4話・危機ト覚醒
前向キニ生キルノハ馬鹿馬鹿シイ
羨マシイ、死ヌトコロガ
明恵と純一は只歩き回る。何処へ向かうか解らないが只歩き続ける。
「おーい、まだ歩くの?」
「任せるって言ったじゃん」
確かに言ったけど………。
純一は少し後悔した。
徐々に坂になっていく道を歩く二人。そう言えば女子とこうして二人で歩くなんて何年ぶりだろう。
そんな事を純一は思っていた。
暗い話にはなるが彼は一度たりとも彼女が出来た事はない。いや正確に言えばいた。居たけど直ぐに別れた。
理由は付き合った彼女がとても不細工だったからだ。付き合う事になって数秒後後悔した。
そして、追い討ちを掛けるように他クラスの男子から、
『お前あの不細工の上村と付き合ってんだろ』
其れが何故か恥ずかしく純一は一週間で別れた。
其れからというものの純一は誰とも付き合わず、いや付き合えず日々を過ごしていた。
彼のモットー、其れは
『可愛い女子は彼氏がいる』
そう思い続け生きている。
「聞いてる!?」
「えっ何が?」
「ちゃんと聞いてよ」
少し機嫌悪く言う明恵。
「ごめん、で何だって」
「何か聞こえない?」
純一は耳を澄ます。確かに何か聞こえる。叫び声だ。何を言っているのか解らないが何か嫌な予感がした。
「行ってみよ」
坂を登る二人。そして、目の前に見えたのは信じられない光景だった。
同じ学舎の仲間が殴りあい、リンチされていたり、女の子が強姦されていたり、まるでこの世の終わりの様な光景だった。
呆然と立ち尽くす二人。そして、背後から純一は鈍器の様な物で後頭部を殴れた。
「ぐあっ!」
倒れる純一。そして、明恵は複数の男子に囲まれる。
「嫌っ!離してっ!!」
制服がどんどんはだけていく明恵。なんとか立とうとする純一。そんな時、上空から何かが落ちてきた。
その地響きによりバランスを崩す明恵を囲っていた男たち。
何が落ちてきたのか、其れはあの化け物だった。
「オオオオオオン」
耳の鼓膜が破れそうな位煩い声をあげる。
皆は耳をふさぐ。
化け物は純一に気が付く。こめかみらへんには血が流れている。
化け物は右腕を振り上げ純一に殴りかかる。純一は間一髪で交わす。そして、走って逃げる。逃げる純一を化け物は追いかけた。
「はぁはぁはぁはぁ」
林を駆け抜ける純一、林の木々を斬ったり折ったりして純一を追いかける化け物。
純一は必死で逃げるが木の根っこに足を引っ掛け前のめりで倒れた。そして、化け物は純一の首を掴み持ち上げた。
息が出来ない純一。何とかしようともがく。段々と意識が薄れる。純一は最後の力を振り絞り右手で化け物の掴んでいる手の指を徐々に開かせ、そして、指を折った。
「オオオオオオン!!」
怯んだ隙に純一は飛び蹴りする。しかし化け物は全く微動だにしない。化け物はキレ、闇雲に純一を攻撃する。純一は背後に回り込み今度は右腕で力一杯殴った。
すると化け物は二メートル程吹き飛んだ。
純一は確信する。間違いない、この右腕は何かがおかしいけど化け物を倒せる。
純一は助走をつけ飛び上がり化け物の顎を殴った。
顎の骨が外れる事は今の状況ではかなりグッドである。
化け物の顔が180度傾いた。頭と顎が逆になっていた。
そして、化け物は倒れた。
その後純一も倒れた。
ふと純一は目を覚ました。何故か生暖かい赤い液体が体にこびりついている。目の前には化け物の無惨な迄の死体が転がっていた。
「なっ何だ!?」
純一は怖くなり逃げ出した。
再び純一はあの残酷な光景を見た広場に居た。広場には誰も居なかった。血だらけの純一ただ一人。
どこか不気味だった。
「誰かっ!誰か居ないのか!!」
純一は叫ぶ。しかし、誰も反応しない。そんな事を思っていた時、声が聞こえた。
「ここ!」
声が聞こえた方を見る。そこに居たのは明恵と明恵よりも小さい女子二人が居た。小さい女子はガタガタ震えていた。
「その人は?」
「解らない。けど酷い目にあったみたい」
よく見ると顔に痣があり下半身裸だった。
「大丈夫か?」
純一が近づくと小さい女子は明恵の後ろに隠れた。
「何ならこれ着ろよ」
純一は着ていた学ランの上着を明恵に渡した。
其れを小さい女子の肩にかけた。
「あの名前は?」
明恵が小さい女子に言う。
「燕………足立 燕」
「燕ちゃんね、アタシは和田明恵。そっちの男は広瀬純一。」
燕は純一の方を見向きもしない。心配そうに見る純一。そんな純一に別の人間が声をかけてきた。
「純一?」
人影は三人だ。
「新城、中山、庄司!?」
「純一生きてたか!」
ぽっちゃりした男新城と顎が若干長い中山、チャラチャラした庄司が駆け寄る。
「無事だったんだな!!」
何故か涙出てくる純一。
「あっ新城達じゃん」
明恵は三人の姿に驚いた。