迷子と裏書庫
今回はまたまたルース目線になります。
どうぞお楽しみ下さい。
薄暗い場所に来ちゃったみたいだけど、どうやっ来れたのか全く分からないな。
しかもここ、なんか気味悪いし寒気もする……早く皆のもとに帰りたいな。
「すみませーん、誰かいらっしゃいませんかー?」
助けを求めてもあたりは静寂に包まれたまま、本当に怖くてしかたがない。
「そうだ、スマホなら連絡がとれ……。」
本当に残念なことに圏外となっていた。
泣きたくなってきた。
数分がたち、それでも静寂は続いている。
「ここでくよくよしてても何も始まらないよね。
よし、せっかくだし探索してみよう。」
スマホのライトを頼りにあたりを歩くことにしたには良いけど、あまりにも不気味すぎる。
周りを良く見るとそこにはとても頑丈そうなケースの中に飾られた本が等間隔でいくつもあった。
いずれも埃を被っていて表紙すら見れない状態だ。
歩き初めて10分程たっただろうか、等間隔に続いてきたケースの一部が壊されているのを見つけた。
中に入っていた本もすっかり無くなっている。
よく見てみると本があったはずの場所にはほとんど誇りが付いていなかった。
「これは、つい最近取られたのかな……ちょっと危険だけど、匂いたどってみれば出口に行けるかも。」
得意の嗅覚をいかし、そこにあった僅かな匂いを辿ってみる。
どうやらさっきまで進んでいた方向のさらに奥へと行っているらしい。
「にしても変だなぁ……この匂い、あんまり良くないきがするな。」
そこから歩いて数分がたっただろうか、出口のような場所は一向に見つからない。
「誰かーいらっしゃいませんかー?」
返事が帰ってくることは無いだろうと思っていたが、とりあえず叫んでみる。
「おやおや、こんなところにお客さんとは珍しい。どうしたんだい?」
「ひゃい?」
不意に帰って来た言葉に驚いて変な言葉を出してしまった。
振り向くとそこには誰もいなかった。
「上だよ、上。」
見上げるとそこにはふわふわと浮かぶ少年の姿があった。
薄暗いため顔など詳細はよく見えないが身長がそこまで高くないのは分かる。
「あの……すいません、迷ってしまったんですが。出口はどこでしょうか?」
少年は驚いたように見えた。
そして少年は笑いながら答えるのだった。
「ここに迷い着くとは君は運がいい人だね。出口ねぇ、ここに来る方法がわからないあたり、君じゃここで歩いてるだけじゃ一生見つけられなかったよ。君は本当に運がいい。」
少年は笑いながらだけどとても怖いことを言っている気がする。
しかもさっき少年が現れてから寒気が止まらないのだ。
「それで、助けていただけませんか?来る前にこのカードみたいなものを落としちゃった人がいて、返そうと思ってたんです。」
そのカードのような物を見るなり少年はなるほどと言い近付いてきた。
「これは君がここに来る原因になったものだよ、それを持っていた人は僕の知り合いなんだ、後で僕が返しておいてあげるよ。」
確かにそれはありがたいことだ、しかし残念ながら渡すことは出来なさそうだ。
さっきから薄々気付いていたが、この少年こそ、本を盗んだ本人なのだ。
「その前に一つ聞かせてください。どうして途中にあった本を盗んだんですか?」
「おや、何でその事が分かってしまったんだ?まぁいい、知ってしまった以上は帰す訳にはいかないな。君は本当に運がいい、この僕の餌になるんだからね、『禁呪・蝕纏』全て、喰らい尽くす!」
少年の体はむくむくと膨れ上がり、ムカデのような手足が生え、皮膚も甲殻のようになっていった。まるで巨大な虫のようになってしまった。
動こうにも気圧されしてしまい全く動けない。
「このまま、食べられるの……?」
そう思うと涙が出てきた。まだまだやりたいことは沢山あるのに、ここで死ぬのは嫌だ。
そんな気持ちを踏みにじるかのように虫になった少年はジリジリと近付いてくる。
「さよならだ、少女よ。」
もうダメだと目をつぶり出来る限りの防御魔法で耐えようとする。
しかしあっけなく障壁は破られ体をがっしりと捕まれてしまった。
「誰か、助けて!」
そう最後の力を振り絞り叫んだ瞬間、からだがふわりと浮くような感覚に襲われ、気付くと床に座り込んでいた。
そして目の前には虫と対峙するように立つ二人の影があった。
「さて、さよならはお前のようだな?7大罪幹部の虫さんよぉ!」




