第二話 神様(弟)はメモが好き
床に直で寝ていたせいか4時に目覚めてしまった。
体中が悲鳴を上げている上に昨日もらったボディーブローが入ったみぞおちはまだ痛い。
「最悪の目覚めなんだけど……」
布団のほうに目を向けると神様はまだ毛布を頭までかぶった状態で寝ている。
起こすのも悪いと思い昨日入りそびれた風呂の準備をする。
脱衣所で服を脱ぎシャワーを浴びる。
「あー生き返るー」
目の前の鏡を見てみるとみぞおちに見事なまでの痣ができていた。
「綺麗に表れているなー一周回って感心するわ」
恐るべし巫女服ロリっ子神様パワー。
「ゴリラまではいかなくてもチンパンジー位の力はあるな」
ははっと笑いながらも髪を洗い体を洗い湯船につかる。
「あー……ほんとこのために生きてるわー……」
窓の外は薄暗かった空がだんだん明るくなっていく。
やはりどこでも朝日が昇るのは共通らしい。
田舎では朝早く起きると近所の公園でいつもジャージを着たおじさんがランニングをしていた。
ここでもそうなのだろうか?
ふと疑問に思い湯船を出て体をふき脱衣所に都合よくあったジャージを着る。
玄関でランニングシューズを履きまだ日が完全に上っていない町にくり出す。
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走っていると時々同じ様な恰好をしたおじさんや犬の散歩をしている若い人などが歩いている。
「やっぱり都会でもあまり朝は人が多くないんだな」
しかし田舎と違う点はすれ違う人はこちらのことを気にも留めず横切るということだ。
田舎では近所の人との距離感があまりないのでいつでも声をかけられる。
そこのところはなんだかさみしく感じる。
しばらく走っていると小さい公園が見えたので少し休むことにした。
滑り台と鉄棒とブランコしかない小さい公園だった。
ベンチに腰を掛け少しあたりを見回してみる。
「小さい公園だけどこんなので子供は満足できるのか?」
少し疲れがとれたのでそろそろ家に帰ろうとしたとき誰かに声をかけられた。
「ねえねえおにーさんここらへんで巫女服の女の子見なかった?」
ふと顔を上げてみると身長は160cmくらいのこれまた巫女服の少女が話しかけてきた。
「ねーねー?人の話聞いてる?」
俺はさっきの答えを指さした。
「ほえ?なにその指?」
人差し指でビシッと少女を指で刺している。
「何?お兄さんもしかしてボッチだからこの指とまれでもやって遊び相手でも探してるの?」
こいつ人のことバカにしてるのか?
「ちげえよ、巫女服の少女を見なかったかって聞かれたから指さしてんだよ」
少女は意味が理解できていないらしく頭に?を浮かべながら必死に考えている。
「要するにお前が巫女服着た少女だって言ってるんだ」
少女は一瞬びっくりした後すぐに笑い出した。
「お兄さんバカだね~私が人探しで訪ねてるのに~」
皮肉こめて言ってることを理解していないのかこの子。
「質問には答えたし俺は行くぞ」
ベンチから腰を上げて女の子と極力目を合わせないように公園を後にする。
「もし見つけたら情報提供よっろしく~」
見送られる形で公園を後にした。
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「今までどこに行ってたんだーバカー!」
玄関を開けた途端に怒られる。
とっさに耳を塞ぎ被害を最小限にとどめる。
「なんでそんなに怒ってるんだよ」
「なんで怒ってるかっていうとな……」
面倒くさそうに神様が後を振り向く。
「まさか君がここに引っ越してきた人だったなんてね」
どこかで聞いたことのある低い声。
その声の主はまだ記憶に残っていた。
「お、お前は人の家で勝手にシャワーを浴びていた変態!」
声の主の変態は苦笑いを浮かべながら「へ、変態って」とショックを受けている。
「わ、私はそんなに変態っぽかったのか……メモしておこう」
どこからかメモ帳を取り出し必死に書き込んでいる。
「そんなことより!お前がこいつを呼び出したりなんかしたから来ていたんだぞ!」
「俺こんなの呼び出した覚えはありません!」
ビシッと犯人を指をさす。
「なんか私の扱いひどくない?特に君はほぼ初対面なのに」
「いや、どっからどう見ても怪しい人なので」
「私は怪しい人にも見える……メモに追加だな……」
なんかずっとメモってるな。
「んで?神様こいつ誰なんですか?」
「これは一応私の弟だ」
俺は目をこすって二人を見比べる。
分かった。
「神様は合法巫女服幼女だった!」
「そうなのか新しい発見だ……姉さんは合法巫女服幼女っと……」
神様は鋭い腹パンを二人に叩き込む。
「「うごっ!!」」
二人とも地面に倒れこむ。
「誰が幼女じゃあ!私は人間でいうととうにその年齢をとうに超えてるわ!」
「なんで私まで殴られるんですか……」
「ついで」
「姉さんはついでで私を殴る……メモしておこう」
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「紹介が遅れたが私の弟の……お前名前なんだっけ?」
「御子吉成ですよ。忘れないでくださいよ」
「そうだった長いことあってないから忘れてた」
神様はどうでもよさそうにお茶をすする。
「んで、俺がこいつを呼び出したってどういうことですか?」
「お前昨日こいつが風呂に入ってるときにこいつの姿を見ただろ、こいつは人間に姿を見られるとこの世界にとどまらなくちゃいけなくなる」
「俺が見たからこいつは帰れなくなり、晴れて家にいるということですね」
「その通りだ……お前が姿を見なければこんな面倒なことにはならなかったのに……」
神様は大きくため息をついた。
「そんなに私が面倒な存在ですか?」
「うん」
「なんでですか?」
「邪魔」
「そうですか……私は邪魔っと……」
こいつまだメモとってるし……
「とりあえずここに居候させてもらいます。よろしく光助くん」
「俺嫌なんだけど」
「なんで?」
「邪魔」
「君までか……メモメモ……」
こいつさっきからメモばっかり……今気づいたがこいつメモするのにクーピー使ってるし……
こうして光助の家にもう一人の神様(弟)が居候に加わった