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戻りたい日常

カタカタという音だけが鳴り響く薄暗い空間、全てのカーテンを締めきった自分の部屋に置かれているソファーに座り込んでコントローラーを操っているこの俺、長谷川鈴華は世間で言う引きこもりだ。


高校には母親が進学を勧めてきたのでそれなりに勉強して一応入学したのはいいが3日と持たずに学校には行かなくなってしまった。


薄暗い部屋の中でも唯一光を発しているテレビ画面には最近発売されたばかりの対戦ゲームが映し出されている。


その画面の中央にはYouWinの文字が堂々と掲げられていた。


「はぁ〜〜こんなヌルいゲームやってらんないぜ」


燐華はコントローラーを放り投げると座っているソファに深くもたれかかった。


先ほどの対戦相手からは再戦を望むメッセージが届いているがこの相手と闘うのはこれが初めてではない。


この格闘ゲーム内ではかなり有名なプレイヤーらしく闘ってみるとあまりに弱すぎて拍子抜けし止めようとしたら再戦のメッセージがきてというのをさっきからずっと繰り返しているのだ。


どのゲームでもそうだがこういう連中は無駄にプライドだけは高いらしい。


なのでわざと勝ちを譲ってやると手加減無用的な事をほざきやがるしこれだから人は嫌いなんだ。


ソファから身を起こした燐華は何通も届いていたメッセージを読むことにした。


一通目を読むと『再戦お願いします』なのに四通目になると『逃げるんですか?なるほど、勝ち逃げですね』と挑発的な文面に変わっていた。


「上等じゃねぇか雑魚が。ボコボコにしてやるよ」


こんな安っぽい挑発に乗ってしまう鈴華もどうかと思うがどうせすることもないので対戦を受けてやることにした。


最終的に六回ほど対戦したが一度も負けることはなく最後には再戦のメッセージは来なくなった。


なんだよ・・・やるなら最後までやれってんだよ


「って、これじゃまるで俺がやって欲しかったみたいじゃねぇか」


呟きながらソファから立ち上がると燐華は部屋の扉に手をかけた。


ここから出るのはいつも食事かトイレの時だけだな・・・


今さら考えることでもないかと思考する事をやめ食事するために扉を引いた


部屋を出て階段を降りた先にあるリビングに入ると丁度ご飯の準備をしている妹の鈴音とバッタリ出くわした。


否、出くわしてしまった。


リビングに来て早々どうやってここから離れようか考えていると鈴音は話かけて来ないのでこれは気付いてないのでは、と思い音を立てぬようにそおぅっとリビングを出ていこうとすると―――


「兄さんは目玉焼き半熟でいいですよね」

「!?お、おう。よろしく頼むよ」


ですよねーと心の中で呟きながらトボトボと歩きソファに腰かけるとテーブルの上にあるリモコンでテレビをかけた。


この何気なくかけたテレビで俺の運命が大きく変化するとも知らずに


何気なくかけたテレビでは今話題のニュースが流れていた。


「次のニュースは今話題沸騰中のVDG通称バーチャル・ダイブ・ゲートをなんと無料で利用出来ちゃうという大事件です!」

「マジかよ!?いつだ!いつ利用出来るんだ!」


興奮の余り口に出して叫んでいた俺はアナウンサーの声を一字一句聞き漏らすまいと慌ててリモコンの音量を上げまくった


「この事件が発覚したのはVDG開発者のブログでの一言でした。『今週の土曜日にVDGのβテストを行いますので参加希望の方はこちらのアドレスにメールで連絡お願いします。尚定員は一万人となっておりますのでご当選になった方にはVDGで転送される先の大まかな説明が書かれたメールとテストで使用するVDGをお送り致します』とのことでした。いやー凄く気になりますね!実は私も応募しているので皆様もご一緒に応募してみませんか?続いて次のニュースです・・・・・」

「もう、兄さん。テレビの音が大きいですよ。もう少し下げても聞こえるでしょう?」

「あ、あぁ。悪い」


兄さんはまだまだ若いんですからとぶつぶつ言いながらテレビの音量を下げて出来上がった朝食をテーブルに並べている鈴音を俺はじーっと見つめた。


「・・・・・」

「・・・ど、どうしたんですか?ずっと私のことなんか見て」


鈴華の視線に堪えかねた鈴音は少し動揺しながら尋ねてきた。


鈴音に尋ねられると鈴華はおもむろに鈴音の肩より少し伸びた黒髪を撫で始めた。


「!!、わぁ、わぁぁあぁぁぁ!!一体お兄ちゃんに何があったの!?」

「いや、何か前あった時と髪型が違うなと思ってな」


いきなり髪を撫でられビクンッと小さく跳ねた鈴音は髪型が変わった事を指摘されると急に下を俯きながら髪を弄り始めた。


心なしか鈴音の頬が赤くなっているようにも見える。


「どう、かな?いつもなら切ってた長さをそのままにして伸ばしてみたんだけど・・・・やっぱり変だよね・・・」

「そうか?俺は今の髪型の方が好きだな。どっちかと言うと髪は長めの方が好きだし」

「本当!ふふっそっかぁ、じゃあ思いきってこのまま伸ばしてみようかな!」


鈴音は今にも歌でも歌いだしそうなくらいにテンションが上がったがすぐに自分の悪い癖が出ているのに気づくと咳払い一つで元の上品な物腰に戻った。


今日の朝食は純和風らしく焼き魚に味噌汁、ほうれん草のお浸しに白米といった何とも健康的な感じにまとめられていた。


鈴音への感謝の意味も込め鈴華は両手を胸の辺りで合わせた。


それと全く同時に鈴音も手を合わせたのを確認するといつも通りの食事を開始した。


「いただきます」

「いただきます」


今回はさらに短くなってしまった・・・

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