主任がゆく(千文字お題小説)PART4
お借りしたお題は「寒い日」「雨」「カフェオレ」です。
松子は唐揚げ専門店の主任になり、新店舗の立ち上げのために大阪に長期出張を命じられ、不安を抱えながら、大阪の地に降り立った。
新規開拓部の住之江博己を始めとして、職場がイケメンパラダイスなのも、松子にいい影響を与えた。
更に住之江に連れて行かれた鉄板焼きの店は親友の光子の飲み屋仲間の愛の店だった。
愛は昼間と夜八時までは鉄板焼き屋として店を切り盛りし、それ以降は「スナック愛」のママとして活動しているらしい。
愛が光子に話したらしく、寝るだけの存在になりかけているウイークリーマンションに帰った時、光子から携帯に連絡があった。
「早速イケメンパラダイスらしいわね。愛から聞いたわよ。同僚の住之江さんといい感じだって」
光子は遠回しに探りを入れてくるようなタイプではない。ズバッと核心に迫るやり口だ。
「そんな事ないわよ」
そう言われて、改めて住之江を意識してしまう松子である。
翌朝、松子は寒さで目を覚ました。
夕べはタオルケット一枚でも暑かったのに、今は震えが来るほど部屋の中が冷えている。
ベッドから起き上がってカーテンを少し開けると、外は雨だった。
(梅雨だもんね、今は)
気温の激しい変化に納得した松子は時計を見て出かける準備を始めた。
朝食は帰りがけにコンビニで買った温めるだけで食べられる惣菜とレンジでチンするだけのご飯、そしてお湯を注ぐだけでできる味噌汁。
(塩分取り過ぎ街道まっしぐらね)
不健康な食生活とはおさらばしたはずの松子であったが、生活環境の変化がまた彼女をものぐさにしてしまいそうだ。
マンションを出た松子は野菜を全く摂らなかった事に気づき、コンビニで一日分の野菜が入っていると書かれている野菜ジュースを買い、飲み干した。
そしてついでに家から持ってきた折り畳み傘にダサさを感じたので、ビニール傘を購入した。
「寒い……」
コンビニから出ると、激しくなった雨足のせいで気温は更に下がっていた。
(温かい飲み物が欲しいな)
コンビニに戻ろうかと思ったが、あまり時間に余裕がないのでそのまま店に向かった。
「おはようございます、足立さん。どうぞ」
店に先に来ていた住之江が温かいカフェオレを差し出した。
彼も同じものを既に飲んでいる。
「あ、ありがとうございます」
松子はその瞬間、完全に住之江に落とされてしまった。
住之江にはそんなつもりはないかも知れないが。
(今度こそ、自分で前に進もう)
松子は心に誓った。
さて、今度こそ松子は恋を成就できるのでしょうか?