元彼とデート?
この男、上田春斗とは小学生から高校生まで同じ学校で中学三年生から高校二年生の夏まで付き合っていた。高校に入ったときに色気づいたのか金髪に染め、根っからの明るい性格で自然と周りに友達ができていた。見た目はチャラそうだけど天然でおバカなタイプ。だったのに、今、目の前にいる春斗は黒髪で短髪。元々童顔だったからか同じ年齢には見えない。
「見た目変わりすぎててわからなかったよ」正直にそう言うと春斗は私に近づき抱きつく。
「良ちゃんは変わらず可愛いね。寝起きも可愛い」そう言われ、私は部屋着でスッピンなことに気付いた。
「春斗、今すぐ出て行って!!」
「えー、おれと良ちゃんの仲じゃん」
「それは高二のときに終わったから」
まだブツブツ言う春斗を無理やり追い出し、昨日持ってきたかばんから適当に服を選び、軽くメイクしてからドアを開けると拗ねたように座る春斗がいた。
「あのさ、アラサー男がそんなことしてても可愛くも何ともないよ」
「良ちゃん、ひどいっ」
そう言って立ち上がり、一緒に階段を下りる。
「ところであんたは何しに来たのよ」
休みの日の朝にうちの実家にいるのが謎。私が帰ってきたのも昨日の夜だし、ずっと連絡取ってなかったのに今更会うなんて。
「さっき、偶然ここを通ったらおばさんに会って、良ちゃんが帰ってきてるって聞いたから会いたくなっちゃって」
「ふーーん」
「良ちゃん、冷たくなったね」そう言って手で顔を抑えながら泣きマネをする。
「そんな泣きマネしても可愛くないから」
キッチンへ行くとお母さんが朝ごはんを用意してくれていた。久しぶりに母親の手作り朝ごはんを食べれるのは嬉しい。
「いただきます」
はあーー。おいしい。それはそうと……。ニコニコしながら当たり前のように隣にいる春斗。
「あんた、いつまでここにいるのよ」
「良ちゃん、今日って休みでしょ? おれも休みだし一緒に遊ぼうよ」
「やだ」「即答!?」
何で失恋した次の日に元彼と遊ばなきゃいけないのよ。
「えー、だって良ちゃん、今日誕生日でしょ? 久しぶりにデートしようよ」
「あら、やだ、そうじゃない。良子、二十八歳おめでとう。せっかくだし、春斗くんとデートでもしてきたら?」
楽しそうに言う母と目を輝かせて喜んでいる元彼。
「どうせ祝ってくれる相手もいなくなったんだし」
ぼそっと言う母に過剰反応する春斗。
「え? 何? どういうこと?」
「この子ったら、昨日四年も付き合った彼氏にフラれたのよ」
「お母さん!? 勝手にバラさないでくれる?」
「本当? じゃあ、おれとヨリ戻そうよ。そんで、そのまま、け」
「絶対イヤ」
「良ちゃん・・・ホント冷たい」
「だから、アラサー男がすねても可愛くないから」
久しぶりににぎやかな朝で失恋の悲しみにひたることなくて本当は少し救われたなんてことは絶対に言わないけどね。朝ごはんも食べ終わり、このまま一日中付きまとわれるのも面倒だから仕方なく春斗と遊びに行くことにした。どこに行くわけでもなく適当に駅前へ行くことにした。つき合ってた時も計画性がなくて、よく駅前のゲームセンターで遊んでいた。計画しても春斗が寝坊するからいつも近場になってしまう。それはそれで楽しかったけど。
「そういえば、良ちゃんって今は何してるの?」
歩きながら春斗がきく。高校卒業してkらお互いのことをほとんど知らない。
「私は普通にOLだよ。外資系の営業補佐。春斗こそ、金髪でチャラかったのに今は真面目風で、何してるの?」
「おれは母校の高校で英語教師だよ」
「え? 学校嫌いの春斗が先生? 意外すぎる」
「おれ、英語だけ得意だったじゃん? 何か教えるのも好きだし、意外と教師向いてるかもなって思ってさ。で、母校に戻ったんだけど、そこにさ」
春斗はそこまで言いかけて何かに気付いたように右を見る。そこは私の幼馴染がいる神社。春斗はその神社へと足を踏み入れる。
「ちょっと? 春斗?」
春斗を追いかけるように私も神社へ入る。ここは幼い頃から大好きな人と大嫌いな人がいる。