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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

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おじいちゃんの一撃

 クリスタルタワー最上階。
 ボロボロながらもここに辿り着いた一人の勇者。
 二十代半ばの男で、どうやら召喚術士みたいだ。
 精霊を呼び出しては、即座にその精霊を爆発させるかなり奇特な戦闘スタイル。
 そのスタイルで途中のモンスターをなぎ倒し、ここまで上がってきた。

 ちなみに八階のユイはわざと通すようにいっておいた。
 勇者を一人でもいいからシェスタのところまで通したかった。

「あーはっはははは。よく来たな勇者。このおれ様こそがこのクリスタルタワーのボス、ビッグマウスのシェスタだ!」
「魔物め、覚悟しろ」
「ふふふ、いつまでそんなでかい態度でいられるかな」

 シェスタは得意げに笑いながら、ポーズをとって勇者に攻撃をしかけた。
 が、飛び出した瞬間なんでもないところでつまづいて、顔から地面に突っ込んでいった。

「きゅー……」
「……え?」

 突然の事に固まってしまう勇者。
 顔から地面に突っ込んだシェスタはそのまま気絶してしまったのだ。

 勇者は警戒した。当然だ。
 ここまで苦労して上がってきた塔のボスがまさかこんな自滅をするとは思わず、何か罠でもあるんじゃないかと警戒した。

 しかし違う、これがシェスタの平常運転だ。
 さっきから階段の横で姿を消していた俺はため息つきつつ、いつもの様に魔法でシェスタを操縦した。

 むくりと立ち上がる、その行動で勇者が密かにホッとした。
 更にシェスタの口も操ってみた。

「襲ってこないとはな」
「馬鹿にするな! そのような見え見えの手に引っかかるものか」
「仕方ない。ならば普通に倒すまでだ」
「イフリート! ウンディーネ!」

 勇者はまた精霊を召喚した。
 召喚された精霊はシェスタに向かって跳びだし、途中で勇者の合図と共に爆ぜた。

 火と水の精霊、二種類の属性は相乗効果を生んで大爆発を起こす。

「喰らえ! ビッグマウスアタック!」

 それなりの技名をつけて、シェスタを操縦して突進させた。
 回転も加える、まるで人間――もといネズミ砲弾のように飛ばす。

 シェスタの体が二属性の爆発を弾く。

「なっ――」

 驚愕する勇者にそのまま体当たりをする。
 勇者の体がくの字に折れ曲がって、ヘドをまき散らす。
 そんなに強い勇者じゃなかったから、一撃で倒した。

     ☆

 クリスタルタワー一階。
 こっそり降りてきた俺の元にテリーとリリがやってきた。

「おい、どこに行ってたんだよリュウ」
「探したんだよ?」
「どうした二人とも」
「すげえ事がおきたんだぜ。なんとよ、塔に新しいスキルがついたんだぜ」
「知ってる、ダンジョン内不死身の事だろ」
「もう知ってるの?」
「ああ、ユイのところに行ってたら偶然シェスタさんが勇者を倒すのを見てたから。あの勇者を倒したおかげでついたスキルなんだって」

 テリーとリリに向かって白々しく言った。
 ユイに言ってわざと勇者を通したのはこれのためだ。

 土地神に美少年を献上してついたスキルポイントは5、全部使えばちょうどディープフォレストと同じ、ダンジョンの中でモンスターが死んでも魔力さえあれば生き返られるスキル「ダンジョン内不死身」をつけられる。

 しかし普通にそれをつけると俺の事がばれるかも知れないから、シェスタのところに勇者を通して、倒させてという手順を踏んだ。

「すっげえなシェスタさん」
「ディープフォレストと同じスキルだよねそれ」
「ああ、母さんから聞いたのとまったく一緒だ」

 テリーとリリは尊敬の目で上の階を見た。
 またまわりにいたモンスターたちも、今の話を早くも話題にして、シェスタを褒め称えていた。

 これで良し、狙いは完璧。
 ダンジョンに新しいスキルをつけつつ、シェスタに全部なすりつけるのが成功した。

「シェスタさんってすげえな」
「あたし達もいつかあれくらい強くなれるといいよね」
「そうだな」

 適当に相づちを打ちつつ、俺は壁際で待機してたユーリエの腕の中に戻った。
 完全に気配をけすために彼女をおいていったのだ。
 それと何故かはわからないが、ユイはユーリエを快く思ってない。敵視すらしている。
 思い当たる節といえばユイはドラゴンだから、そのプライド故に人間のユーリエと相容れないって事くらいだ。
 そしてそれは解消しようがないから、ユーリエはおいていった。

