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スライムの皮をかぶったドラゴン~ダンジョンで静かに暮らしたい 作者:三木なずな

第一章

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道しるべ

「ねえねえ、リュウって、
の王子を森の案内をしたんだよね」

 次の日、ドラゴンナイトで集まっていると、リリがいきなりそんな事を聞いてきた。
 聞かれた俺は、俺を抱いてるユーリエにアイコンタクトを投げてからリリに答えた。

「ああ、母さんの命令で、初日だけな。それがどうしたんだよ」
「精霊の王子様ってどんな人?」
「どんなって……」

 どう答えようか考えた、質問を投げてきたリリの瞳がキラキラしている事に気づいた。
 何かに期待――いや、王子様って位だ、憧れてるのかな?

「……強かったよ。さすが大精霊の息子だけある、魔力がとんでもなく強かった」
「そんなに強かったの?」
「ああ、純粋な魔力ならヒメやユイよりも強いかもな」

 当たらなければどうと言うことはない状態だがな。

「すっごーい。やっぱり強いんだね」
「そんなに強いのかよ。……なあリュウ」

 今度はテリーが言ってきた。

「その王子ってヤツに会いに行こうぜ」
「はあ?」
「うん、リリ、王子様にあいたい」
「せっかく大精霊の息子が来てるんだぜ、その強さ見学しなきゃもったいないぜ」
「だよね、だよね」
「行こうぜ。北の森だよな」
「行こう」

 テリーとリリはこっちを置き去りにして、二人だけで盛り上がった。
 向かい合って拳を突き上げて、北の森に向かって遠足気分で歩き出した。

「おいお前ら!」

 呼び止めようとするも、止まらなかった。
 二人はすっかり乗り気で向かって行き、俺はため息をつきながら、その後をついて行く事しか出来なかったのだった。

     ☆

 ディープフォレスト最強の森。
 龍脈の真上にあるだけではなく、数多の強力なモンスターや勇者が散っていったこの北の森は、他よりも一段と濃い魔力が充満している。
 中身は人間から転生したスライムだが、今の体はスライムそのものだ。
 足を踏み入れただけで全身に力が溢れてくるような、そんな場所だ。

 そんな森を、ユーリエに抱いてもらったまま、テリーとリリと一緒に進む。

「いいか、遠くからちょっと見るだけだぞ。近づいてアラ――王子の邪魔をしたらお付きの四大精霊に怒られるからな」
「すげえ、あれってやっぱり四大精霊なのか」
「リリしってる、火と、水と、風とだよね!」
「そうだ、だから――」
「大丈夫だよ。こっちにはリュウがついてんじゃん。だってリュウ王子の案内をしたんだろ」
「マザードラゴン様の代わりにだったよね。それならきっと大丈夫だよ」

 脳天気な二人、思わずこめかみを押さえてため息つきたくなるほどのお気楽さだ。
 スライムには押さえる手もこめかみもないけど。

 そうして、三体+一人で森を進む。
 こっそりと感知魔法をかける、今日も勇者の侵入がそこそこあって、あっちこっちで戦闘が行われているが、近くにはないようだ。

 念の為、もう一つの感知魔法もかける。
 最近、必要にかられて編み出した魔法だ。

 アレックスが来て、ルーシアも来た。
 このディープフォレストに俺の前の教え子が次々とやってきた。
 アレックスを筆頭に、その12人とはなるべく会いたくないから、そいつらの事だけをキャッチする魔法だ。

 森全体に範囲を広げ、検索にかける。
 俺がそういう風(、、、、)に育てた事もあって、俺の教え子の波長はわりかし特殊だ。それを見つける魔法なのだが、一人しかキャッチ出来なかった。

 かなり弱い一人――ユーリエだけだ。

 魔法がちゃんと効果を発揮しているのと、12人のだれも来てない事をちゃんと確認して。
 俺は二人と一緒に進んだ。

 しばらくして、アラガンスの姿が見えてきた。
 戦闘中のアラガンスは奥義のファントムディザスターを撃った。相変わらずノロノロなビームを、四精霊が相手を追い立てて当たるようにしてやる。
 強靱な肉体を持つ勇者が一撃で、森の一角とともに消し飛んだ。

「すっげえ! あれが王子か」
「本当にすごい魔力」

 テリーとリリはアラガンスが放った一撃に見とれて、舌を巻いていた。
 傍から見たら見栄えがいいし、威力が高いのは事実だからそうなるのは分かる。

「そこにいるのはだれだ」

 ヤベ気づかれた。
 こっそりとのぞこうとしたんだが、予想以上にテリーとリリがハイテンションで、声を出したからすぐにばれた。

 アラガンスはこっちに向かってきた、四精霊が前後左右と護衛しつつ、一緒にこっちに来た。

「なんだ、スライムにインプにゴブリン。下等の魔物ばかりではないか」
「あ、あの! 私たち、王子様の事を見に来たんです」
「すっげえ強いって聞いたからよ、それの見学をしに来たんだ」
「ふはははは、そうかそうか、うむ、よい心がけだ小さきものどもよ。そういうことならば我の強さを思う存分目に焼き付けていくといい」
「うん!」
「はい!」

