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第九話 新たに動き出す研究

誤字脱字はご容赦を

 師匠の研究はやはりホムンクルスの肉体を作る研究だった。師匠は肉体を作れば勝手に生命が宿ると思っていたらしく、簡単な命令で動くゴーレムレベルで研究は止まってしまっていた。

研究は俺の参加によって最初から基本を見直す事になった。

俺と師匠は研究室で今後の方針を話し合った。

「ホムンクルス製作において、肉体より魂をどうするかが重要と考えるんじゃな。」

「はいそうです。ホムンクルスを人のように動かすには魂を入れなければ無理だと思います。」

「魂はどうやって入れる?」

「魂を作るのは人の力では無理だと思います。」

「結局出来ないのか?」

「いえ、今ある魂を使う方法があると思います。」

「・・・例えば死んだ人の魂を捕まえて、ワシらが作った肉体にその魂を入れるという方法か?」

「はい、その方法だとホムンクルス製作に可能性が出て来ると思います。」

「そうなると下準備とタイミングが重要になるな。」

「はい。」

「それと同時に器となる肉体の製作も出来ていないといけないな。」

「それについては一つ案があります。」

「ん?それはなんじゃ?」

「はい、スライムを使います。」

「スライムに魂をいれるのか?」

「いえ、そうではありません。ホムンクルス用の肉体の中にスライムを入れるのです。」

「よく分からんな。もっと詳しく説明してくれ。」

「はい、人間の血液は魔力を全身に運ぶ媒体になります。血液の代わりにスライムを使います。俺の今までの実験の結果を見ると、スライムのほうが魔力の伝達率がかなり良いです。すぐに出来るとは思いませんが、試す価値はあると思います。」

「では、その方向で実験を進めていく事にしようか。」

「はい。」


 二人だけで実験を始めようとしたが素材集めがなかなかうまくいかなかった。薬草採取なら自分で出来るが、魔物や動物の生け捕りは難しく、結局ロトの協力を仰ぐ事にした。ロトに依頼を出しスライムと素体となる動物の生け捕りを頼む。ロトは最初不思議そうにしていたが特に詮索せず、素直に協力してくれた。

肉体の研究はこうして始まったが、魂の研究についてはかなり難航した。その為時々王都に行って文献を調べたり、魔法師に話を聞いたりして研究を少しずつ進めた。

 そうしているうち分かった事があった。光魔法が魂に働きかける事、闇魔法の中の呪いに属する魔法が拘束などに使える事。これらを組み合わせれば何か出来るんじゃないかと思う。

それと魔石についても、魔力を蓄える作用のある魔石なら魂も入るんじゃないかと思う。今後これについても動物実験などやらなきゃいけないと思う。


 俺は15歳になっていた。この世界ではもう成人と扱われる年齢。今では精神年齢と肉体年齢の差を感じなくなってきた。ただ思春期の肉体の勢いはものすごくエリナには大変お世話になっており感謝しております。


 研究については少しずつ成果が出てきている。俺は14歳の頃からスライムの隷属化が出来るようになっていた。それで隷属させたスライムを死んだ動物の身体に入れて実験した。

スライムが入った動物は生前の様には動けずスライムのようにゆっくり動く。この時動物の血液とスライムが入れ替わっていてスライムの体液が血管を通って身体全体に行き届いている。

それからこのスライム入り動物の経時変化を観察した。本来なら動物は餌を必要とするがこの実験動物は餌を必要としなかった。外気から魔素を吸収して生存しているようだった。この生態はスライムと同様だった。スライムは捕食もするが、魔素の吸収だけでも生存する。だからこの実験動物はスライムが入り込む事によりスライムと動物の肉体の同化が起きスライムと同じ生態になったと考えられる。ちなみに餌を与えてみたが、普通に餌も食べた。しかし排泄はなかった。摂取した全てを消化吸収する。それもスライムの生態と同じだ。スライムは摂取した食物を消化して魔素に変換してから吸収する。


 魂の研究については、既存の魔法では対応できず新規の魔法が必要だと分かった。その為魔法の基礎の基礎を研究し新規の魔法もしくは既存の魔法の改造を行う事とした。

色々調べていくと魔法文字を研究する必要があると判明した。全ての魔法の基礎が魔法文字。一字一字に意味があり組み合わせで様々な魔法事象を発生させる。魔法文字の使用方法は二種類。魔法文字を声を出して読む=呪文を詠唱する事により魔法を発動させる。魔法文字を何かに刻み魔法陣としてそこに魔力を注ぎ魔法を発動させる。

呪文詠唱の場合、詠唱と同時に魔法のイメージを強く念じ言葉に魔力を乗せなければいけない。それと逆に魔法陣の場合は魔法陣を書く下準備が必要だが、魔法陣が出来ればそこに魔力を流せば魔法は発動する。どちらも魔法文字に魔力を流せば魔法が発動するという事である。

