挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

41/77

ペテン

 クリスタルタワー一階、テリーとリリと向き合っている。

「用事って何だよリュウ、そろそろ勇者が来ちまうぞ」
「あー、もしかしてリュウサボるつもり? だめだよ、ちゃんとドラゴンナイトとして勇者と戦わないと」
「ちげえよ。実は俺な、新しい技を身につけたんだよ」
「「新しい技?」」

 声を揃えて、首をかしげるテリーとリリ。

「何だよ急に。あー、この前ヒメ様が来たからか?」
「ヒメさんから教わったの? そっか、リュウってヒメさんと仲いいもんね」
「それも違うって。これは正真正銘、スライムだからこその技」
「そうなのか」
「どんなの? 見せて見せて」
「見せるために呼んだんだ。ちょっと待ってろ」

 二人にそう言って、ユーリエに抱っこされたまま、スライムの体を溶かす。
 彼女の腕からぽとり、ぽとりと落ちるスライムの体。
 それは一旦地面におちて、それから粘土のように形を変えていった。

 俺の体を使って作ったのは二つ、こん棒と三叉のフォーク。
 テリーとリリが使ってるものとまったく同じ見た目(、、、、、)だ。

「これが新しい力か?」
「そうだ、俺の体を使って武器を作る力だ」
「確かにスライムっぽいといえばっぽいんだけど……」

 テリーもリリも、自分が持ってる武器とまったく同じものを見て困り顔をした。
 そりゃそうだ、まったく同じものなら作っても意味はない。

「使ってみろよ。そろそろ勇者が来るんだし、ちょうどいいだろ」
「なんかよく分かんねえけど、使ってみっか」
「うん!」

     ☆

 ディープフォレストと繋がってるゲートから次々と勇者が転送されてきた。
 近くの村のじゃない、カレンの呪いにかかってない勇者はすぐに二階に駆け上がろうとしなくて、一階でも普通に戦っていた。

 転送されてきた勇者は手ごわく、ダンジョンスキルの地形サポートと先制攻撃があって、一階のモンスターたちは苦戦を強いられた。

 その中で、普段以上に活躍してるのがテリーとリリだ。
 二人は俺の体から作った武器を使って、勇者をなぎ倒していく。

 ついでにユーリエにも、俺の体をボールのようにして勇者にぶつけ続けさせた。

「すっげえ! この武器メチャクチャつええぞ」
「体がかるーい!」

 テリーとリリはハイテンションで戦っていた。
 普段はモンスターの中に埋もれがちな二人、ようやく初めて「ドラゴンナイト」として活躍の場面を得て、それで大興奮しているようだ。

 昨日、アレックスを撃退した。
 ユーリエの思いつきで塔の中に自分の体を同化させた俺。それをやった瞬間、アレックスがあきらかに困惑顔になったのが分かった。
 俺を見つける、いや見分ける事には絶対の自信があったんだろう。それが人間でもモンスターでもなく、塔そのものがそうだったという事が予想の遙か上をいって、それで困ってるのがはっきりと分かった。

 これまでアレックスから逃げなきゃってなってた俺だが、その光景で逆に落ち着いた。
 アレックスの感覚を逆手に取って、そこにくっついてる自信を粉砕してやればいい。

 テリーとリリが今使ってる武器は俺の体からできた、その上俺の魔力をふんだんに込めて、力アップ、魔力アップ、体力アップ、素早さアップ、勇者打倒で体力魔力回復etc。
 特殊効果をあれこれくっつけた武器なのだ。

 俺の体で作ったから俺の魂の匂いが染みついてるはずで、効果をメチャクチャつけたから魔力もたっぷり籠もってる。

 しかも、スライムの体で作ったそれは見た目もただのこん棒や三叉フォークと同じようにしている。
 見ただけじゃスライムからできたとは分からないようにしている。

 同じものをチビヒメ、カレン、ユイにも作った。

 チビヒメはオリジナルヒメと同じ服を、カレンは長い鞭を、ユイは椅子を作った。
 ちなみに椅子はユイのオーダーだ。何が良いって聞いたらさんざん悩んで椅子って答えたから、王が座る玉座っぽいのをつくって八階に置いてきた。

