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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第一章

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傀儡政権

  ドラゴンナイトの二人とわかれ、ユーリエに抱っこされて、家に帰る途中。
 道ばたの茂みの中から微かに光るものを見つけた。

「とまれ」
「え? あっはい」

 戸惑うユーリエをよそに、俺は彼女の腕の中から跳び降りた。
 ピョンピョンと茂みの方に向かって行き、見つけたものの正体を確認した。

「これは、本物だな。めずらしいな」
「なにがですかスライム様」
「ああ、マンドラコラだ。聞いた事はないか?」

 ユーリエは首を振った。ちょっと前までただの村娘だったしそんなもんか。

「根っこが人型の植物だ。ものすごく珍しくて、その根っこが魔法アイテムの材料になるんだ」
「そうなんですね」
「せっかくだからもらっていこう。ユーリエ、耳を塞いでろ。悲鳴を聞いたら死ぬぞ」
「は、はい!」

 ユーリエは血相を変えて、慌てて自分の耳を塞いだ。
 俺は地表に露出してるマンドラコラの葉っぱを加えて、思いっきり引っ張った。

「きゃああああああ!」

 女の子の黄色い悲鳴が上がった。
 引っこ抜いたマンドラコラは小さな人形の様な見た目をしていた。
 引っこ抜かれて地面に投げ出されたマンドラコラは着ている服を脱ぎだした。

「な、なななななんですかそれ」
「いいから見てろ」

 赤面してあたふたするユーリエをよそに、おれはマンドラコラのストリップショーを眺めた。
 そいつは着ている服を一枚ずつ脱がしていって、やがて下着まで脱いだ真っ裸になった。

「はっ!」

 そこに魔力をぶつけた。
 全裸になった瞬間魔力をぶつけた倒した。

「す、スライム様?」
「マンドラコラは特別な処理が必要なんだ。一番効果高いのは真っ裸の状態だけど、熱さにも寒さにも弱いから、全裸になった直後から劣化が始まる。なった瞬間に急いでしめないといけないんだ」
「お魚みたいですね」
「似てはいるな、さて――」

 全裸で転がっているマンドラコラに向かって、俺はスライムの体を変形させて、包み込むように呑み込んだ。
 まずはマンドラコラを呑み込んで、体の中でとかす。
 ドロドロにとかした後は膨大な――おれの全魔力の8割にもなる魔力を注ぎ込んだ。

 360度全部の角度から魔力をつかって押しつぶす。押しつぶしながら染みこませていく。
 しばらくするとそれが出来た。

 体の一部をちぎって、陶器の容量でコップを作ってから、火を噴いて一瞬で乾かす。
 家を作ったときの応用で、即席のコップを作った。
 そのコップに今し方作った魔法薬を流し込んで、ユーリエに渡した。

「ほら、これのめ」
「こ、これってなんですか? 腹下しですか?」
「なんでこの状況で腹下しを作るんだよ! これは……名前はないな、俺オリジナルの魔法薬だ。飲んだら体力と魔力の才能上限が少し上がる」
「え?」
「人間は頑張れば(、、、、)限界を何回か突破出来るけど、こんな風に薬で軽く突破させる事も出来る。ほらぐぐいっといっとけ」
「あの……スライム様?」
「なんだ」
「これって、もしかしてものすごい物なんじゃないですか? そんな風に聞こえますけど」
「かもしれないな、今のマンドラコラは裸のプロポーション的に100年以上地中で熟成したレアものだ。おれの八割の魔力もつかったしな」
「そ、そんな物飲めませんか」
「いいから飲め。ほら」

 ユーリエに飛びつき、無理矢理魔法薬を飲ませた。
 こんなもの俺にはもう意味がない、せっかく作ったんだから飲んでもらわないと無駄になるだけだ。

 最後の一滴までユーリエの喉を通り、感じていた彼女の才能上限が少し上がったのを確認出来た。

「よし、ちゃんときいたみたいだな」
「私には何も感じませんけど」
「上限なんて弱いうちには分からないもんだ、そのうち感じるようになるさ」
「そうですか……あの、ありがとうございますスライム様」
「気にするな。それよりも魔力使いすぎてつかれたから抱き上げてくれ」
「はい!」

 ユーリエは俺を抱き上げ、さっきまでと同じように抱っこ歩き出した。
 家路につきながら、さっき(、、、)思った事を考えた。

 この森を出て、母さんから離れてだらだら出来る場所を作る。
 独立はいつにしようか、どんな場所にするのか。それをあれこれ考えた。

 モンスターが住みやすいのはなんといっても山、森、ダンジョンといった人気のないところだ。
 滅びた街を占拠するアンデッドたちもいるが、そんなところじゃおれはのんびりマッタリできない。
 日差しがほどよくあって、スライムのこの肉体が半溶けになる様な場所がいい。
 具体的にはどんなのがいいのか、と考えていると。

「があああああ!」

 離れた場所からモンスターの断末魔が聞こえた。

「スライム様! さっき私達が来た方向です」
「分かってる!」

 望遠の魔法を使って、悲鳴がおきた場所を見る。
 すると、さっき俺たちがいた、まさにマンドラコラがいた場所で戦闘が終わっていた(、、、、、、)
 地面にリザードマンが3匹倒れていて、もう息をしてない。
 それをやったのは男の勇者。

