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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第二章

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ダンジョンスキル

 何もかもがない、色さえもない空間の中に浮かび上がってくる立体映像。
 映し出したのはモンスターたちが待っている湖。
 その湖の真ん中に小島が出来て、島の上に天にそびえ立つ高い塔がたっていた。

「これがクリスタルタワーか」
「そうじゃ、お主のダンジョンじゃ」
「俺じゃなくて、この塔のボスはシェスタになる」
「どっちでもいいのじゃ。この先の塔の運営、わしはお前としか話をせんからそのつもりでな」
「……わかった」

 土地神のそれを受け入れた。
 シェスタに任せるより、俺が裏から色々とやった方が都合がいいかもしれない。

「さて、新しいダンジョンが出来たのじゃ、恒例に倣ってダンジョンスキルを一つプレゼントしてやるぞ」
「ダンジョンスキル?」

 なんだそれは、初めて聞く言葉だぞ。

「ダンジョンスキルとはその名の通りダンジョンが持つスキルじゃ。人間が魔物にもスキルをもったものがおるじゃろ? それのダンジョン版だ」
「何ができるんだ?」
「なんでも出来るのじゃ。定番の魔法使用禁止からレベル制限や性別制限、珍しいのだとモンスターの復活とかがあるな」
「モンスターの復活?」

 ビクン、とない眉毛が跳ねた。

「それって、ダンジョンの中でいくら死んでも復活出来るって事か?」
「まさにそうじゃ」

 なるほど……そういうことだったのか。
 おれが転生した時にはもうそうなってたから当たり前の現象として受け入れてたけど、ディープフォレストのあのいくら死んでも、森の中でだったら復活出来るのはダンジョンスキルの効果だったのか。

「……そのダンジョンスキルっていくつもつけられるのか?」
「いいところに気がついたのじゃ」

 土地神がにやりと笑う。

「ダンジョンにはダンジョンコアというものがあるのじゃ。そこに倒した人間の生命力と魔力を捧げれば新しいダンジョンスキルが授かるのじゃ」
「なるほど、勇者を倒し続ければ新しいスキルがつく、と」

 それを聞いて、もう一つの心当たりに行き着いた。
 ディープフォレストでは森がきっちり四等分されて、侵入してくる勇者はそれぞれ相応の強さになることがおおい。
 もちろん例外もあるが、大半がそうだ。

 これも転生した直後からそうなってたから不思議とは思わなかったものの、今にして思えばこっちもダンジョンスキルだったんだろうな。

「というわけじゃ、一つだけダンジョンスキルをやるぞい」
「どういうのがあるんだ?」
「想像、そして創造するのじゃ。この地に永らくたまっていた魔力がある、お主が強く望めば、またはっきりとイメージできれば、大抵のものは実現出来るのじゃ」
「そうか」

 おれは考えた、このダンジョン――クリスタルタワーに俺が望むこと。
 敵とあまり戦わず、俺がのんびり楽をする事。
 だからこそ、勇者が次へ次へ上に行く塔タイプのダンジョンにした。

 当然、ダンジョンスキルもそうなる。

 目を閉じた、強くイメージした。
 ダンジョンに望むもの、そのスキルの効果を。

 ――ダンジョンスキル・引き返し禁止を獲得しました

 中性的で抑揚のない声が聞こえた。

「なんじゃ、その引き返し禁止というのは」
「下から上の階に上っていけるけど、上から下の階に戻れないってスキルだ。もちろん適用は侵入してきた勇者のみ、塔に住むものは適用されない」
「なるほどなのじゃ」

 最初は人間とモンスターで区別するつもりだったのだが、人間・ユーリエの事を思い出して条件を変えた。
 これなら俺は一階にいれば、勇者たちはどんどん上にいってくれるから最終的にのんびり出来るはずだ。

「これでダンジョンの初期設定は全て終わりじゃ、あそこから出れば元の場所に戻れるのじゃ」

 土地神はそう言って、おれの背後をさした。光の渦がある、そこに飛び込めばいいんだな。
 おれはシェスタを加えて、まだ気を失って目を回してる彼を引きずっていく。

「わしの美少年、忘れるでないぞー」
「はいはい」

 土地神もといホモエロジジイに別れを告げて、おれはシェスタと一緒に光の渦に飛び込んだ。

     ☆

 元の世界にもどってきたおれとシェスタは別々の場所に飛ばされた。
 両方とも異次元にいく直前の場所に戻ってきて、シェスタはモンスターのど真ん中に、おれは見られないようにちょっと離れた場所に戻ってきた。

