6話・小サナ真実
ドウシテ死ニタイノカ………
理由ハ忘レタ。
デモ、死ヌノニ理由ナンカイラナイ。早ク死ニタイソレダケ………
「おいしっかりしろ!」
倒れていった仲間の身体を揺らす純一。突然だった。突然彼等は倒れた。
何が原因なのか。純一はパニックに陥っていた。
「アキ……アキ!」
燕が明恵の身体を揺らす。明恵は返事も出来ないくらいぐったりして居た。
純一はなんとか落ち着こうとする。落ち着いた純一は何故皆が倒れたのか考える。
間違いなく毒だ。こいつらは何か毒が含まれる食べ物を食べたに違いない。
並ばどうすれば良いのか?毒を体外に出せばいい。思い付く方法は2つ。
1つは吐き出させる。指を喉の奥まで入れれば多分吐くだろう。でも此れで毒が本当に体外に出るかは分からない。
2つ目は胃洗浄。前にドラマで胃洗浄のシーンが写っていたのを思い出す。でもどうやって?あのシーンにはゴム官とお湯があった。だが此処にはそんなもの無い。
無論、有ったとしても出来るはずがない。
吐かせるしかない。そう思った時だ。
『別の方法が有るんだけどな~』
純一の目の前が真っ暗になる。そして、目の前が宇宙空間の様になっていた。
「なんだ?」
何が起こったのか分からない純一。ふと後ろに気配を感じた。純一は後ろを振り返る。そこに居たのは両手を拡げても小さい程の黒いコウモリの翼を生やし尖った八重歯が特徴の女性が居た。女性の格好は何処かハレンチだった。
純一は焦って視線を反らす。
女はニヤニヤして純一に近付いてくる。
『もしかして劣情した?』
ニヤニヤして言ってきた。
「しねーよ。初めて会う人に劣情するなんて変態だろ!」
純一が言い放った言葉に不満を持つ女性。
『酷いなぁ~、君と会うのは二回目だよ』
二回も?純一は記憶を遡る。しかし、こんなエロい格好をした女性との面識は無い。
『むぅ~、覚えないんだぁ』
ガッカリする女性。
『折角右腕あげたのになぁ』
右腕?純一は何か引っ掛かった。
『覚えてないならいいですよーだ』
右腕?右腕………右腕。
そういえばあの時、そう純一が死にかけていた時、何処からか声が聞こえた。そして、目が覚めたら失っていた右腕が紫色の楔型の模様がついている普通とは違う右腕に再生していた。
そうだ、この声あの時聞こえた声に似ている………。
そう思った時、女性はまたニヤニヤした。
『思い出してくれたかな?そうです私が着けました』
誇った様に女性は言った。
「あなたが?」
純一は半信半疑に訊く。
『そうだよ』
自信満々に言う。
「右腕を治してくれたのはありがたいけど何でこうなってんだ!」
『こうって?』
「俺の右腕に何でタトゥーみたいのが着いてるんだよ!」
『あぁ、それね。だってそれないと化け物みたいな腕になるんだもん』
言っている意味が分からない。
『其れよりこんなに無駄話してて良いの?』
純一ははっと気がついた。
「そうだ皆、仲間が毒食って倒れたんだよ。あんた何か知ってるだろ!」
純一が必死に言う。
『勿論知ってるよ。治し方も、毒の原因も。そして、君がどうして他の物より強いのかも』
何でも知ってますとでもいっていた。
そして、人差し指を純一の目の前にだし、ドーンと言う。
すると純一の頭の中に複数の映像が流れる。断片的な写真の映像だ。
純一が苦い木の実を食べた映像、この世界の化け物と戦った映像、赤いさくらんぼの様な木の実を美味しそうに食べる映像と其れを不味いといって不満に言う明恵の映像、同じ木の実しか食べてない燕の映像等様々な映像が頭の中に入り込んだ。
そして
『えいっ!』
といって鋭い刃物の様なもので女性は純一の右腕を斬りつけた。
「って!何すんだ!」
純一は傷口を舐める。すると物凄く苦かった。元々血の味など分からないが今の傷口から流れている血は普通の血では無いことに気がついた。
そして、この味が何かの味に似ていた。
「この味………、あれと同じだ」
そして、純一は1つの仮説にたどり着く。
純一は既に人ではない。純一の身体はこの世界に住む化け物と同じ様になっている。その理由は深くは分からないが原因のひとつとしてはこの右腕であろう。
この右腕をつけられた事により純一は人間ではなくなった。
そして、あのさくらんぼの様な木の実が毒だった。既に人間ばなれしていた純一は味覚もおかしくなっていた。
この世界の化け物が好む味を純一も好むのであろう。そして、あの苦い木の実は、この世界の化け物の血と同じだ。あの実、そして、血には毒を中和する能力が有る。言ってみれば化け物はあの実を食べても死なないよう進化したのであろう。
此れが純一のたてた仮説だ。
『何か近いような遠い様な………』
腑に落ちない言い方をする女性。
『でも毒を中和する実が有るのは正解、でもエデンの実は私達にとって毒じゃないよ。寧ろ力の源だし』
「エデンの実?」
聞いたことはある。モデルはさくらんぼではなくリンゴではないかと思う純一。
『おっと私はこの辺でさよならするかな』
そう言って女性は純一の目の前から姿を消した。
そして、宇宙空間の背景も…………。