 上機嫌になるアラガンス、そして元気よく答えるテリーとリリ。
 一方で、四精霊が微かに困った顔をしたのが見えた。

 気持ちはわかる、おもりの相手が増えたようなもんだからな。
 あまり四精霊に迷惑をかけてもいけないから……そうだな。

 俺は魔力を出した、出してテリーとリリの体をつつんだ。
 その際、魔力の特性に「隠匿」と付け加えた。
 魔力そのものを見られないようにする特性だ。

 その強度を調整した。
 テリーやリリはもちろん、アラガンスにも見えない様に。
 しかし、四精霊にだけは見える様に。

 針の穴に糸を通すような調整で魔力の濃淡を決めて、テリーとリリを包んだ。
 この魔力自体意味はない、何か効果のあるわけではない。
 単にアピールするだけだ。

 テリーとリリは俺が守る、そっちに迷惑はかけない、というアピールだ。
 四精霊の波動が一瞬波打った、火の精霊がそれに一呼吸遅れて、俺に向かってかすかに頷いた。

 俺の意図が向こうに伝って、向こうの意図も俺に伝わった。
 子供の頭上で大人が内緒話をしているような、あんな気分になった。

 おれは更に感知魔法をかけた。
 北の森にいる勇者たちにサーチをかけて、無難な相手を選ぶ。

「ねえねえ、こっちに行こうよこっちに」
「ふははは、はやるな小さき物よ。我はこっちに行きたいのは」
「えー、でもこっちの方がいつも強い勇者がいるよ」
「そうか、ふむ、こればかりは土地勘のあるものにかなわんな」

 強い勇者、と聞いてアラガンスの目がはっきりと光った。
 ここ数日付き合って把握した正確通り、こいつは自分が最強だと思ってて、強い勇者を倒して力を誇示する想いがある。
 魔法でサーチした比較的弱い勇者がいる場所を、いつも強い勇者がいるっていったら予想通り誘導出来た。

 しばらく歩いてると勇者と遭遇した。
 始めてみる、大剣を背負った若い勇者だ。

「よーし。見ていろ小さき物よ」
「「はい!」」
「これが父を越える究極の一撃。ファントム……ディザスター!」

 技名を叫びつつ、妙に調子にのったポーズをかましつつ! アラガンスはファントムディザスターをうった。

 同時に四精霊がこそこそと動いた、いつも通り勇者の足を止めるようだ。
 が、微かに「パリン」って音がした。
 直後、勇者が真上に飛んだ、精霊光のビームを大きく飛んでよけた。

 まずい、このままよけられたら面倒な事に。

 魔力を放出、形を整えて、隠匿の特性をかけて勇者の真上に飛ばした。
 そのまま叩き落とす、はえたたきの要領で勇者をはたき落とす。
 いきなりの衝撃に勇者は驚愕の顔をしながらも、ファントムディザスターに向かってはたき落とされた。
 そして、威力だけは半端ない一撃をまともにくらって、蒸発する。

「すっごーい、また一撃だ」
「王子ぱねえな」
「ふはははは、当然だ小さき物よ。われは偉大なる大精霊の血を受け継ぐ未来の大精霊なのだからな」

 テリーとリリが無邪気に感動して、アラガンスが大いばりする。
 一方、四精霊は複雑な顔をしつつ、俺に軽く会釈してきた。

 おれがとっさにフォローしたからいいけど……このさき、こいつらの子守はますます大変になるんだろうな、とおれは思ったのだった。

     ☆

 一通り勇者を倒して、日が暮れた頃。
 アラガンスは森から微かに見える夕日を眺めて、いった。

「これで事足りるであろう」
「何が事足りるの?」

 疑問に思った俺は聞きかえした。

「うむ。我は試験のためにこの森にやってきた。父上の元を離れ、独り立ちする試験だ」
「独り立ち?」

 その言葉に微かな不安を覚えた。
 こいつが、独り立ち?

「そうだ。父上のブルーマウンテンを離れ、独り立ちして新たな魔物の巣を作るための試験だ。父上にそうしたいと申し出たら、ディープフォレストで力を示してくればいいといってくれたのだよ」
「えっと……つまり?」

 今ひとつ意味が分からなかった俺、半分キョトンとなって聞き返す。

「そっか、王子様家をでちゃうんだ」
「ふははは、小さき物よ、その言い方をするでない。まあ、本質は間違ってないがな」

「へえ、家をでるんだ……家を?」

 瞬間、様々な光景が頭を駆け巡った。

 アラガンスの案内のように、母さんにこき使われる毎日。
 実家をでて新しいダンジョンを作ると言ったアラガンス。
 ディープフォレストの中心で毎日寝ているだけの母さん。

 俺、もしかして。
 新しいダンジョンを作れば、誰にもこき使われずにのんびり出来るんじゃないのか?
+注意+
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