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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

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プロローグ~裏クリスタルタワーの四天王

第三章はじめました
「やったー! やったぞ!」

 若い男はガッツポーズした。
 倒した直後にはなかった実感が、じわじわと形になって現われる。

 手のひらの感触、体が持つ熱、そして何より地面に倒れている大ネズミのすがた。
 それらが全て、男がこのダンジョン――クリスタルタワーのボスを倒した事を意味していた。

 達成感が体を満たした。

 塔を攻略してからどれくらい経つのだろう、来る日も来る日も塔を攻略し続けたおとこはその数だけ殺され、街に戻された。

 それでも一歩ずつ前に進んだ。
 力をあげて、装備を調えて、モンスターの動きを覚えて。
 心技体、あらゆる面で少しずつ自分を底上げして、ようやく、塔のボスである大ネズミをたおした。

 これで生まれの村に戻れる、ダンジョンを1つ制した男として、大手を振って幼なじみである村長の娘にプロポーズできる。

「長かった……」

 感動が体を支配する、ぷるぷる震え出す。
 そうしてつかの間の喜びに浸っていた男だったが、次第に様子がおかしい事に気づく。

「制覇の証が……でない?」

 ダンジョンの主を倒した時に制覇の証が現われる。
 それ自体には何の効果もない、人間社会で言えば名刺のようなものだ。
 しかしダンジョンのボスを倒した時にだけ得られるもので、当然のことながら有名なダンジョンや強力なボスのはそれだけでステータスになる。

 小さなダンジョンのものでも、それが信用になってそれなりの土地を無担保無利子でローンを組めるほどで、売れば一生遊んで暮らせる程度の金が手に入る。
 だからこそ勇者はダンジョンにやってくる。

 男もそうだ、そしてクリスタルタワーのボスを倒した。

 だが、制覇の証はいつまで経っても現われない。

「どういう事だ……うわっ!」

 訝しむ男の足元が崩落した。
 支えを失った男の体は自由落下をはじめる。
 足が硬直する様な浮遊感が全身を包む。

 それは一瞬だった、落下した男は地面に放りだされた。

「いててて……こ、ここは……?」

 男がまわりを見回す。
 最上階で崩落に巻き込まれて落下したのだが、そこはまったく見た事のない場所だった。

 床や天井、壁などの内装はクリスタルタワーそのものだが、知らない階層だ。
 毎日のように通ってクリスタルタワーの隅から隅まで、それこそ柱の染みまで覚えている男の記憶とはまったく合致しない階層。

「どこなんだ……ここは?」
「ようこそ」
「――ッ!」

 男はびくっと体が強ばって、その直後に武器を構えて声の主を警戒する。

 そこから、4つの姿が現われた。
 男は絶句した、いずれも強く――塔のボス大ネズミよりも遥かに強い空気を出している。

 男は認めたくなかった。なぜなら4つの姿を、男は知っていたからだ。

 勇者にとって情報は命、強力なモンスターの情報は生死や勝敗に直結するほど重要なもの。
 情報も頼りにクリスタルタワーを攻略した男は目の前の四人の姿をよくしっていた。

 露出の高い衣服を纏い、さながら痴女の様な格好と貴婦人のような美しさを併せ持つ淫魔。
 千夜の女王、カレン。

 駄々っ子のような幼い面持ちと、それ以上に圧倒的な暴威の空気を纏うドラゴンの少女。
 四天の黄金龍、ユイ。

 恐怖の鬼の面をつけ、面の下を見たものにはワンランク上の恐怖を当たれる鬼の巨人。
 阿修羅王、クリス。

 魔族側についた数少ない人間、剣技と魔力は離反する以前に比べて数倍は強くなった元王女。
 堕天の姫騎士、ルーシア。

 いずれも有名人、名も実力もSランクの危険な魔物だ。

「おめでとう、そしてごめんなさい」

 他の三人が仏頂面(一人は鬼の面だが)している中、一人だけフレンドリーに話しかけてくるカレン。
 彼女は酒場の看板娘のような気安さで男に死亡宣告を突きつけた。

「裏クリスタルタワーへようこそ」
「う、ら……?」
「そ、裏。でも大丈夫、そんなに長くないから。あと五人も倒せば今度こそ完全攻略だから。あたしが保証する」
「五人……だと」
「そうそう、ここにいる四人はまあ四天王みたいなもんだね。あたしたちを倒したら正真正銘の最後、悪の大ボスが出てくるから、彼を倒したらクリアだよ」
「……そんなのってないよ」

 男はがくっと膝をついた。
 ここまで来たのに、ようやくここまで来たのに。
 Sランクの魔物が四人、更にその上にいる最後のボス。

 幼なじみの姿が遠ざかる、絶望が心を塗りつぶす。
 男は戦意喪失したままルーシアに殺された。

 彼は最後まで分からなかった。
 どうして、で来たばかりの低ランクダンジョン、クリスタルタワーにこれだけ強力なモンスターが集まっているのか。

 それを答えるには、少し時をさかのぼらなければならない……。
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