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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

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裏ダンジョン

「ユイは大丈夫だったか?」

 アテナを倒した後ユイに聞いてみた。
 見る限り戦闘が本格的に始まる前に俺が割り込んだから大丈夫だろうが、念の為だ。

「ふ、ふん! あんなのお兄ちゃんが来なくてもあたし一人でどうにか出来たわよ!」
「そうか、それはわるかった」

 ユイは不機嫌になって目をそらしてしまった。
 横から割り込んで助けたことでユイのプライドを傷つけちまったかもな。
 ドラゴンってのはプライドの高い生き物だから。

 ユイはそっぽ向きながらも、チラチラと俺をみて何か言いたげな顔をする。
 もうちょっとフォローした方がいいのかもしれないけど、プライドの問題に正解はないんだよな。
 ここはスルーした方がいいかもしれない。

「それじゃ、俺は戻るから」
「え? うん……」
「途中で倒されたモンスターの復活をしないとな」

 アテナに倒されたモンスターたちの事だ。
 ダンジョンスキル「ダンジョン内不死」をつけたから、魔力さえあればいくらでも復活させられる。
 このクリスタルタワーも龍脈の上にたってるんだから魔力のストックはある。
 それを使ってモンスターたちを復活させないとな。

「あたくしが来た!」

 いきなりアテナが現われた、本日二度目の襲撃だ。
 加護を受けた勇者はダンジョンの中でモンスターに倒されても復活する事ができる、だからアテナも復活してきたんだが早すぎる。
 倒してからまだ数分しか経ってないぞ。

「そこのスライム、覚悟!」
「くっ!」

 猛烈に突進して、細い手足で格闘戦をしかけてくるアテナ。
 動きはキレがある、しかけてくる足技は鋼の板をも切り裂くほどの鋭さ、闘気で放つ気弾は岩をも砕くほどの破壊力がある。

 長期戦になると面倒、おれはまた力を解放して、同じようにドラゴンの前足を振り下ろした。

「それはもう対処済みですわ」

 直前に闘気が対物理のシールドに変わった。
 即死級のダメージを一度喰らってすぐに対応してきたみたいだ。

 それをみて俺はドラゴンの前足の属性を直前でかえた。
 物理属性から魔法属性へ。
 魔法属性の前足は物理シールドをスルーしてアテナを踏みつぶした。

 ぷちっ。っていう音がして、アテナはまた即死した。

「ふう……」
「お兄ちゃん?」
「なんでもない。ちょっとつかれただけだ」
「そう……あ、当たりまえでしょ、あんな強い技をポンポンポンポンうったらつかれるの当然じゃない。しかも撃った後に属性変換なんて普段の倍は消耗するじゃないの。もうちょっと考えて戦いなさいよね!」

 ユイにメチャクチャ怒られた。
 一瞬ほっとした様にも見えたんだけど、どうやら気のせいだったみたいだ。

「そうは言っても、あの子強いんだから、一撃でさくっと倒さないと長期戦になってますます面倒くさくなるんだ――いえ何でもないです」

 ユイにますます睨まれた。いい訳すんなって事か。

「まったくもう……こ、ここで休んで行きなさいよ」
「ここで?」
「あたしの力、少しお兄ちゃんにあげる。同じドラゴンの力なら受け渡しが出来るでしょ」
「そりゃできるだろうけど……なんでそんな事を?」

 聞き返すと、ユイは「うっ」ってなって言葉を詰まらせた。
 視線が泳いだ後、答える。

「た、助けられっぱなしなのはいやなの!」
「お、おう」

 ユイの剣幕におされかけた。
 そうかドラゴンのプライドか。
 確かにそれもあるかも知れないな。
 そういうことなら――ここは素直に従っとこ。

「じゃあ頼む。どういう形のが一番すんなり受け渡しできるかな」
「あ、あの生け贄」
「うん?」
「あの生け贄の子がしてるみたいに、あ、あたしがお兄ちゃんを抱っこすればいいと思う」
「なるほど、受け渡しはお肌のふれあいが一番効率いい、ついでにその態勢だと俺が一番リラックス出来るし。それが一番無難か」
「で、でしょ。ほら早く来なさいよ」
「おう。それじゃ頼む」

 俺はぴょんぴょん跳んで、ユイのもとにむかった。
 ユイは手を広げて、俺を受け入れるポーズをとった――その時。

「三顧の無礼であたくし参上!」

 アテナが三度現われた。

 ゴゴゴゴゴゴ……。

 空気の重さがます、ユイの表情が強ばる。
 やべ、何故か分からないけどこれマジギレ直前だ。
 このままだとユイドラゴンの姿に戻って暴れる。
 黄金竜が元の姿で暴れたらこんな塔なんて一瞬で消し飛ぶ。

