく俺。

 黒鋼の盾を手に入れたおかげで互角以上に戦いを出来る様になったそいつはすっかり盾に頼り切って、見るからに力のないスライムの体当たりでもまずは盾で防ごうとした。

 俺の体が盾に当たった瞬間、溶けた。
 スライムの特性だ、もともと半固体だった体を溶かして盾に当てた。
 結果、俺の体が盾を呑み込んだ。

 溶けたスライムの体が盾全体を包み込んで、魔法を使った。
 スライムでも出来る事だが、それを強くやるために魔法でした。

 ものをとかし、腐食する魔法。
 俺の強大な魔力で発動されたそれは、黒鋼の盾をボロボロにした。

「うわ! は、離れろ!」

 勇者は慌てて盾を振った、俺は振りほどかれた。
 もちろんわざとだ、地面にたたきつけられ、それで元に戻った俺はみるからにボロボロな格好になった。

 俺もボロボロ、黒鋼の盾もボロボロ。

「何が起きたんだ?」
「リュウが捨て身で盾をボロボロにしてくれたんだよ」

 リリはテリーよりも理解が早かった。まあ俺がわかりやすくそうしたんだがな。

「そういうことか! よーし、これなら勝てるぞ」
「うん!」

 テリーとリリはスライム武器を構えて、勇者に挑みかかっていく。
 頼みの綱だった黒鋼の盾はボロボロになって、二人の攻撃を受けてそのまま砕け散った。
 盾がなくなり、前回と同じ強さに戻って勇者は、その後テリーとリリにやられてしまうのだった。

     ☆

 勇者もテリーもリリもいなくなった裏クリスタルタワーで、俺はユーリエに抱っこされて休んでいた。
 かなりつかれた、一度裏に入って来た勇者だ、そのまま裏に直行できるから、シェスタを操って倒させる、ってのが出来なくて、まわりくどいやり方で普段よりもつかれた。

「はあ……」

 ため息が出るくらい、普段よりもつかれてしまった。

「お疲れだねリュウ様」
「カレンか。悪いけど今日は相手をしてる気分じゃない」
「どうしたの? そんなにつかれて」
「面倒臭いヤツがいるんだよ」

 例の勇者の事をカレンに説明した。
 裏に直行できるようになって、徐々にパワーアップしてくるやっかいなヤツの事を事細かにカレンに話した。

「それは面倒臭いね」
「しかもあいつ、他の勇者よりも来る頻度が高いんだよ。この調子だと明日にまた来るんじゃないのか?」

 自分で推測しといてなんだが、それを想像してますますげんなりとした。
 明日もまたくるかもしれない、下手したら更にパワーアップしてるかも知れない。
 それを相手するって考えるだけでうっとうしくなった。

 かといって全力でたたきのめすわけにもいかない。
 テリーやリリがいる時はもちろん、いないときもだ。

 ダンジョンの中でいくら倒しても、勇者は村や町に復活してしまう。
 それは知識を持ち帰れるって事で、俺が全力を出して倒したらここにメチャクチャ強いスライムがいるってばれる。

 それは絶対にやっちゃダメな事だ。

 とはいえこのまま何回も何回も来られてもなあ。

「どうにかしてもう来ない様にさせないとな」
「あたしにいい考えがあるよ」
「いい考え?」
「うん! それを実現するにはちょっとだけリュウ様の魔力を借りたいんだけど――」

 カレンが言い終わるよりも早く俺は彼女に魔力を飛ばした。
 モンスター同士で譲渡出来る様に魔力を変換して、彼女に飛ばした。
 受け取ったカレンはちょっとだけ驚いた。

「それで足りるか?」
「うん……こんなにあっさり貸してくれるなんて思わなかった。リュウ様面倒くさがりなのに」
「誤解するな、俺はやるときはやるんだ」
「えー。なんかそれダメな人っぽい台詞なんだけど」

 俺もそう思った。
 だが本当だ。
 今やれば後で楽になるって分かったら今サボるのはアホだ。
 そういう意味じゃ、やるときはやる男なんだよ、俺は。

「それよりもどうするつもりなんだ?」
「えっとね――」

 カレンはニコニコ顔で、俺に彼女が思ってるプランを話してくれた。

     ☆

 次の日、予想通り例の勇者が裏クリスタルタワーに侵入してきた。
 右手に黒鋼の剣、左手に昨日ボロボロにしたはずの黒鋼の盾。
 体は黒鋼の鎧になってて、どこから見ても昨日以上にパワーアップしている。

 そいつを出迎えたのはカレン一人。
 俺は大分離れたところで隠れて観戦した。

 勇者は果敢にカレンに斬りかかった。
 カレンは黒鋼の剣をひょいってよけて、横に回ってほっぺにキスをした。
 勇者は一瞬驚いたが、直後白目を剥いて倒れた。

 カレンは鎧姿の勇者の上に馬乗りになって、舌なめずりをした。

 俺は姿を見せて、二人に近づいた。

「やったのか?」
「今からやるんだ」
「どうするんだ?」
「ナイトメアでね、夢の中でメチャクチャセックスさせるの」
「それはご褒美じゃないのか?」
「ちがうよー」

 カレンはニシシ、と笑った。
 モンスターらしい、悪企みをしている時の笑みだ。

「最初の内は確かにご褒美っぽいけど、それを続けるんだ」
「続ける?」
「そ、とにかく続ける。夢のなかだから時間は有り余ってるしね。あらゆるセックスをあらゆるシチュエーションでやらせて。それを一万回くらい繰り返させるの。そこまでやったら大抵の人間は廃人確定だね」
「なるほど。そうかそれで俺の魔力が必要だったのか」
「うん! あたしの力じゃ一万回も繰り返させるの無理だからね」

 カレンは申し訳ないって顔をした。

「昨日渡した分の魔力で足りるか? 何だったらもう少しやろうか」
「それは大丈夫、リュウ様の魔力すごいから、あれでおつりが来るくらいだよ」
「そうか、じゃあやってくれ」
「うん!」

 カレンは勇者に馬乗りになったまま、頬を両手で挟み込むようにして、顔を近づけて顔をのぞき込む。
 いつになく真剣な横顔。
 淫夢を見せるナイトクイーンの横顔を、俺は綺麗だと思った。

 直後、勇者がビクン、ビクンとけいれんをはじめた。顔はだらしなくなって、夢の中で「いい思い」をしているのが分かった。
 その顔もすぐに変わってしまう。
 時の流れが違う夢の中でエンドレスセックス、終わらない淫夢に勇者は次第に苦悶の表情をする様になり、それが更に空虚な表情に変わっていく。

 俺の魔力を借りて発動したカレンのナイトメアは勇者を廃人にした。
 この日を境に、こいつがダンジョンに現われる事はなかったのだった。
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