表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キノは〜ふ!  作者: 七月 夏喜
5/9

第5話 キノとマコと如月と海原と最大の危機

 その日は、朝から天候不順だった。雨が降りそうで、降らない曇天模様。薄暗い日だ。

 あの日以来、千秋とは何回か会話を交わしたが、秘密は守られている。マコも加わって三人で話していると、周囲からは不思議な目で見られていた。

「最近、本田さんって、花宗院さんと鈴美麗さんとよく話しているわね。あんなに笑う人だったっけ」

「オタクでしょ、本田さん」

「なんか、委員長も関係しているらしいよ」

「なに、いいとこどり?」

 世の中の囁きは、至るところにある。

「この間、屋上で鈴美麗さんと一緒にいたんだって。睦、ちょっと聞いてる? 睦!」 

 石井は会話の中におらず、キノをじっと見ていた。

「あっ、はいはい。何だっけ?」

「もう、聞いてないの?」

 山本は苛ついた声を上げる。

「何見てんのよ」

 身を乗り出して、石井の視線の先を確かめた。

「なっ、何でもない、何でもない」

 その向きを打ち消すかのように、手が前を遮る。石井はもう一度、チラリとキノを見て、ため息を漏らした。

「まさか、あの即売会にキノちゃんがいたなんて。しかもあんな恰好で……」

 石井の頬が赤くなる。

「何? 即売会って?」

「へ? なっ、何でもないって!」

「何かおかしいなぁ、睦。何で顔が赤いのよ。何か隠しているわね」

 山本は突っ込みを入れる。

「本当に何でもないって」

 目が泳いでいる石井がいた。

「私って、どうしたのかな?」


 海原はじっと席に座っていた。彼にとって、即売会での人気は頭を悩ますものだった。

「一体、何だったんだ。あの輩は。肉厚の男の人に、追いかけられていた。またマッチョな人にもだ。……なぜだ。僕は、男に好かれているのか?」

 海原は頭を激しく振った。今考えていることを振り払おうとしたのだ。思わず立ち上がる。その唐突な行動に、近くの女子が驚いて椅子から落ちた。彼はそのまま教室を出る。怒りにも似た、憤りを感じていた。

 海原は廊下をもの凄いスピードで歩く。今にも走り出しそうだ。額に汗を滲ませ、苦悩に満ちたその形相は、前から歩いて来る何人も寄せ付けない。皆が一様に避けていく。

「否! 僕は好きではない! 好きであるはずがない!」

 廊下の突き当たりまで、ズンズン突き進む。

「おい! 海原!」

 真下が呼び止めた。海原は立ち止まる。

「今日の部活は、中止だ」

「何故ですか?」

「すまんな、部員が揃わないのでな」

 そしてブチ当たる。ドンという音が響いた。真下が回転しながら、ひっくり返る。

「かっ、海原ぁーー!」


「この体は、闘いのためにあるはずべきなのだ。極限にまで鍛えぬかれた肉体は、その欲する意思に正確に呼応しなければならない。ここに美があるのだ」

 海原は立ち止まった。

「だのに、なぜ故に男同士で組み合わない。なぜ闘わない。そんな男は真の男ではない。闘ってこそ、男だ。真の武道家は真っ直ぐな道上に、迷いなく歩いていく。何が起ころうとも、己の信念を貫く。最終的には、己との対自我対決なのだ。華などはいらないのだ」

 拳を力強く握りしめる。

「しかし、それだけでいいのか。愛するものなくして、本当の守るべきものがあるのだろうか。自分だけよければいいのか」

 海原は止まったまま、動かない。

「違う……愛すべきもののために、この肉体を捧げる……」

 顔が真っ赤になっていた。海原はまだ動かない。彼の拳だけが下がっていった。


「何なの、あの人?」

「怖い」

「変態?」

 女子トイレの前は騒然となっていた。

「やはり、この体の全ても見られても許せる人は、生涯を共にすることを決めた人だ。そうでなければならない。そう、愛があって成り立つことなのだ!」

 海原は下がった拳を、もう一度振り挙げた。

「この拳に誓う。自分は不埒な気持ちではない。だから、男は愛せない!」

 海原は叫んだ。

「きゃあ!」

 トイレから出てきた山本が驚いて叫ぶ。海原は、我に返った。途端に、顔中冷や汗が吹き出す。

「海原! あんたこんなとこで、何叫んでるのよ!」

「うっ!」

 海原は、人が集まりだした廊下に佇むしかなかった。

「あんたって、やっぱり変態だわ!」

 男は何も言えず、呆然としている。

「ぼっ、僕は」

 額から汗が流れ落ちた。

「我を忘れてしまう癖が、変なところで出てしまった」

「何が、男は愛せないよ! あんた男でしょ! ド変態!」

「むむむ……」

「海原くん!」

 半場放心状態の海原は、後ろを振り向く。キノが微笑をしながら、手を振っていた。しなやかな細い指が、その場の悪い空気を一掃するかのように舞う。長い髪を靡かせて、キノが近づいて来た。澄んだ瞳は海原を見ている。