『お帰りなさいスライム様』
『待たせてすまない』
『大丈夫です、待ってる間スライム様に言われたメニューで修行してましたから。そのおかげでスライム様の波動を遠くからでも感じられる様になりました』
『真面目だなお前――頼むからアレックスみたいにはなるなよ』

 あれみたいになると俺がかなり大変だ。
 アレックスは俺信者の上にストーカーだから、色々と大変だ。
 ユーリエもなんかそれっぽくなる素質があるから、今のうちから気をつけておかないと。

『あっ……』
『どうしたユーリエ』
『遠くからわたしたちと同じリズムの波動の人がきます』
『何?』

 自分でも顔が強ばったのが分かった。
 おいおい、まさか噂をすればなんとやらで、アレックスじゃないだろうな。

 俺は感知魔法を使って、ユーリエが言った通り、俺の教え子らしい波動が遠くから近づいてくる。
 進路は一直線にこの塔へ、なのだが。

『ふう、アレックスじゃないな』
『そうなのですか?』
『ああ、その上俺が知らないヤツだ。少なくとも第二世代の奴らじゃない――よかったなおばちゃん』
『もう、スライム様ってばまたそんなことを』

 ユーリエは唇を尖らせた。
 ちょっと前からそのネタで彼女をイジってる、そうするときの彼女のすねた顔が意外に可愛くてついついやってしまう。

 しばらくそれを堪能してる内に、塔の入り口に波動の持ち主が現われた。

 幼い娘だった。

 背丈や顔の作りはみた感じ8から10歳ってとこか?
 身長と同じくらい長い髪を背中に流し、ワンピースを纏いその下に白タイツを穿いている。

『おお、アテナじゃない』
『アテナちゃん……ですか?』
『覚えてるか? 第三世代の中で一人だけユーリエより年下な子がいるっていったの』
『あっ……』

 ユーリエはアテナを見た。前にからかったときに言ったことを今思い出したみたいだ。
 親戚関係に例えると、ユーリエの甥や姪にあたる第三世代は64人いて、うち63人までユーリエより年上だ。
 一人だけ年下なのが、今やってきたアテナ・マキューだ。

「ここがあのネズミのハウスですのね。ふふ、このあたくしが塔ごと消し去ってご覧に入れますわ」

 アテナはお嬢様言葉でそう言い、力を解放した。
 黄金色のオーラが全身からたちこめる、小さな体がわずかに浮かび上がる。
 そして――飛び出す。

 モンスターの群れに向かって飛び込んでいった。
 モンスターからすれば小枝のような細い手足で、殴ったり蹴ったりしてなぎ倒していく。
 あの見た目で格闘家みたいな戦い方だ。

 階段の前を塞がっているモンスターは一瞬にして瞬殺されて、アテナは二階に上がっていった。

 ……あれはまずいな。
 俺はユーリエから跳び降りた。

『スライム様?』
『ユーリエはここで待ってろ』

 ユーリエが答えるのを待たずして、俺はぴょんぴょん跳ねて階段で二階に上がった。
 二階は既に突破された後だ。
 アテナが通った道は死屍累々、モンスターが倒されていた。
 中には手遅れだったり絶命したりしているのもいる。

 三階にあがっても同じような光景だった、四階も、五階六階七階も――。
 アテナが通った道は誰も彼もなぎ倒され、血の道できあがっていた。

 そして、八階。
 駆け上がった俺が見たのは、真っ向から打ち合うアテナとユイ。
 腕をしならせさながら前足の如く振り下ろすユイと、白タイツの細い足で綺麗な上段蹴りで迎え撃つアテナ。

