境界へ【レヴィアタン】
部屋を出た先は長い廊下になっている。
地球から境界に行くためには深海にある境界門を通る必要がある。
今乗っているこの船【レヴィアタン】はその門へと行くために特別な船であり、深海の水圧に耐えるのは当然ながら、空間縮小魔法が使われていて、外見では想像もつかないほどの広さになっている。
また、とても長い船旅になるために様々な売店や娯楽施設が設置されていて、とても快適にすごせる空間となっている。
「え~っと、ルースの部屋は…1784号室だったか、にしてもなぁ、部屋が多すぎるよなぁ…」
船のマップは記憶しているつもりだが、やはり細かい部屋番号までは覚えきれない…俺はまずはエレベーター前に進み、設置してある船内マップ端末に触れ位置を確認する。
「ふむ…17階層の8列の4部屋目か…」
ちょうど確認を終えたと同時にエレベーターが開く。
「あ…おはよう…ハクっち…」
出てきたのはこの船で知り合い、同じ学校へ行く予定の 伊吹 ヒカル だった。
「お~おはよ~ヒカっち~何かしてたのか~?」
「朝ごはん買ってきた…今から部屋に戻って食べてくる…ハクっちは?」
ヒカルは鬼人と仙人のハーフで、自身を魔法で強化して素手で闘う戦法を得意としているらしい。
そしてヒカルは日が出ている間は口数が減ってしまう、だが夜になると人が変わったかのようによく喋り盛り上がるようになる、本人は単純に日が嫌いなだけだと言っている。
「俺はルースに一緒に朝ごはん食べに行かないかって誘われたから今から行くとこだよ。」
「そっか…ルースさんて優しくて明るいからいい人だよね…お似合いだと思うよ…それじゃあまたね。」
それだけ言うと早足で廊下を駆け抜けていった…いや…お似合いってどういう意味だよ…そんな事を考えながらもエレベーターに乗り、ルースの部屋を目指す。
-5分後-
1781、1782、1783、1784…っと…ここか…
時間的には少しギリギリだったがどうにかルースの部屋に着くことが出来た。
「ルース、居るか~?」
扉をノックしながら周りの迷惑にならない程度の声で呼び掛けてみる。
数秒後、扉が開き、中からルースが出て来た。
「早かったね~、白亜の事だから迷っちゃって10分位遅く来ると思ってたよ~。」
いつものイタズラっぽい笑顔で冗談を言ってくる。いよいよ今日だと言うのにこの態度とは…なんと言うか、いつものルースって感じだ。
「いや…地図があるのに迷うわけが無いだろ?あと…俺は今まで一回も遅れたことなんて無いはずだけど?」
「冗談に決まってるじゃんかぁ~分かってるくせにわざわざそんなに言わなくても良いじゃんか…むぅ…。」
頬を膨らませながら、不機嫌そうな顔でこちらを見つめてくる…。
その様子が可愛くて笑ってしまいそうになるが、今は心の中にしまっておく。
「ごめんって…悪気は無かったんだよ…そうだなお詫びとして境界行ったら何か好きなもの買ってあげるよ。」
するとルースの顔は一気に明るくなり、いつもの笑顔に戻る。
「本当!?何買って貰おうかなぁ~♪」
あれこれ考えている様子のルース…とんでも無い物を買わされたりしないか少し不安だが…言ってしまったこともう祈るしかないのだ…
「グゥゥ~」
突然お腹の音がなる…自分のでは無いようだ…ここに居るのは俺とルースだけ、となれば…
女子としてかなり恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤に染めてうつむいているルースに問う。
「ルース?そういえばお腹空いてるんだよな?」
「う…うん…。」
こういう時に何て声を掛けてやれば良いのだろうか…まぁ…まずは聞かなかった事にしているのが一番だろう。
「ん?どうした?早くしないと席が無くなっちゃうぞ?」
そう言うと一瞬戸惑った様子を見せたが何かを思い出したかのように顔を上げる。
「そうだった‼白亜…今日は甲板で食べようと思ってたんだった‼早く行かなきゃ…レッツゴ~!」
そう言って俺の手を引いて急ぎ足で甲板に向かう。