「ああ、キノさん……」

 海原の顔が、神にでも救われたかのように晴れやかになった。

「やはり、天使だ」

「鈴美麗さん?」

 山本は不思議な顔をする。

「なぜよ、鈴美麗さんがあんたなんかを、相手するの?」

 彼女は呟いて、海原を見た。

「私は、わかるような気がする」

「むっ、睦?」

 隣に石井が立っていた。キノは海原の側まで真っ直ぐに歩いて来る。

「ほらほら海原くん。頭の中の考えていることが煮詰まると、すぐ口に出ちゃうんだよね。全くバカなんだから。って言うか単純」

 キノはクスクス笑った。その笑顔は、周囲さえも和みを与える。キノは海原の手を引っ張って行く。

「鈴美麗さん!」

 石井は山本の肩を持った。

「ダメよ。海原のこと、もうそのくらいで許したら」

「ちょっと、睦。あんたどうかしているわ。海原くんに気でもあるの?」

「海原? 彼には別に、何もないわよ」

 石井の目は、最後までキノを追っていた。

「はあ?」


 キノは海原の前を進みながら、廊下を歩く。海原はその後ろ姿を見ながら赤面していた。通り過ぎる者が幾度となく振り返ったり、立ち止まったりしている。


「キノさんの手はこんなにも、小さい。腕も体も脚も細く華奢だ。自分はこんな小さな人に、投げ飛ばされた。なのに、これほど大きく見えるのは何故だろうか。部室の扉を破壊する力、フェイルさんの一番弟子を投げ飛ばした実力。これまで耐え抜いてきた稽古とは、どんなものだったのだろうか。自分が今までやってきたことは足元にも到底及ばない。ただ通じているものは、真の武道を歩んできたということだ。何かを追い求めていく真っ直ぐな姿勢、何事にも動じない心」