「なんだなんだ、何がおきた――うげっ!」

 上の階から降りてきたシェスタは二人の打ち合いで生じた衝撃波に吹っ飛ばされ、階段に頭をうって気絶した。

 打ち合いに勝ったのはアテナだった。
 二人とも一歩下がったが、アテナは全くの無傷に対して、ユイは手のひらからぽた、ぽたと血が垂れていた。

「なるほど、中ボスがいるダンジョンだったのですわね。これまでの手応えのなさに驚いたましたけど、これなら納得ですわ」
「何をごちゃごちゃ言ってるの」
「ドラゴンならそれなりの技で相手しなければ失礼ですわね」

 アテナはそう言って、はっ! と気合をいれて更に闘気をだした。
 黄金色のオーラが一段と激しさをます。
 そのまま半身で右手をユイに向かって突き出し。

「くらえ、ですわ」
「いかん――」

 俺はとっさにユイとアテナの間に割り込んだ。
 この技はまずい!

 とっさだったことで、弾くこともできなくてユイの代わりに受けるのが精一杯だった。

「お兄ちゃん!」
「ふう、間に合ったか」
「何をするのよお兄ちゃん! ていうか大丈夫なの?」
「心配ない、この技自体はノーダメージだ」
「え……じゃあ?」
「あらあら、ずいぶんと博識なスライムがいましたのね。ふぅん……なるほど、中ボスは二体いた、ということですのね」

 アテナは俺にもロックオンした、強いだけじゃなく、スライムという見た目にも纏わされない。
 第三世代最年少ながらなかなかのものじゃないか。

 俺は体から魔力を放出した。
 ただ、放出した。

「無駄ですわ」

 アテナはにやりと笑う。

「この技は師匠の師匠が編み出した対幻獣用の究極魔法。ひとたび受けてしまえば丸一日はあらゆる魔法も技も使えなくなってしまうのですわ」
「なんですって」

 目を剥くユイ。
 うん、そういう技なんだ。
 よくある魔法封じの魔法があるけど、それを俺が更に改良したのがこの技。
 どんな強いモンスターでも、魔法とか技そのものを封じてしまえば後はただのかかしのようなものだ。

 実際、勇者時代にかなりこれを使って、楽してモンスターを倒していた。

「さて、今のうちにトドメを、ですわ」
「させない!――うっ!」
「しびれて動けませんわよね。さっきの一撃でそうしましたの。いざという時にこの技を確実にたたき込めるように」

 うわぁ……用意周到だ。
 すごいなアテナ。

「では、こんどこそトドメですわ」

 アテナが近づいてくる、すたすたと歩いてくる。
 俺は魔力を出し続けた、体中の魔力を放出しきる勢いで出し続けた。

「無駄、ですわ」

 繊脚一閃。アテナの回しけりが俺の体を両断した。
 瞬間、目の前が真っ暗になる。
 何も見えず、何も感じられない。
 久しぶりにこうなったな、母さんに最後にやられたのはいつだ?

 そんな事を思った次の瞬間、意識が一気に戻った。

「なっ……」

 目の前に見えたのはアテナ、驚愕しているアテナ。

「なぜ生きていますの!?」
「生きてるんじゃない、復活したんだ」
「なんですって!?」
「さっき魔力を出してただろ? あれで塔のスキルを使って、一度死んだのを復活したんだ」
「な、なんのためにそんなことをっ」
「死んでから復活すると全部のステータス異常がリセットされるからな」

 そういってドラゴンの力を解放。
 復活した後の全力、そして復活した分で余った、空気中に残った死ぬ前の魔力も使う。
 全力以上の全力、120%の力を出す。

「そんな馬鹿な! わざと死ぬなんて!」
「死んで復活するは得意だからな」

 アテナは更に蹴りを放ってきた。俺は120%のドラゴンの前足を振り下ろした。
 衝撃、塔が揺れる。
 ドラゴンの前足につぶされたアテナは、跡形もなく消え去っていた。
おかげさまで3万ポイントまで100を切りました。これからもっともっと頑張りますので応援よろしくお願いします。

面白かったらブクマ、評価もらえると嬉しいです。
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