歓迎そして日常の始まり
何者かの魔法により船が優しく包まれ、ゆっくりと降りていく。甲板に居た人達も、自分の荷物をまとめるためにかなり移動していた。
「ウェルギス、これは……7元徳の『愛』の力か?」
「あぁ、どうやらそうらしい、たまたま近くに居たらしくて、助けて頂いた。」
なにやら父とウェルギスさんが話している…7元徳とはいったいなんだろうか……
気になっていると、父に声をかけられる。
「白亜、お前もそろそろ準備しときなさい、クロスシティに着いたら俺は忙しくなる。なかなか会える機会は無いだろうが、何かあったら連絡してくれ。それじゃあ学校頑張るんだぞ。」
「はいよ、父さんも色々頑張って、俺に来ること隠してた位なら、結構な大事なんだろうし、何かあったら困る、気を付けてくれよ、それじゃ…行ってくる。」
「あぁ、行ってらっしゃい。」
笑顔で別れを告げ、部屋へ戻る。
その頃にはもう地上へ着いており、沢山の人が船を降り始めていた。
しかし今はまだ夜のため、今夜は寝ていく客も多いようだ。
一応寮へ行く人は集まって移動することになっているため、俺もさっさと移動する。
およそ30分後、やっと船を降り、集合場所へ行こうとすると、声をかけられる。
「ヤッホー白亜~」
「お、ルースか、お前も今降りたのか?」
「ん~まぁそんな感じ、というか……なんか凄い時間感覚狂っちゃいそう。」
まぁそれもそうだろう……いくら深海で光が届かないような場所を通ったとはいえ、地球外では昼だったのだ…いきなり夜になったら感覚も狂ってくる。
「そうだな、まぁ俺は正直言って、もう寝たい位だけどな。」
「そっか、白亜さっきの作戦参加したんだね。」
「まぁ…参加しないで後悔したくないからな。」
結局何者かの妨害で作戦は失敗してしまったが、でも生きているなら何も文句はない。
そんなこんなで無駄話をしている間に集合場所へ着いた。
「白亜、ルース、遅かったな。」
「ハクっち、ルースさんやっほ~」
もうすでに着いていたヴァンとヒカルがこちらに気付き声をかけてきた。
「もう皆集まったりしちゃってたか?」
もうすでに集合場所にはかなりの人数が集まっていたのだ。
「うむ、今から点呼始める所だったぞ。」
「そうか、まぁ間に合って良かった。」
そんなこんな話しているうちに寮へ案内する係の人が声をかける。
「はーい皆さん聞いてくださーい、これから寮へ移動しますが、まずは寮の番号順にならんでくださーい。」
俺たちがこれから暮らすことになる寮は『バハムート』という名前で、IからVまである。
ちなみに俺はIVだ。
指示通りに動き、しっかりと並ぶ。
ルースとヒカルは同じ寮だが、ヴァンは別の寮だ。
「はーいそれじゃあ寮へ向かいますよ~。」
そういって寮Iの人から歩き始める。
移動はそんなに時間がかからないが、少し暇になるので、周りを見回してみる。
周りにはとても大きな建物がいくつもある、しかし、大都会というような印象はあまり無い、おそらくそれはビルのような建物が少ない為だろう。
本当に様々な様式の建物がある。
近くにはコロッセオのような建物、とても大きいがおそらく図書館であろう建物等々見ているだけで飽きない。
色々と見ながら歩き、5分ほどたった頃、到着しようとしていた、寮は大きなホテルのような外見だが、これはおそらく内部に空間拡張を使っているのだろう。
「はーい着きました~こっからは各寮の寮長さんが案内するのでそれに従って下さいねー。」
夜なのでかなり眠そうにしているが、それぞれの寮長が各寮へと案内する。
正直なところかなり眠くて説明されたほとんどの内容が理解出来ていなかった、まぁ……明日ヒカルにでも聞くとしよう。
「ハクっち、凄い眠たそうだね、大丈夫?」
ちょうど良くヒカルが声をかけてきてくれた。
「いや……かなりヤバイ……すごく眠くてぼーっとしちまう。明日今日何話されたか教えてくれ。」
「りょーかい、ちなみに僕とハクっちは同じ部屋だよ、それじゃ移動しようか。」
「おう。」
眠気と闘いながらどうにか部屋まで着く。
ドアの鍵はキーカード式で、境界へ入る際に渡された個人証明書をかざすことで開けることが出来
る。
この仕組みはとても複雑で、ここ50年程で実装されたらしい。
「こんばんは~おじゃましまーす。」
声を落として一応挨拶をする。
内装は現代の家のような感じだった。
しかし……何より驚きなのは、綺麗すぎる、建てたばっかりではないかと思う位綺麗なのだ。
「荷物どこに置けば良いんだろうねぇ?」
どうやらこの部屋は四人部屋らしく、俺とヒカル以外は先輩が居るらしいが……
「う~ん、とりあえずはリビングのすみにでも置かせてもらって、ちょっと見て回るか。」
「そだね~というか…本当に普通の家みたい、あんな外見だったはずなのに…やっぱり凄いなぁ。」
そうだ…普通の家の見た目でこの内装ならなんとも無いが、ここは一応寮なのだ、やはり素晴らしい……。
荷物を置いて、ちょうど移動しようとしたその時、声をかけられる。
「おや?もう着いていたんだね、ようこそ僕たちの部屋へ、と言っても冥夜は寝ちゃってるけどね。」
そこに立っていたのは、狐の獣人……だろうか、狐と人の間のような感じだ。
とりあえずはしっかり挨拶をする。
「俺は天月白亜と言います、よろしくお願いします。」
「僕は伊吹ヒカルって言います、よろしくお願いします。」
「そう固くならなくても良いんだよ、これからは同じ部屋ですごすんだし、僕は千里、不知火千里っていうんだ、白亜君、ヒカル君、よろしく。ちなみに僕は九尾だよ。」
とても優しい笑顔で迎え入れてくれたことに凄く安心した。
「さて、見るからに白亜君は凄く疲れてるようだね、部屋に案内するから、ゆっくりとしてくれ、何かあったら僕の部屋も教えとくから聞きに来てくれて構わないよ。あ、そうだ、小腹とか空いてたら冷蔵庫に君達の為にって冥夜が軽く何か造ってたから、レンジで温めて食べてね。」
「はい、色々ありがとうございます。」
それぞれの部屋へ案内されて俺とヒカルはそれぞれで行動することにした、俺はとりあえずベッドにダイブすることにした、とてもふかふかで、低反発、とても体によさそうだ。
そんなことを考えていたらいつの間にか深い眠りへと落ちてしまっていた。