 海原はその細い手を握り返した。


「自分もキノさんのように、強い武道家になりたい。もっと強くなって、あの日のあの人のようになりたい」


 キノが急に立ち止まる。海原は思わず、ぶつかってしまった。

「だから、聞こえてるぞ」

 キノは振り向く。眉間に皺を寄せた。

「う?」

「おまえの独り言が、聞こえてるって。声に出ているんだ」

「いっ、いつの間に!」

 海原は、苦悩する。

「あほか。歩きだした時から、ずっとだよ」

 キノは呆れながら、ため息をついた。

「それに、手を離せ。痛いから」

 海原の手掌が、キノの手を締め付けている。

「お!」

 素早く、離すも未練が残っていた。

「おまえの言いたいことは、わかったよ」

 キノは笑った。

「キノさん、僕……」

「海原、今度勝負する?」

 挑戦的で、悪戯な上目遣いをする。

「うっ?」

 海原は目を見開き、そして赤面した。額の汗の量が増える。

「おっ、押ス」

 小さく、言葉が返ってきた。



「ちょっと、君」

 校門から少し出たところに、二人の男がいた。ニコニコしながら寄ってくる。青い髪と金髪の男だった。金髪は鼻と口にピアスをしている。ガムを噛んでいる音していた。

「なっ、何ですか?」

 呼び止められた男子生徒は、二人を見て少し引く。

「こんな子、探してんだけれど、知ってる?」

 青い髪の男が携帯を取り出した。生徒は差し出された携帯電話の画像を覗き込む。

 オレンジ色の髪にアンテナ。ピンク衣装の美少女戦士。

「可愛いー」

「でしょ、ちょっと探してんだけれど」

「へえ」

「どっかで見たことない?」

 青い髪の男は、髪をかきあげた。

「コスプレしてるんでしょ。ちょっと、わからないよ」

 金髪の男が今度は尋ねる。

「クリーム色の髪の長い男か女の子も探してるんだけど? 結構、綺麗な顔してるんだよね」

「あっ、そんな様な人だったらいるよ」

「ホント、君の学校?」

 金髪は口元が吊り上がる。ポケット中から金属音がした。

「その人かどうかはわかんないけど……」

「ちょっと顔だけ見ればわかるから」

「そう。まだいると思うけど…」

「呼んできてくれない?」

 青い髪は言う。

「無理無理。俺からは声掛けられないよ」

 男子学生は狼狽えた。

「どうして?」

「だって、先輩だし。とても近寄れない」

 困った顔をする。

「じゃあ、場所さえ教えてもらえれば、見てくるよ」

「多分、柔道部にいると思う」

「柔道部? 男かいその子?」

 金髪は確認する。

「いや、違うよ。女子。とても綺麗な先輩」

 男子学生は照れながら答えた。

「強い?」

「もう、とんでもなく強いよ。うちの学校の中で、かなう男なんてあんまりいないかも」

「へぇ」

 青い髪の男は、校内の部室がある方向を睨む。

「誰かいるかな? 部室」

「さあ。でも学校内は部外者は入れないよ。それに、あんたたち一体、誰?」

 男子学生は、今更ながら不審げな顔で言う。

「じゃあ、ちょとだけ上着だけ貸してよ」

 男はほくそ笑んで、ポケットからナイフを取り出し、突きつけた。

 

「あら、あら。キノったら、海原くんと手を繋いで、楽しそう」

 マコは廊下を二人で歩く様を見て、呟いた。

「花宗院さん」

 背中から声がする。

「はい?」

「ちょっと、いい」

 石井だった。

「何、石井さん?」

「あの……、鈴美麗さんのことなんだけど」

「キノがどうかした?」

「その……」

 石井は、なかなか言おうとしない。

「どうかしたの?」

 マコは不思議そうな顔をした。


 まさか、秘密が漏れた?


