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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第三章

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裏ボスの噂

 裏クリスタルタワー一階。
 表とは同じような内装だが色合いが微妙に違うそこに、俺が一人でいた。
 出来たばかりの裏ダンジョン、まずは性能チェックだ。

 何もない空間に自分の分身を作る。
 スライムのボディの上に、肉体硬化と多重の障壁を付与する。

 まずは体当たりした。
 コチン! って音がして、目の前がチカチカした。
 かなりの硬さになってる事が分かって満足する。

 前提条件を確認したから、今度は距離を取った。

 ドラゴンの力を解放する。
 全力をだして、魔力を竜の姿にかえる。
 自分の分身に向かって最強の一撃を振り下ろす。

黄金の前足(ファイナルストライク)

 絶対必殺の一撃は俺が作った分身を多重障壁ごと消し飛ばし、余波で塔が半壊した。

 半壊はしたが、塔の主(、、、)が無事だったから徐々に修復されていく。

 そのまま待った。あえてこっちから呼ばない(、、、、、、、、)でまった。
 しばらくするとユーリエが入って来た。
 俺の教え子で、かつてはディープフォレストに生け贄に捧げられてきた真面目な少女。

「わわっ、すごく壊れてる。さすがスライム様……」

 それでも半分以上は元に戻ったんだけど、とは面倒臭いから言わなかった。

「んな事よりどうだったんだよユーリエ」
「はい、スライム様に言われた通りずっと表にいましたけど、スライム様の波動は一切感じられませんでした」
「そうか」

 俺はユーリエに飛び乗って抱っこしてもらって、いつものくつろぎ()修行(ユーリエ)の態勢になった。

 俺の教え子であるユーリエは、俺一門の特殊な魔力の波動(リズムと表現する時もある)を感じ取る事ができる。
 裏ダンジョンが出来たってことで、力を使ったときに表に漏れるかどうかをチェックしてもらった。

 俺の分身を消し飛ばし、なおかつ裏ダンジョンを半壊させるほどの一撃でも波動は外に漏れなかった。

 これならアレックスに見つかることもないだろう。
 厳密に言えば魔力の波動とあいつが感じてる「魂の匂い」とは別物で、前にミスリードしたからあいつ自身に迷いも出ているが。

 それでもこんな風に表に漏れないってのはありがたかった。

 ある意味、俺ののんびりライフにとって一番の敵なのがアレックスだ。
 俺をどうしても表舞台に立たせて全人類を導かせたがるあいつは俺の敵だ。
 だからあいつからは逃げたい、見つかりたくない。
 この裏ダンジョンにいれば逃げ切れそうでホッとした。

「わー、なにこれ、こんなところがあったんだ」
「おもしれえな」

 知ってる声が聞こえてきた。声の方を見るとやっぱりテリーとリリだった。
 二人はユーリエと同じところから入って来た。ここがどんなところかも分からないで、まわりをきょろきょろしている。

「おっ、いたぜリュウだ」
「お前らなんでここに
「もうっ、探したんだよ。リュウってばいきなりいなくなるんだもん」
「でも生け贄のねーちゃんに着いてくれば絶対リュウがいるって思ってたぜ」
「今もずる休みしてるもんね」
「そんな、スライム様は私の――」
『ユーリエ』

 念話でユーリエを制止した。
 これも俺一門の技、俺と門下生が心で会話を出来る技だ。

 テリーとリリには俺の強さを教えてない。
 ユーリエはアレックスに似てるから俺が誤解されるのがいやみたいだが、俺からすれば誤解されるのはむしろありがたい。
 誤解を解くつもりなんてさらさらない。

