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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

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生け贄はミタ

 クリスタルタワー一階、今日も勇者が襲ってこなくて、モンスターたちが暇を持て余していた。
 そんな中、新しくやってきたサキュバスのカレンはクリスタルタワー内部を飛び回って、いろんなモンスターにちょっかいを出していた。

 今も、テリーとリリにちょっかいを出している。

「可愛いゴブリンちゃんじゃない」
「さわんじゃねえ」
「あらどうして?」
「父ちゃん言ってたんだ、サキュバスって全員尻軽のビッチだって」
「ビッチは嫌い?」
「当たり前だろ? 処女じゃない女に価値はねえ」

 ふんぞりかえって、言い切ったテリー。
 そこまで言えりゃ立派なもんだ。ゴブリンが偉人だか哲人だかに見えて来る。

「またまた――ちゅ」

 カレンはいきなりテリーの唇を奪った。
 長いキス、最初はジタバタしてたテリーは次第に動かなくなった、それから小刻みにけいれんし出した。

 しばらくしてカレンはテリーを解放した。
 テリーはよだれをたらして失神し、股間をもっこりさせながらビクビクしている。

 さすがサキュバス、キス一つで処女厨を昇天させたか。

「テリー! しっかりしてテリー」
「お嬢ちゃんも」
「え――むぐっ!」

 今度はリリにもキスをした。
 女同士、濃厚な百合キスだ。

 俺の頭の上でユーリエがゴクリと生唾を飲んだ。子供にはちょっと刺激が強いか。
 一方のまわりは盛り上がった。
 サキュバスのカレンが振りまく色気と濡れ場を、モンスターたちは面白がって見学している。

 やがてリリも同じように、キス一つで昇天して、仰向けでビクンビクンと失神した。

「さてさて、つぎは――っ」

 次なる獲物を探してさまようカレン、急にビクッとなって動きがとまった。
 それまでケラケラ笑っていたのが、急に青ざめて、大粒の脂汗をたらすようになった。

 俺と目が合ったからだ。
 カレンにした事を考えれば怯えられるのは分かるが、それじゃ都合が悪い。

 俺はカレンを睨んだ。
 言外に「分かってるんだろうな」と視線に込めて、カレンを睨む。

 カレンは更にビクッとしたが、青ざめた顔のまま俺に近づく。

「スライムちゃん今日もかわいいね、お姉ちゃんとい、いいことしない?」

 必死に取り繕って、俺にテリーとリリと同じ事をしてきた。
 ユーリエに抱っこされている俺に頬ずりして、ほっぺ(からだ)にキスの雨を降らせる。
 甘い空気など微塵もないキス、どっちかというと頭突きに近いキス。

 まわりのモンスターたちが「次の犠牲者はリュウか」と拝んでくるのをみて、カレンの機転と演技に満足した。

     ☆

 テリーとリリを引っ張って、人目のつかないところに移動した。
 カレンは一緒についてきた。

 他のモンスターに見られてない場所に移動すると、カレンはまたビクビクし出した。
 完全に俺に怯えきっている様子だ。
 俺はため息をついて、いった。

「俺の力がばれるような事をしない限り、お前には何もしないから安心しろ」
「本当に……?」
「本当だ」

 カレンはしばし俺を探るように見つめて、それからほっと胸をなで下ろした。

「よかった……あたしてっきりもうダメかと」
「もうダメって、何をされるって思ったんだよ。しねえよ、そんな面倒臭いこと」
「それずっと言ってるけど、面倒臭いのが嫌いなの?」
「ああ、嫌いだね。俺は静かに暮らしたいんだ」
「ふーん、そっか」
「お前の能力ってそれに使えるのかって思ったけど、夢の中だけだもんな。夢の中はのんびり過ごせたけど、現実はメンドイままなんだよな」
「え? あたしの能力ってどういう事?」
「こういうこと」

