図書館競争『鬼仙人と天妖精』
今回はヒカル・ルーニャペアのお話です。
ヒカル目線で進行しますので、それを踏まえてお楽しみ下さい!
いきなり始まってしまったこの競争だけど、正直に自信が無い。
別に競争自体に自信が無いわけじゃない。
ペアになってしまったルーニャさんとまともに話せるかが心配なのだ。
「さて、急に始まっちゃったけど、ペアとしてよろしくね。」
「は、はい……お願いします。」
いきなりだったからさっそく上手く話せなかった……。
こんな調子で大丈夫なのか……。
とりあえずスタート地点にいては始まらないし、動こうと思う。
「あ、あの……さっそく移動しましょう。」
「分かったわ、どういう作戦で探すの?」
作戦と言われて思い付くものは何もない。
「えっと……特に考えてませんでした。とりあえずぐるっと回って見てみることにしたいです。」
「分かったわ。ゆっくりいきましょう。」
「はい。落ち着いていきましょう。」
落ち着いてという言葉でルーニャさんは少し疑問にもったようだが、あれは自分に言い聞かせたようなものだ。
スタートして3分後、まったくもって進展はない、しかし気付いたことがひとつある。
それはルーニャさんの圧倒的な人気だ。
かなり目立つせいなのか、さっきから常に目線を感じている。
「なかなか見つかりませんね。というか、すごい目立ちますね。」
あんまりルーニャさんはそう言われるのが得意ではないらしく、少し困ったような表情を見せた。
「まぁねぇ、こればかりは遺伝だから仕方ないのよねぇ。」
「遺伝というと、ルーニャさんはどんな種族なんですか?」
3対の美しい羽を持つルーニャさんだが、今までやってきたゲームで言うと大妖精などにあった特徴だった気がする。
「そうねぇ、私は妖精と天使ハーフ、という感じかしら。ヒカル君はどうなの?」
「えっと、僕は人間と鬼人のハーフです。ちなみにただの人間ではなく仙人と呼ばれる類いの人間です。」
それを聞くなりルーニャさんはかなり興味深そうにしてきた。
「なるほど、仙人の息子なのね、私仙人なんてゲームで手にいれた情報しかないのよね。良ければゆっくり話しない?」
「良いですけど、ルーニャさんもゲームするんですね!その話も良ければ一緒にしてみたいです。」
「そうね、意外にも趣味も合いそうね。私こうやって普通に話せる男子がなかなか居なくてね、すごい嬉しいわ。」
ルーニャさんはとっても楽しそうな笑顔で話している姿を見ていると、とても心が軽くなった気分になる。
それからしばらくはルーニャさんと色々話ながら歩いた。
道中周りからの目線が少しキツくなったような気もしたが、それほど気にならなかった。
しかし話をしている途中でスマホを見せてもらった時にたまたま忘れかけていた競争の答えを見つけてしまった。
「あれ……?このアプリってなんですか?」
「あ……つい楽しくてうっかりしてしまったようね。まぁ、結構時間かかっちゃってるし、これはこれで良いことにしましょう?」
「確かに結構時間かかっちゃいましたね。」
「じゃあこのアプリの使い方教えるわね、そうだ、今度私の部屋においでね、一緒にゲームしましょう?」
ゴールと共にとんでもない誘いを受けてしまったこの競争、結果としては3位となったが、充実した時間になった。