 しかしなんで椅子だ? ユイは俺を尻に敷きたいのか?
 まあそれはともかく。
 作り出した様々なものに加えて、今、俺は体を一部塔の中にもぐりこませている。
 昨日とまったく同じだ。

 そして、トドメに……。

     ☆

 勇者、深謀のアレックスは呆然としていた。

 一晩経って出直してきたクリスタルタワーというダンジョンは、昨日よりも更にリュウの匂いで溢れていた。
 塔そのものだけではない、モンスターたちが使っている武器からもリュウの匂いがする。

 アレックスは困り果てた。
 リュウの匂い、魂の匂い。
 アレックスはそれを、死んだリュウが転生した何かから出ているのだと思っていた。
 それが人間であれ、モンスターであれ、あるいは何かの動物であれ。
 この匂いなら、リュウが転生した何かから出ているはずだ。

 それが違った。
 武器や塔そのものから匂いが出ている。
 生物は死んで転生するが、それでも生物だ。無機物になることはない。
 細かく言えばゴーレムの様な無機物のモンスターもいるにはいるが、それはまた別の話。
 今、リュウの匂いは無機物から出ている。

 アレックスは困った、そして揺らいだ。
 これは、本当にリュウの匂いなのか?

 彼は生まれて初めて自分の感覚を疑った。
 リュウのことを思うが故に、思いすぎるが故に作り出した都合の妄想なのではないか。と思った。

 彼ほどの男なら普通はそうならない。
 特にリュウに対する強い想いが、揺らぎない思いがあるからそうはならない。

 しかし立て続けに見せつけられたリュウの匂いがする無機物で、彼の自信は揺らいだ。

 そうして、モンスターを倒しながら塔を上がっていく。
 階は七階、突破して八階へ続く階段。

 そこに足を乗せた瞬間、アレックスの動きが止まった。

 リュウが現われた!
 リュウは生前の姿で現われた、体は半透明で、透けて向こうの景色が見える。

 名前を呼びかけた。しかしアレックスはそれを理性で止めた。
 アレックスはリュウの一番弟子、彼から様々なわざと、そして知識を叩き込まれている。

 そのアレックスは一目見ただけで分かった。
 自分が追いかけていたのは幻影だったのだと、分かってしまったのだった。

     ☆

 途中であきらかにやる気を無くして、肩を落として退却していくアレックス。
 そいつの姿を見て、俺は上手く行ったとホッとした。

『スライム様、どうしてあの人は帰ったんですか』
『残留思念を見せたんだよ』
『ざんりゅうしねん?』

 首をかしげるユーリエ。

『力が強いものが一箇所にずっととどまっていたり、あるいは人間を越える程の力を一遍に行使したりすると、空間にそのものの魂っぽいものが焼き付く。それを昨日とっさに作って、さっきのアレックスに見せた。で、だ。残留思念だけじゃなくてダンジョンそのものやみんなの武器に俺の魔力が籠もったものを持たせた。俺の残留思念が塔に焼き付いて、それが武器とかに残り香がうつった、ように見えるはずだ』
『そうだったんですね……奥が深いです……あっでも』
『うん?』
『昨日まではなかったですから、あの人は冷静になったらきづくんじゃないですか』
『それは大丈夫だ。あいつは昔から一つのことを見てると他が目に入らなくなる。昨日俺を追いかけてきたんなら、道中はどうだったんだ? なんで記憶にのこってないはずだ』
『なるほど! さすがです』

 感心するユーリエ。

 さて、これでアレックスの件は解決した。
 後は勇者を撃退し続けてスキルポイントを溜めるだけだ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