ちなみに詠唱は魔法師が魔法陣は錬金術師が魔法発動に使う傾向にある。詠唱の長所は道具がいらず何処でも魔法が使用できる。短所は集中力を欠くと魔法が発動しない。魔法陣は魔法使用前に魔法陣を書いた道具が必要だが道具の用意さえ出来れば魔力を流すだけで魔法発動できる。

俺は魔法文字を調べていて前世を思い出した。前世で育ててくれた祖母。祖母が真言宗を信仰していた。真言にはサンスクリット語が使われていて、文字に意味があり、印なども使っていた。魔法文字の研究の研究をしながら、昔を思い出し懐かしい気分に浸った。もしかしたら魔法文字を印にしたら印を結んで魔法を発動させるなんて出来るかもしれないなと夢みたいな事も考えたりした。


 魔法の研究を進める為、何度か王都にも行き、調べた結果。魔法とは「何をどうするのか」と言う文章を魔法文字に置き換え、魔力を流す事で魔法を発動すると理解した。ただどの魔法文字を選び、どの順で並べるかは試行錯誤は必要にはなる。これで研究に使えるの材料がそろってきた。


 俺は17になって、研究もかなり進んできた。ゴブリンの魂の捕獲と魔石への封印も成功した。ゴブリンの魂を封印した魔石をスライムの入り込んだゴブリンの身体に戻す。そして経過を観察する。最初は動かなかったゴブリンも何度か試行錯誤を繰り返しているうち改善策が成功し、野生のゴブリンと変わらない動きが出来る様に成っていた。ゴブリンの実験も安定して成功率がかなり上がった。人では無いゴブリンではホムンクルスとは言えずキメラになるんだろう。本当のホムンクルスが出来る目処も段々見えてきたと感じる。


 次に俺はロトにオークの捕獲を依頼した。俺が魂を見た限りでは人の魂に近い大きさをオークは持っていた。オークの魂の捕獲と封印が成功すれば、人で成功する可能性が大きくなる。ただオークの捕獲は簡単じゃないだろう。身体も大きいし力も強い。捕獲方法を工夫しないと失敗するだろう。

そこで落とし穴の罠をしかけそれで捕獲を試みた。ヤマネの町から少し離れた森の奥。その場所は時々オークが発見される所だそうだ。近くに洞窟がいくつかあってその一つに寝泊りしてオークが罠に掛かるのを待った。

罠を仕掛けて五日目、いくつか仕掛けた罠を見回っていると、次の罠を仕掛けた付近から「ゴフゴフ!」「ドガドガ」と騒々しい声と暴れ回る音がした。ロトと二人でそっと近付く、3mほどの穴に落ちたオークの頭が見える。ロトに見張っていてもらいすぐに洞窟に道具を取りに戻る。道具を持ってロトの元に戻る。

「槍で一発で殺せる?」と俺が聞く。

「うん、大丈夫。」

「じゃ、合図したらやって。」そう言ってオークの魂捕獲の準備をする。

魔法陣や封印用魔石をオークの落ちた穴の近くに並べ、全ての準備が済んで、ロトに合図を出す。

「準備できたから、いつでもやって。」

「分かった。」そう言って、ロトがタイミングを計って、オークの心臓を一突きする。

一撃でオークの動きが止まり、「ガ!」と言ったっきり静かになった。

俺はオークの魂が落とし穴から浮かんでくるのを見て魔法を発動する。

浮遊するオークの魂が魔法に絡めとられ魔石の中に吸い込まれる。

魂が大きくて魔石の容量を超えると魔石が割れて封印失敗になる。魔石の容量に余裕があると封印は成功する。

今回オークの魂でも封印は成功した。俺は持ってきた箱の中からスライムを出し、死んだオークの頭の上にぶちまける。

「中に入れ。」俺が命令すると、スライムがオークの胸の傷口からどんどんオークの体内に入っていく。

しばらくするとスライムから身体全体に広がったと念が帰ってくる。近くの木にロープをくくりつけ反対側を穴に落とす。

「上がって来い。」とスライムに命令するとオークの身体を操作してロープを使ってオークが穴から出てくる。

これでオークのキメラ化までは完了した事になる。


 洞窟の荷物をまとめオークと一緒に帰る。途中でロトと別れ家の近くまで帰る。オークは森の中で待機させ、夜になってから教授の研究室に入れる。他人にオークが見られると騒動になるので近隣トラブル回避の為の対策である。

研究室にオークが入ってから、オークに魔石の埋め込みや長期の経過観察などを研究室の地下で行う。

ある程度時間を掛けた観察でも特に異常が見られず、オークの実験も成功したと言える。

これで人用の魔石の大きさの目処もついたし後は実行するかどうかの段階にまで来た。


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