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第四話 出会いと別れ

少し短め。

誤字脱字はご容赦を

 俺も10歳になった、近頃は薬の品質もジジと変わらなくなってきて、俺が主に薬の生産と卸しをするようになった。

今心配事がある。ジジもババも最近体調が良くない。ずっと寝込む事は無いが以前のような元気はない。歳だからと割り切れるはずもなく、二人の分も俺が頑張るしかないと色々と働く。


薬の素材集めも自分で行くようになったし、森の少し奥ならロトと二人で行ったりもする。ロトは弓で普通の動物なら狩る事が出来るので森のかなり奥まで行かなければほぼ怪我する事もない。


順調に時が流れていっているある日、一人の年配の男性が訪ねて来た。

男の名前はロラン。ジジの古くからの友人で王都に住んでいたらしい。

「ほんと久しぶりだな。10年ぶりか?」とロラン。

「そうだな、前に会ったのはヒロが生まれる前くらいか?」とジジは俺を見ながら言う。

そこへババが家に入ってきた。ババとロランは挨拶は終わっていたようだった。

「あんたの馬車は家の馬車の横に置いて、馬は馬小屋に入れて水と餌をやったよ。荷物は降ろすのかい?」とババ。

「いや、荷物にはホロが掛けてあるから下ろすのは後でもいい。先に話がある。」とロランは言って、ババが座るのを確認してから話を再開する。

「実は悲しい知らせがある。」と言って皆が囲んでるテーブルの上に袋を置く。

「それは何だ?」とジジが言った。

ロランはその問いの答えを辛そうに話し出した。

「実はこれはマリナの荷物だ、」

「何であんたがそんな物持ってんのさ。」とババが少し強い口調で聞く。

「マリナは死んだ。」

その場の全員の時間が止まり空気が凍りついた。

すこしして「なんで。」とババ。「どうして。」とジジ。この言葉をきっかけにロランが話を再開する。

「王都から少し行ったところの森でゴブリンが大量発生したらしい。その討伐に冒険者ギルドの依頼でマリナも参加したらしいいんだが、目的地に行ったところオークやオーガも混ざっていて、冒険者にかなり被害が出たらしい。その中にマリナもいた。その場で死亡した訳じゃなかったが王都に連れ帰えられたが受けた傷が深かった。それでギルドからマリナがわしに会いたいと言っていると連絡がありすぐに行った。目の前のマリナは酷い状態で手の施しようがなかった。そんなマリナが小さな声でワシに最後の頼みだと言った。宿に置いてある自分の持ち物を家族に届けてほしいそして伝言を伝えてほしいと。」

「マリナはなんて?」ババが聞いた。

「先に逝ってゴメン。ヒロをお願い。」

「うぅぅぅ・・・・・・」とのどを詰まらせるジジ。

「ワァーァァァァ」と泣くババ。

俺の時間はまだ止まったままだった。

その後、ロランは伝言を伝えてまもなくマリナが息をひきとった事、宿の遺品整理とマリナの火葬をして骨を持って帰って来ている事を話した。

俺はふらふらと表に出た目の前には真っ赤な夕日が見えた。沈み行く夕日を見てようやく俺の時間が動き出した。たまらないほどの寂しさが心を支配した。

「ワァーーーーーーーー!」俺は堤防が決壊するごとく泣き喚いた。

そんな俺をババが後から黙ったまま優しく抱きしめてくれた。

自由奔放で家にあまり居なかったマリナ。俺の父親が誰なのかさえ判らないようなマリナ。だけどたった一人の母親のマリナ。やっぱり大好きだったマリナ。

俺はこの世界でも早くに親を亡くしてしまった。俺の逃れようの無い運命を俺は悲しむ事しか出来なかった。

混乱していて記憶にないが、俺はそのまま泣きつかれて眠ってしまったらしい。

翌日、目覚めて外を見るとロランが荷物を降ろしていた。

どうやらしばらくこの家に居るらしい。

ババに促されるまま朝食を食べ、しばらくボーッとしていると、ロランが話しかけてきた。

「しばらく厄介になるからよろしくな。」

「はい。」俺は疲れていた所為か一言しか返せなかった。

朝食後、ロランが持って帰ってくれたマリナの骨を家の近くに埋めて墓を作った。いつもあっちこっちに飛び回っていたマリナ。二度と会えなくなってようやく家に帰ってきた。


ロランは王都の宮廷内で錬金術師をやっていたそうだ。ジジの話ではかなり優秀な錬金術師と言う事らしい。その所為か宮廷内の魔法師や貴族との軋轢がかなりあったらしい。魔法師は錬金術師を格下の存在として扱うし、貴族は平民出身のロランをあからさまに蔑むらしい。ちょうどその時マリナの事があり、様々なトラブルにうんざりしていたロランは職を辞して全て処分してヤマネに来たらしい。平民のロランは誰にも引き止められなかったらしい。

ロランは生涯を錬金術の研究に費やして来た為にジジとほぼ同じくらいの歳なのに独身で身内も居ない。

宮廷に勤めていただけあってお金は持っている、さらに王都を出る時、錬金術関係の荷物以外全部換金したのでさらに所持金は増えている。そんなにお金を持ってどうすんだろうとひと事ながら心配する。


 ある日ロランがジジに相談していた。どうやら錬金術の研究をここでやりたいらしい。うちの隣に研究室兼自宅を建てて定住したいらしい。ジジは反対する理由もないので了承した。ジジにとっては友人が隣に引っ越してくるのは少しうれしいようだ。

翌日ロランは職人に建築を依頼する為にヤマネの町に行った。お金は持っているので自分の好きなような家にするらしい。ただ豪華さは無く実用性のみの家にするようだ。

建築にはロンクも応援に来ていた。ついでにロトも来ていたので俺とロトは殆ど建築の手伝いはせず一緒に遊んで過した。子供が手伝ってもたかが知れているし、工事現場にいても邪魔になるだけだから、他所に行っているほうが都合が良かったんだろう。

数ヶ月で家は完成した。周りには土地がいっぱいあり、土地利用の許可もすでに了承をもらっているらしい。家の作りは、正面に自宅と裏に研究室。自宅より研究室の方が大きく自宅の3倍はある。研究室の下にはこの辺りでは珍しく大きな地下室がある。錬金術の研究には必要な設備らしい。自宅に台所などは一応作っているが、ロランは料理ができず毎日うちで食事をしている。寝る場所が違うだけで今までとあまり変わらない生活になりそうだ。


マリナの訃報を聞いてからジジババ二人とも以前にも増して元気が無くなって来た。ロランが来て少しは気がまぎれるかと思ったが、友人と肉親では精神に与える影響力が違う。年寄りにとって我が子の死ほど辛いものはないんだろう。

ジジババにはマリナの分までと言えばおかしいが、もっと長生きしてほしいと切に願う。前世の記憶のある俺にとって肉親の死はマリナだけでなく、前の両親や祖母もいるので、死別のつらさは心に強くひびく。

そんな思いとは裏腹に運命は望まぬ方向へと転がって行く。


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