 俺は未だに寝ているテリーとリリに技を使った。
 スライムの頭のてっぺんを変形させてアンテナを出し、みょんみょーんと念波を二人に送った。

 二人に、それぞれ見たい夢を見させるように。

 しばらくして、テリーとリリはニヘラと笑って。

「すげえ、白エルフと黒エルフの双子、しかも処女だぜ」
「受けと受けとBL百合で100万部売れたわ、やったー」

 二人は寝言をつぶやきだした。

「これってナイトメア!?」
「そういう名前の技なのか」
「ど、どうしてそれが使えるの?」
「昨日お前にやられた時に覚えた」
「覚えたって……」
「色々あってな、一回喰らった技は覚えるようになってるんだ俺は」

 ……そうしないと母さんに折檻(ころ)されるしな。

「うそ……そんなの聞いたことない……」
「信じられないか? なら」

 おれは更にテリーに念波を送った。

「すげええええ! 今度は765歳のロリババア処女だぜ」

 テリーは更に寝言をつぶやき、下半身が限界までもっこりしてビクンビクンと震えだした。

「こんな感じ」
「夢の上書きまで!?」
「うん? それは難しい事だったのか?」
「普通は一回醒めるか、自分も相手の精神世界に入らないと出来ない……」
「そうなのか」

 まあでも出来るんだからしょうがない。

「すごい……あなた本当に何者?」
「うっかり教育ママ(ドラゴン)の巣に生まれただけのスライムだ」

 ぽかーんとなるカレン、口が半開きでアホっぽい。
 せっかくのサキュバスの美貌が台無しだな――。

「師匠!」
「は?」

 カレンがいきなり俺にすがってきた、俺の前で土下座した。

「なんだ藪から棒に」
「あたし、サキュバスとしてもっともっと強くなりたい。だからあたしを弟子にしてください!」
「飛躍しすぎて意味が分からん」
「お願いしますなんでもしますから! この体師匠の好きにしてください、師匠のためなら男でも女でもだかれてきます、乱交もオッケーです!」
「サキュバスのなんでもはぶっ飛んでるなおい!」
「だからお願いします!」

 さらに土下座するカレン。
 よっぽど強くなりたい、力を手に入れたいんだろうな。
 龍脈の上に立ってるダンジョンを乗っ取りに来た理由がそれか。

 ……。

「断る」
「ど、どうしてですか」
「メンドイからだ。何度も言うけど、俺はメンドイ事が嫌いなんだ」
「そんな……」

 俺に断られた事で、カレンはシュン、とうなだれたのだった。

     ☆

 夜、モンスターたちが寝静まったクリスタルタワー。
 起き上がった俺はユーリエがちゃんと寝ている事を確認して、気配を殺してカレンのところにやってきた。

 塔の一角で、空中に浮かんで寝ているカレン。
 月光に照らしだされるサキュバスの体は美しくも淫靡だった。
 童貞小僧ならこれを見た瞬間情けなく漏らしてるだろうなと思った。

 まわりを確認、最後に確認。
 誰も見ていない事を確認したあと、カレンに「ナイトメア」をつかった。

 サキュバスの技を、サキュバスに使ってやった。
 彼女が怯える原因、精神世界で折檻して分かったことが一つ。サキュバスの強さは大半が精神の強さだ。
 強くなるには、精神力を鍛えるしかない。そしてそれは夢の世界でヤッた方が一番効果的だ。

 だから俺は、彼女が寝入ったのを確認して、夢を操作した。

 サキュバスが、もっとも精神力を鍛えられる夢に。

「見てなさい……むにゃむにゃ……一晩で童貞500人、処女500人食べてやるから……」
「すごい夢になったな」

 サキュバスらしいと言えばサキュバスらしいか。
 ナイトメアがちゃんと聞いて、カレンが精神の修行に入ったことを確認して、俺は寝床に戻った。

 モンスターに囲まれて、すやすやと寝息を立てているユーリエのところに。
 最近すっかりミラクルフィットしてきたユーリエの腕の中にもどった。
 そして、ゆっくり目を閉じる。
 のんびりと、静かな夜を過ごすために、ゆっくりと夢の世界におちていったのだった。

     ☆

 リュウが寝た後で、ユーリエはゆっくりとまぶたを開く。
 腕の中で静かに寝息を立てているスライム、離れたところでなまめかしい寝言をつぶやくサキュバス。
 交互に見比べて、ユーリエは。

「スライム様、優しい……」

 そうつぶやいて、リュウをぎゅっと抱きしめたのだった。
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