「そこのスライム、今度こそ負けませんわ!」
「頼むからこれで最後にしてくれ!」

 三回目の瞬殺。
 今日はもうこれ以上現われないでくれ、っていう祈りを込めつつ、ドラゴンの前足を振り下ろす。

 願いが届いたのか、この日、アテナが再び襲ってくることはなく。
 ユイの暴走はギリギリのところで食い止められたのだった。

     ☆

 次の日、クリスタルタワー一階。

「リュウちゃんおひさー」
「ヒメ!?」

 ユーリエの腕の中で休んでいると、いきなりやって来たヒメに驚いた。
 ディープフォレストの大幹部、ヴァンパイアのヒメ。
 彼女がいきなりこのクリスタルタワーに現われた。

 顔見知りのモンスターは興味津々にこっちの様子をみているが、誰も近づいてこない。
 テリーとリリでさえも来ない。
 みんな大幹部のヒメに遠慮や壁みたいなものを作っている。
 当のヒメはそんな事などお構いなしに、俺に頬ずりをした。

「どうしたんだヒメ、いきなり」
「ちょっとね」
「あっ、わたしのオリジナルです」

 ヒメが現われた事で、彼女の分身であるチビヒメがやってきた。

「久しぶりねチビヒメ、どう? 美味しい血はみつけた?」
「ごめんなさい、ちっとも見つからないです」
「謝らなくていいわ。ディープフォレストの水で育った人間以上に美味しい血なんてそうそうある訳ないんだから」

 相変わらず乳牛だか牧場だかの話方をするヒメ。

「それよりもどうしたんだヒメ」

 俺は同じ質問を二度した。
 ディープフォレストの大幹部、マザードラゴンの右腕。
 そんなヒメが何事もなしにここに来るはずがない。

「ひどいなリュウちゃん、何もなかったら来ちゃいけないっていうの? あたしとリュウちゃんの仲でそんなひどいことをいっちゃうの?」
「いやべつに――!!」

 俺はとっさに隠れた。
 ユーリエに抱っこされたまま、彼女にくるっとターンさせて後ろを向いた。
 ヒメが不思議そうに首をかしげた気配がした、その直後。

「あたくし参上! 待ってなさい! あたくしがあなたにとってのスライムになる!」

 塔の入り口からアテナが現われて、塔の先制攻撃をものともせず、モンスターたちを蹴散らして上の階に上がっていく。
 引き返し禁止のスキルがあるから、二階にあがったアテナを見て俺はちょっとホッとした。

「なにあれ、借金取り? 押しかけ女房?」

 ヒメはわくわく顔で聞いてきた。

「そういうのだったらどれだけ気楽か……」

 俺は昨日の事、アテナの事をヒメに話した。
 瞬殺した後は何故か目をつけられ、何回も何回もダンジョンに押しかけてくるアテナの事を話した。

「あはは」
「笑い事じゃないって……あんなのと何回も戦ってたら俺の力がみんなにばれるから大変なんだぞ」
「リュウちゃんってば変わらないね。昔から変なのとか面倒臭いのに好かれるもんね」

 それは自覚ある。
 アレックスとかアテナとかそうだし、最近だとカレンもそうか。

「本当大変だねー」

 ヒメ(おまえ)も面倒臭いの中にはいってるんだけど……とはあえて言わなかった。

「それよりもなんの用だ?」

 三度、同じ質問をヒメに投げる。

「そうそう。実はリュウちゃんにちょっと頼みがあるんだ」
「頼み?」
「大丈夫大丈夫、そんなに大した事じゃないから」
「嘘だ!」

 そんなの絶対に嘘だ、ヒメがわざわざここに来る時点で面倒臭いの確定だし、わざわざ「面倒臭くないよ」っていうあたりが輪をかけて面倒臭いに決まってる。

「お願いリュウちゃん、リュウちゃんだけが頼りなの。お願いを聞いてくれたらヒメ、い・い・こ・と、してあげる」
「いやそういうのも面倒臭い」
「引き受けろよオラァン!」
「脅しかよ!」
「うぇーん、うぇーん」
「嘘泣きはめんどくささMAXだからやめてくれ本当に」

 俺は頭をフルに回転させた、どうしたら断れるのかを。

「じゃあこうしよう。引き受けてくれたらいいことを教えてあげる」
「いいこと?」
「裏ダンジョンとか作ればいいんだよ、裏の方にあたしとかこの生け贄ちゃんみたいにリュウちゃん強さをしってるのだけ集めて、あの子みたいなのはあそこに引きずり込めばいいんだよ」
「裏ダンジョン……」

 すごく魅力的に聞こえた。

「それ! どうやったら作れるんだ?」
「あたしのお願いを聞いて♪」
「分かったなんでもする」

 裏ダンジョンのため、真の安息の地のため。
 俺は、ヒメの依頼を受けることにした。
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