「海原のこと、好きなのかしら」

「あっ、ああ、海原くん」

 ちょっと考え込むが、すぐに諦める。

「さあ、私にはさっぱり」


 だって男のキノが、海原くんにどうゆう気持ちで接しているかなんて、わかるはずもない。


「愛情より、友情かしら」

 マコは呟いた。

「友情? 好きとかはない?」

「何故そんなこと、聞くの? さっき手を繋いでたから?」

 マコは石井に聞き返す。

「いや、別に何もない、ない」

「ふーん」

 焦る彼女を見ながら、考え込んだ。

「キノの方が気になるのね?」

「ち、違うよ、何でもないない。ないから、忘れて、ねっ」

 大きく両手を振る。

「ふーん」

 石井は、走って教室に入っていった。

「女の子の中の男の子か。……案外、もてるのねぇ。鈴美麗キノさんは」

 マコは困まり顔で、ひとりゴチした。


「誰もいないか……」

 柔道部を覗いて、青い髪の男は言った。

「ちょっと、ぶらつくか」

 男は廊下をうろつき出す。


「千秋。あの時の写真出来たぞ」

 如月は、廊下にいた千秋に声を掛けた。近くの女子が二人を振り返って、不審そうな顔をする。

「見せて、見せて」

 千秋は嬉しそうに手に取った。袋から写真を取り出す。一枚を眺めながら、ため息をついた。

「いい王子たちねぇ」

 彼女はじっくり眺める。満足気な顔だ。

「キノちゃん、いいわあ。絶対いい!」

 そんな千秋の光景を、如月は見つめていた。ふと、メガネが気を取られる。

「俺はどうだ?」

 如月の顔が、千秋の近くに来る。

「えっ、……いっ、いいよ」

 千秋は横目で見た。

「そっ、そりゃ、フレンスだもん」

 慌てて写真の方を向き、頬を赤らめる。

「王子は……、ひとりだけには、なれないかな」

 如月は真顔で言った。千秋は写真に見入っている。

「無理無理。やっぱり『スカイスターの王子たち』は二人で一つなんだから、絶対ペアじゃなくちゃ! ペア!」

 千秋は、拳を振り挙げた。的外れな回答に、如月の動きが止まる。

「ま……、いいか」

 如月は苦笑した。

「ねぇ、これ。マコさんもいい感じ」

 オレンジ色の髪にアンテナ、ピンクの衣装の美少女戦士が微笑んでいる。

「花宗院といい、鈴美麗といい……。不思議だ、彼女らは」

 如月は、二枚の写真を手に取った。

「しかし、千秋。今でも思うが、よく二人がこんなこと了解したな?」

「まっ、色々と。あってね。でも最終的には、しっかり口説き落としたわ」

 ニンマリとする。

「おまえのことだから、自己心的に……な」

「何か言った?」

 千秋はメガネのずれを直した。

「いや。生徒会の役員会があるから、もう行くよ」

 そう言うと如月は笑いながら、歩いて行く。その後ろ姿を千秋は見ていた。


「あっ!」

 マコの写真が手から離れた。男の前に舞い落ちる。彼はそれを拾い上げた。

「すっ、すみません、それ私のです」

 千秋は男のところまで行った。

「へぇ、可愛い子だね、君の友達?」

 彼は写真を渡す。

「えっ、ええ……」

「この間の即売会に来てたでしょ?」

「え? はっ、はい。あなたも来てたの?」

 千秋は嬉しくなった。

「そうそう、俺も行ってたよ。君たちだったか。この子、結構目立ってたもんね」

 男は青い髪をかき上げる。

「私のクラスの花宗院さんって、いう人よ」

「へえ、花宗院さんと言うの。そうか……」

 青い髪の男は、顎に手を当てた。

「多分、教室にいるんじゃないかな」

 千秋はその方向を見る。

「いや、いきなり知らない俺が呼んだら、引くでしょ。どんな子なのか教えてくれない?」

「そうよね。じゃあ、ついてきて」

 千秋は手招きする。

「そうそう、顔だけわかればいいんだ……」

 男の目付きが変わった。


「相変わらず、誰も練習してないな」

 キノはガランとした、道場を見て言った。

 しかしこの間と違って、整理整頓してある。手入れが行き届いている。ものに対する感謝の精神も、稽古修業の一つと教えられてきた。

「今日は先輩達、用事があるようで、休みだそうです」

「ふん」

 キノは返事する。

 一礼して道場に入り、上座を前に正座した。両手を鼠徑部に置き、胸一杯に大きく深呼吸する。海原はキノのやや後方に正座した。両者は目を閉じる。


 精神集中。


 全ての感覚を研ぎ澄ます。凛とした空気が室内に張りつめられる。

 雑音が消えていく。何も考えない。

 精神を落ち着かせていく。時計の音も聞こえなくなっていった。


 どのくらい時間が経過したのか、ゆっくりとキノは目を開いた。後ろの海原もまだ一緒にいる。


「で、試合します?」

 キノは立ち上がった。一礼する。

「本気で言ってる?」

 キノの精神は落ち着いていた。海原の方を振り返る。空気の壁。

「うっ!」

 海原は動けない。頭を動かすことさえ出来ない。

「おおお!」

 声も出せない。

「ダメ。今、僕、強いから」


