境界へ【三大学校と種族】
甲板に着くともうすでに沢山の人(ただしくは人だけでは無いのだが)が食事を取っていた。
人が多くて見えづらいがルースとはぐれないようにしながら空いてる席を探す。
「ん~、そこそこ早く来たから大丈夫だと思ったんだけどなぁ…やっぱり混んでるなぁ~。」
精一杯背伸びをして一緒席を探しているルースがつぶやく。
ルースは精一杯背伸びをしているんだが、それでも俺の身長には届いていない。別に俺が特別高い訳では無いのだが…まぁ言わないでおこう。
そんな下らない事を考えていると突然後ろから声をかけられた。
「どうした?お前等二人で…席でも探してるのか?」
声の主は中学の時に知り合い、共に境界へ行くメンバーの一人、大の親友のヴァンだった。
ちなみにだが、本名は フィーラス・ヴァングラス であり、呼びやすいように省略してヴァンと呼んでいる。ヴァンは境界三大学校の一つ、境界立剣術学校に進学した。俺とルースは同じく三大学校の境界立魔法学校に進学する。三大学校の残り一つは境界立
技能学校であり、順に近接戦闘、魔法全般、遠距離戦闘の専門校である。
三校はそれぞれ連携しており、学生寮も三校がシャッフルされて多くのコミュニケーションが取れるようにされている。
そんな事を思い返しながら俺は聞き返す。
「あぁ、なかなか見つからないんだ…ヴァンもか?」
「いや、俺はもう見つけて取ってある。」
首を横に振りながらヴァンは続けた
「まったく、こんだけの人数がいるんだ、もっと早く来なきゃダメだろう?お前等は遅すぎなんだよ。」
今まで口を閉ざしていたルースが俺にだけ聞こえる声で囁く
「ヴァンってホントに吸血鬼なのかな~信じられないよ…」
まぁ言われてみればその通りだ。
髪の色や瞳の色は確かに吸血鬼っぽいが…まぁ銀髪も紅の瞳も今やあまり珍しいものでは無いのからな…ほとんどヴァンには吸血鬼っぽい所が無いのだ。
日光に当たっても無事だ、むしろ好んで早起して散歩するくらいだ…その上ニンニクも嫌わないし十字架に至っては自分でアクセサリーとして付けてる程だ…
だが吸血鬼の身体能力は受け継がれているために完全に吸血鬼としての弱点だけを克服したある意味最強の吸血鬼なのである。
そんなことを考えながら見ているとヴァンが呆れたような顔をして言う
「何を考えてたかは知らないが…どうだ?一緒に座るか?」
するとルースは笑顔で言い放った
「ホント!?ありがと~そろそろお腹が空きすぎてお腹と背中がくっついちゃう所だったんだ~。
俺とヴァンは顔を見合せて苦笑した。
「それじゃあさっさと行こう、あまり固まってると他の方の迷惑だからな。」
ヴァンにしては珍しく礼儀正しい事を言っているが…まぁそれは正論だったのでヴァンに着いていき席に向かう。
人混みを避けながらやっとの思いでヴァンが取っておいた席に座る…歩き疲れたので少し休もうとしたその時だった…事件は起こってしまうのだった…