-始まり-
「大丈夫だよな、何か忘れ物してないよな…着替えよし、歯ブラシよし、ノートやペンも、後はあっちで受け渡しだから大丈夫だよなぁ…」
境界へと向かう為の船の部屋の中、同じ部屋で寝てた奴らはまだ寝ている。俺は境界に持っていく持ち物を確認していた。
コン コン
突然部屋のドアがノックされる。
「どちらさまですか~?」
「私だよ~ルースだよ~開けて~」
どうやら幼馴染であるルースが訪ねて来たようだ。
「おはよ~、白亜も早起きだね~……ん?何してるの?」
眠そうな顔をしながらルースは平然と部屋に入ってくる…
「何って言われてもな、ご覧の通り持ち物の確認だよ。」
そう言いながらリュックのファスナーを閉め…ふとルースを見ると何故か無言でジト目を向けてきていた。
「………。」
「ん?どうした?」
いや…それ一週間前から何十回もやってるけど今さら意味あるの?」
そう言われて思い出してみると30回以上は確認していた…流石に自分でも驚きだ。
「ま…まぁ…確認は大事だし…別に良かったと思う…多分…そうであって欲しい。」
最後には自信が無くなり願いになってしまった。
そんな俺をスルーしてルースが話を続ける。
「いよいよ今日から境界デビューか~。楽しみだね~。」
【境界】…遥か昔から存在し、世界と世界を結ぶ空間だった…
そこにおよそ500年前に【クロスシティ】が創られたらしい。
地球ではおよそ200年前から交流を続けている。
遥か昔、境界がまだ複数だった頃、世界の創造神達が複数あった境界をひとまとめにした、との言い伝えらしい。
境界は様々な世界と繋がっていてその数は今も増え続けていてそれに応じて境界も広がっているそうだ。
また、クロスシティでは沢山の種族が共に暮らしていて天使や悪魔、神でさえも平等なとても平和な街らしい。
境界、そして境界と繋がった世界では寿命や成長がほとんど人に合わせられる。そして当然ながら種を越えた恋も許されている。
現に、目の前に居るルースは人狼と人のハーフで耳が上に付いていたり嗅覚が鋭かったり等と特徴が受け継がれている…もちろん尻尾も付いている。
ちなみに俺は純粋な人間だと父さんからは聞いている。
母さんは俺を産んですぐに他界してしまったらしい。
だが…わざわざ『他界』と言っているのが少し気になってはいるのだが…教えてくれそうにも無いので特に考えないようにしている。
「は…白亜?どうしたの?私の顔に何か付いてた?」
ルースが不思議そうな顔をして問いかけてくる、何故か顔は赤くなっているが
「え?あぁ…何も付いてないよ。ちょっと考え事してたんだ。」
色々と考えている間ずっとルースの事を見つめているように見えていたらしい…それにしても…何故顔が赤くなっているのだろうか。熱かもしれないと心配して声をかけようとする間もなくルースが話を続けてくる。
「そ…そうだ!白亜もさっさと持ち物の残り片付けしちゃって 朝ごはん食べに行こうよ!今日は景色がとっても綺麗な日だよ!」
俺は伸びをしながらゆっくりと答える。
「そうだな~色々と考えてたら腹減ってきたし…行くか。」
「それじゃあ10分後に私の部屋の前に来てね!」
それだけ伝えるとルースは駆け足で部屋を出ていく。
「あぁ…分かった、また後でな~。」
ルースが出ていった後…俺は片付けを済ませ考える。
「後8分か…他の準備は必要ないしゆっくりと行くかな…」
軽く髪を整えて、白亜は部屋を出る。出た直後に中から奇声が聞こえた気がするが…まぁ気のせいだろう。