「アレックス……」

 よく知っている男だ、俺の教え子の中で一番強くて。

『やはりリュウの匂いがする。今日こそ助け出すぞリュウ』

 俺に執着しているアレックスは、久しぶりに遭遇したらなんか勘違いが加速していた。

     ☆

 魔力が低下して、「匂い」とやらが薄まっているのをいいことに、アレックスの事を適当にやり過ごして家に戻ってきた。

 ベッドの上に、ユーリエに「俺を抱いたまま寝ろ」とトレーニングの指示を出してから、今日の事に頭を使った。

 このディープフォレストを出たい、出て独立して好き勝手にのんびりしたい。
 アレックスの事で、それが難しい事に気づいた。

 もしもおれがここをでて、この森と同じようなのをつくって、母さんみたいにダンジョンの主として君臨しちゃったら、今度こそアレックスに見つかってしまうかも。
 それはゼッタイにだめ、面倒さの自乗倍くらい超面倒臭くなる。

 おれは、新しいダンジョンの主になったらダメなんだ。

     ☆

 次の日の昼間、ディープフォレスト中心部。
 昼間なのに一段と薄暗いところに住んでいるヒメを訪ねてきた。

「やだ」

 ヒメはあっさり断った。
 一緒についてきて、新しいダンジョンの主になってくれと言う協力の要請をあっさりと却下してくれた。

「どうしてもか?」
「あたしはここからはなれないもーん。ここの土地の水を飲んだ人間の血が一番美味いんだ? 今まであっちこっちぶらぶらしてきたけどさ、水の質次第で血がくどくなるわ腐るなるわでちょうどのいいのがなかったのよね」
「ここのが一番なのか……」
「うん! だからあたしはここから離れないよー」

 そう話すヒメはパチンと指を鳴らすと、コウモリを頭に乗せた人間がやってきて、ヒメの前で手首を切った。
 どくどくどくと鮮血がグラスに流れ込んで、ヒメはそれを美味しそうに飲み干した。

 それを見たユーリエが。

「水の事も考えるなんて、まるで牛みたい」
「人間牧場の主だからな」
「こ、こわいです……」
「お前の血は飲ませないから安心していいぞ」
「スライム様……」

 ユーリエはすがるような、うるうるとした目でおれを見つめた。
 しかしヒメがダメとなると、どうしたもんかな。

 そんな事を考えてヒメの元から離れてあるいてると、ユイと遭遇した。
 ユイは人間の姿で、両手を腰に当てて、俺たちが進む方向で仁王立ちしていた。

「どうしたユイ、母さんから何か伝言か?」
「あ、あたし……」
「うん?」

 ユイは珍しく、口籠もったように口を開いた。

「ど、ドラゴンだから、そのうち森をでて一人たちしないといけないんだよね」
「? まあそうだな。アラガンスもそうだったし」

 ディザスターと母さんの事を考えたら、ユイもそのうちアラガンスのように外にでて自分のダンジョンを作らないと行けないんだろうな。
 ……それがどうしたんだ?

「でもこまったなあ、なにもかんがえてないんだよな」
「……はあ」
「それに手伝ってくれる人もいないし――」

 そう言って、ユイはちらっと俺をみた。

「だれか、あたしと一緒にやってくれる人いないかなあ」

 妙に延び延びとした語尾の口調のユイ、普段と雰囲気が違うがどうしたんだろ。
 まあでも。

「ユイなら一人で大丈夫だろ。母さんの娘で伝説の黄金龍なんだ」
「っ! お兄ちゃんのバカ!」

 ユイは何故か俺を怒鳴って、地団駄を踏むような勢いで去っていった。

「なんなんだ今の」
「あの……スライム様」
「どうしたユーリエ」
「……いえなんでもありません」
「そうか」
「どう見ても妹様スライム様とご一緒にしたかったみたいだけど……スライム様の事だからきっと何かお考えがあるんだわ」

 ユーリエは俺を抱いたまま、聞き取れない程度の小声でブツブツ言った。

 おれはユーリエと一緒に再び歩き出した。
 ヒメがダメって事は、後はそうだな、あいつしかいないな。

     ☆

「きゃあ、素敵」
「シェスタ様、こっち見て」
「ああーん、もうあたしいつ死んでもいい!」

「はーはっはははは。わめくわめくな子猫ども。このビッグマウスのシェスタはちゃんと全員相手にしてやるぞ」

 ユーリエと一緒にやってきたそこで、シェスタがメスのモンスターたちに囲まれていた。モンスターたちは黄色い悲鳴をあげて、シェスタにキャアキャア言っている。

「シェスタ様。もしよろしければわたし達にシェスタ様の強い所をお見せ下さい」
「おう任せろ。そうだな、今からあの岩を真っ二つにしてみせる」

 シェスタはそう言って、スタスタと自分よりも巨大な岩の前に向かって行った。

「はああ……とぅ!」

 大ネズミは気合をいれて岩に向かって突進していった。
 ただの突進、岩はびくりともしなかった。
 逆に体当たりしたシェスタはしたたかに頭を打って、「あいてててて」と目を回していた。

「きゃああ、だ、大丈夫なのシェスタ様」
「今日はお調子悪いんですか?」
「そんなはずありません。そうよ、きっと実戦じゃないからダメなんです」

 シェスタを囲むメスモンスターは少し落胆しつつも、必死にいいわけを探して、自分の中の「かっこいいシェスタ像」を維持しようとする。

 おれはこっそり、隠匿の特性を付け加えた魔力を大岩めがけてうった。
 魔力が当たって――。

「見て! 岩が」
「粉々になったわ」
「そっか時間差なんだ。さすがシェスタ様だね」
「え? ああ……そ、そうだな」

 シェスタはきょとんとしたが、すぐにいつもの調子に戻った。

「まあ、このおれ様にかかりゃ、こんなのちょちょいのちょいだぜ」

 と、大いばりし出した。
 それに合わせて、メスのモンスターたちもきゃあきゃあいった。

 うん、そうだ。
 シェスタを新しいダンジョンの主にすればいいんだ。
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