 ユーリエは心の中で「すみません」と謝って、そのまま口を閉ざした。

「それよりもここってなに?」
「ここは――」

 リリの質問に俺はどうすべきかって悩んだが。

「俺知ってるぜ。ここ裏ダンジョンってヤツだろ」
「知ってるのかテリー」

 これには驚いた。最弱で清らかな乙女を集団で襲う事しか頭にないゴブリンがまさか知ってるとは思わなかった。

「あたり前だろ。裏ダンジョンっていえば、伝説のゴブリン・デスが活躍したところでもあるんだぜ。ゴブリンには憧れの場所だぜ」

 ゴブリン・デス……ああ、あのブルーマウンテンにいる、レベルはボスと同じのくせに強さは普通のゴブリンと変わらないっていう変わり種ゴブリンか。
 今までしなかったけど、ゴブリン・デスは裏ダンジョンに住んでたんだな。
 そういうことならテリーが知ってるのも不思議はない。

 さて、そうなるとますますどうすっかな。
 裏ダンジョンって存在からどうやってごまかして納得してもらうか。

「ずりぃぞリュウ」
「え?」
「俺たちに黙ってこんなところにいるなんてよ」
「どういう事なのテリー」
「裏ダンジョンって表のダンジョンをクリアした勇者が来るところだぜ。表をクリア出来る勇者を倒したらどうなると思う?」
「そっかー、名声がますます上がっちゃうんだ」
「その通り! つまりリュウは――」
「名声をひとりじめにしようとしたんだね!」

 え!? いやいや、そんなの考えた事もねえよ。むしろ名声なんて0のままでいてほしい位だ。有名人になればなるほど面倒臭いことが舞い込んでくる。だから名声なんていらない。

 本気でいらないがテリーとリリには通じないようだ。

「ダメだよリュウ、強敵を倒すときは一緒」
「ドラゴンナイトの一員のくせにひとりじめはダメだぞ」
「あ、ああ……」

 やっぱりこうなるか。
 俺とは正反対で、テリーとリリは成り上がり志向が強い。
 俺を含めた三体のモンスターで「ドラゴンナイト」ってのを結成して、勇者と戦っている。
 名前は大げさだが、内訳がスライムとインプとゴブリンという下級モンスター、それに加えて生け贄の人間一人だ。
 ほとんどのモンスターは俺たちの事を「ごっこ」的に見て、微笑ましく見守ってくれてる。

 本当にどうしようかな。

 そんな時一人の勇者が現われた。
 顔は知らない若い勇者だ。

「お、早速勇者が来たぜ。油断するんじゃねえぞ」
「分かってる、あのシェスタさんを倒して裏に入って来れた人だもんね!」
「「ドラゴンナイトだ、覚悟しろ!」」

 テリーとリリは勇者に挑みかかっていった。
 それぞれ俺が作ったスライム武器を持っている。

 勇者は弱く、二人かがりに挟撃されて一瞬で倒された。

「え?」
「うそ、倒しちゃった……」
「どういう事だよ。ここに入れるのは表のボス――シェスタのおっちゃんを倒したからじゃねえのかよ」

 いやそれはあって、勇者がここに来るには表のボスのシェスタを倒さないとダメって設定した。

 問題は、シェスタは普通に弱いって事だ。
 ビッグマウスのシェスタ、口だけの男。

 その弱さはテリーとリリ以下!
 シェスタを倒した勇者がテリーとリリの二人がかりに倒されても何の不思議はない。

「なあ、もしかしてさ……」
「もしかして……だよね」

 テリーとリリは互いを見て、むふ、とにやけた。

「俺たち、いつの間に強くなったんじゃね?」
「ドラゴンナイトだもんね、これくらい当然だよ」

 二人は裏ダンジョン緒戦で大勝した事で気が大きくなっていた。
 俺は頭が痛くなった。
 倒されて、村か町で復活する勇者。

 そいつはしっかりと、二人が「ドラゴンナイト」と名乗ったのを聞いてる。
 それはつまり――。


 そんな俺の奇遇は的中した。

 クリスタルタワーにはビッグマウスのシェスタよりも強いドラゴンナイトというモンスターがいるという噂は、勇者たちの間にあっという間にひろまったのだった。

 名声が上がることからは逃げられない人生なのかな……おれって。
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