 シェスタがまだ目を回してたから、隠匿の特性をつけて魔力の玉を飛ばした。
 ゲンコツの要領シェスタの頭に当てると。

「いてえ! 何しやがる!」
「わっ!」
「大丈夫なのシェスタ様」
「え? ここは……うわ! なんかすっごいでっかい塔がある」

 気がついたシェスタはまわりをきょろきょろして、塔を見つけて盛大にびっくりした。

「あれはシェスタ様が作ったダンジョンじゃないんですか?」
「すっげえ立派だからそうだと思ってたんだけど……」

 取り巻きモンスターの一人がシェスタに聞く。

「え? あ、ああ……」

 シェスタは少し戸惑ってから、塔――クリスタルタワーをちらっと見てから、ごほん、とわざとらしく咳払いをした。

「もちろんだ、おれ様が土地神にいって作ってもらったやつだ。元々は半分くらいの高さだったが説得して倍にした」
「本当に!?」
「すげええ」
「さすがシェスタ様」

 おいおい、何も覚えてないのにふかすじゃねえか。

「シェスタ様、中に入ってもいい?」
「おう、おれ様について来い」

 シェスタは意気込みながらモンスターを引き連れて塔にはいった。
 塔の中はものすごく広くて、階段以外何もなかった。

 何もなくて殺風景だが、これからいかようにも作り替えていけるって意味でもある。
 ダンジョンスキルか、他にも色々つけていかないとな。
 魔法禁止でもいいし、MP吸収でもいい。
 人間時代かなりうっとうしいと思ったレベル差制限もいいな。あれをつけると強い勇者は一人でしか入って来れなくなるから、倒しやすくなる。

「あれ? ねえシェスタ様、この階段なんかちょっとおかしくないですか?」
「んあ? 別に何もおかしい事ねえだろ」

 俺を思考から呼び戻したのは二階に上がっていくシェスタたちの話声だった。
 階段を登る取り巻きの一人がそう言って、シェスタは眉をひそめている。

 たしかに階段の所にうっすらと膜のようなものがあった。
 魔力の膜、おれは直感的にそれが「引き返し禁止」だと分かった。

「それはダンジョンスキルの一つ、引き返し禁止だ」

 ぴょんぴょんと前に出て、説明をした。

「母さんに聞いたことがある、それがあるダンジョンは、勇者が上から下に戻れないようになるんだ」
「そうなのか!」
「マザードラゴン様が言ってたのならその通りだろうな」
「だんじょんすきる、シッテル」

 モンスターたちがざわつく、母さんの名前を出したのは正解で、一発で受け入れられた。
 ダンジョンスキルというのを知ってるモンスターがいることもあって、納得が急速に広がっていく。
 更にたたみかけることにした。

「ダンジョンの最初のスキルってその人が強く思う事になるらしいよ。母さんのモンスターが森で死んでも生き返れるってのがまさにそう」

「マザードラゴン様はお優しいからな」
「うむ、いつも我らのことを案じておられた」
「でも、シェスタ様はどうして引き返し禁止なんかを?」

 モンスターがシェスタに注目した。

「え? そ、それは……」

 シェスタは口籠もる、当然だ、自分で願ったものじゃないからな。
 それも問題はない。

「シェスタさんはきっとこう思ってるんだ。ダンジョンに来た勇者どもよ上がってこい、引き返すなんて姑息な真似をしないで、一直線に俺のところまで上がってこいって。だからこうなったんだ」

 俺が言うと、モンスターたちは一瞬静まりかえるが、直後に爆発的な歓声が上がった。

「さすがシェスタ様」
「頼もしいよな」
「素敵! だいて!」

 モンスターたちが口々にシェスタを褒め称えた。
 そのシェスタも最初は戸惑ったが。

「ふっ、内緒にするつもりだったんだがな……リュウ、これからそういうのは気づいてても言わないでくれ」

 と、俺に向かってキザな台詞を放ってきた。
 すごいな、何一つ身に覚えや根拠がないのにここまで調子に乗れるのか。

 まあ、でも。

「俺たちも頑張らなきゃな!」
「ああ、このダンジョンにふさわしいモンスターにならないとな」
「ああん、シェスタ様ぁ」

 他のモンスターたちもノリノリだから、これでいっか。


――――ダンジョンスキル――――

・引き返し禁止 NEW

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