 キノの視線が海原から離れた途端、その力は解けた。海原は正座したまま、真横に倒れる。

「さすがです。キノさん」

「行こう、海原」

 キノは手を差しだした。もう壁はない。海原は見上げる。その時、扉が開いた。真下が入ってくる。

「おっ! 海原、鈴美麗いたのか。なんだ二人で乱取りでもやっていたか?」

「なっ、なにを!」

 海原がキノの手を握った途端、強い風が道場に吹き込んだ。

「う!」

 キノのスカートが大きく舞い上がる。

「きゃっ!」

「こっ、こんな近くで……。さすがです」

 海原の鼻から血が吹き出す。

「こっ、このぉ!」

 大きく蹴りを入れるキノ。真下も同じようにのされたのは、とんだとばっちりだった。


「へえ、あの子ね……。確かに可愛い子だ」

 生徒会室の廊下の窓から、男はじっとマコを見ていた。

「ところで、あなた何組?」

 男は驚いた顔をする。

「そのラインの色は一年生だと思うけど」

 千秋は制服を見て、不思議そうに尋ねた。

「ごめん、用事思い出した。もう帰るよ。じゃあ」

 男は慌てて、走り出す。

「ちょ、ちょっと!」

 千秋は呼び止めたが、そのまま行ってしまった。

「誰?」

「わあ!」

 キノがすぐ後ろにいた。微笑む。

「いや、マコさんのファンがいたので、案内してたの」

「マコの?」

「一年生よ、もう年下からも人気ですね。この間の会場で、見かけたんですって」

 千秋は言った。

「ああ、コスプレの……。うー」

 キノは唸る。

「そう言えば、マコさんが、今日の生徒会の集まり遅くなるんだって、言ってたよ」

 メガネを掛け直す。

「じゃあ、待ってるかな」

 キノは何処ともなく、教室の外を見た。

「キノちゃん、この前のコスプレの写真見る?」

 手に持っていた袋から、取り出す。キノと如月のツーショットが見えた。

「げっ! いいよ、そんなもの」

 キノの引き吊った顔がある。

「このマコさん、もの凄く可愛いいんだけどぉ」

 ピクリと体が反応した。素早く向き直って、かぶりつく。

「見る! 見せて!」

 手を出すキノ。

「あははは。どうしようかなぁ」

 千秋はマコの写真を片手に持って、キノに取られまいと振り回す。

「バカ! 千秋! 振り回すな! 見せろ!」

 キノも掴もうと負けじと、手を振り回す。

「この! この!」

「あはははは! おもしろーい!」

「千秋! いい加減にしろ! ぶっとばすぞ!」

 千秋は、急にキノの耳元に近づく。

「キノちゃん、本当に好きなんだね。マコさんのこと」

「はう……」

 キノの動きが止まった。頭から湯気が出そうな程、赤面している。

「おもしろすぎ」

「千秋ぃぃ、くれよぉぉ」

 手を伸ばすキノがいた。


「あれ? 鈴美麗何してるんだ?」

 如月が背中から声を掛けてきた。キノはいつもの癖で額を机に付けてじっとしていた。

「マコは?」

 如月の背後を見回す。

「いや、今日は早い時間に出ていったぞ。お前と一緒だと思っていたが」

「えっ?」

 キノは如月を見る。机と接触していた、額が赤い。

「今まで見ていないのか?」

「うん」

 キノは立ち上がった。マコの席を見ると、まだ鞄がある。

「どうしたんだろう、何処に行ってんだ?」

「鈴美麗、他に心当たりはないのか?」

 如月はマコの机に行く。

「特には……。僕は何も聞いてないし。そういえば、今日一年がここにマコの顔を見に来たって、千秋が言ってた」

「どんな奴?」

「あのコスプレの会場に来てたって」

「ちょっと待て」

 如月は携帯を取り出し、千秋に掛けているようだった。

「おまえ、千秋の携帯の番号知ってるのか?」

「いいから」

 如月は、机に腰掛けながら、今日来た一年の男子の様子を聞き出している。

「青い髪の男子? 長髪? そいつが来たんだな。マコさんのコスプレ写真。そうか……。うん、わかってる」

「如月! 青い髪で、長髪って!」

 キノは思わず叫んだ。

「……おそらく君があのコスプレ会場で、倒した奴だ」

「そいつらにマコは誘拐された!?」

「ここまで、捜し当てたということは、そうかもしれん」

 キノは机を叩いた。拳が震えている。

「マコ……」

 キノは立ち尽くす。如月はその不安気な顔をじっと見ていた。

「あいつの時も、千秋がこんな顔をして……」

「何処にいるんだ、マコ」


 突然、キノの携帯の着信音が鳴る。非着信通知。急いで取り上げた。

『……きっ、キノ……』

 か細い、今にも途切れそうな声。キノの心臓が大きく鼓動を打つ。

「まっ、マコ! マコなのか!」

「鈴美麗! マコさんか!」

 如月も駆け寄る。

『よぉー。キノさんかね』

 男の声が聞こえてきた。

「貴様! マコをさらったのか!」

 キノは携帯を握りしめる。

『この間、おまえに邪魔されたからな。続きを撮影しようと思ってな。わざわざこっちに、来てもらったんだよ』

 男は笑って言った。

「マコに指一本触れてみろ、もう一回ぶっとばす!」

『はははは。電話で言われてもなぁ』

「貴様!」

『それに……。ここにいる連中、写真撮るだけじゃ、満足しねぇみたいだし』

「なっ!!」

 電話の後ろで数人の男の笑い声が聞こえる。

「今何処にいる!」

『ひとりで来い。女だからって、助っ人頼むんじゃねえぞ。えー、キノちゃん。おまえ強いんだよな?』

 噛みしめている歯が、ぎりぎりと鳴る。こめかみに血管が浮く。

「……もう一度、マコに代われ」

 しばらく間があった後、マコの声が聞こえてきた。

『……キノ、ダメ……、来ちゃダメ……』

「マコ、心配しないで、必ず助けに行くから」

 キノは拳を更に強く握りしめる。

「マコ」

『来ちゃダメよ! キノ!』

 その言葉が最後で、男の声がする。

「……何処だ」

『早く来いよ。俺はなぁ、紳士だから、こいつらを止めてるんだけど、出来ねえこともあるからな』

 男は苦笑する。

「何処だ!」


「鈴美麗! マコさんは何処だ! 俺も行くぞ!」

「如月。おまえは、ついて来るな」

「なんだと!」

 如月の動きが止まった。キノに寄っていく。

「鈴美麗! 君は何を言っているのか!」

 両肩を掴まれた。キノは如月を見る。

「おまえ、弱いから」

「なに!?」

 キノは視線を反らす。如月はなおも見つめていた。

「足手まといだ……」

「!」

 緩んだ如月の手を、キノは振りほどく。

「そうか、そうかもしれん」

 キノは振り返らない。立ち尽くしている。

「君は強い、これは嘘じゃない。本当にそう思っている」

 キノは歩き出す。

「……仲間だと思っていたよ」

 足が止まる。

「千秋があんなに楽しそうに笑っている姿は、今まで見たことなかった」

「……そんなこと、関係ない」

「あいつはオタクだ。今まで散々酷い事を言われたし、いじめにもあっていた。そんなあいつを、君やマコさんは、受け入れてくれた」

 歩き出す。

「感謝しているんだ。あいつに笑顔を与えてくれたことを」

 キノは振り返った。細長い髪が宙を舞う。

「あいつや俺の仲間に何かあったら、なんとかして助けたいと思うのは、当たり前じゃないか!」

 如月は叫んだ。

「鈴美麗! 俺らは仲間じゃないのか!」

「なっ、仲間なんかじゃない!」

 聞き入れない顔をして目を閉じる。

「鈴美麗キノ! 俺は君を見損なったぞ! 君の武道の精神は、それでいいのか!」

「おまえに武道の何がわかる!」

 キノの空気の壁が、如月を襲う。その場から飛ばされるが、如月はすぐに起き上がった。

「俺がそんなに信用ないか!」

 歩み寄る。

「おまえなんて、ちゃらちゃらしているだけだ!」

 再び壁に押し戻されて、如月は転倒した。

「なんだと!」

 もう一度歩み寄る。

「僕にもう構うな! ひとりで十分だ!」

 再三壁に如月は当たって、転がる。キノの手が震えていた。

「本気で言っているのか……」

 勢いが止まった。今度は立ち上がらない。座ったまま、如月は訊ねた。

「……本気だ」

 キノは呟く。拳がずっと震えていた。

「君は……」

 如月はキノから視線を外す。

「もういい! 勝手にしろ! 俺はどうなっても知らんぞ!」

 キノは後ろを向き、歩き出す。

「如月……、おまえは僕たちよりも、もっと千秋のことを考えてやれ」

 キノはそのまま、教室を走って出ていった。ペタリと如月は床に尻餅をつく。


10

 彼のポケットから携帯の着信音が聞こえる。力なさげに取り出した。

『邦彦! マコさん、見つかった?』

 声が上擦っている。

「……いたのはいたが」

『本当! 無事なの!』

「いや、あいつらに誘拐された」

『ええっ!?』

 安堵感から一転し、驚きの声が響く。

『わっ、私が教えなかったら……、あの写真を見せなかったら……。私が……』

「千秋!」

 如月は、千秋の言葉を制止させた。

「おまえの……、せいじゃないよ」

 しばし沈黙が続く。

『……それで、どうしたの?』

 恐れるように、小さい声で千秋は言った。

「う、ん。……鈴美麗が、助けに行った」

『きっ、キノちゃんが!? ひとりで?』

「千秋……、俺らはあいつの友達でも、仲間でも何でもないらしい」

 少し笑いながら、力なく如月は言う。

『答えて! キノちゃんだけ行ったのね!』

 電話の向こう側で、千秋は叫んだ。

「……俺にはついてくるなと」

『ねえ! キノちゃんだけ行かせたの!』

「……そうさ」

『バカ!!』

 如月はその言葉で我に返った。

『……キノちゃんは、あの子はそう言うわ』

「……」

『友達だから、仲間だからよ!』

「え?」

『あなたを絶対、連れていかない……』

 千秋の声が詰まる。

「なぜ、そんな……」

『……あんなに優しいキノちゃんよ』

 千秋は泣いていた。電話でもはっきりわかる。

『あなたや私を、巻き込むはずないじゃないの!』

 如月は目を見開いた。キノが走り去った、扉を見返す。

『キノちゃんは、人の痛みをわかる子』

 如月は教室から出て、廊下を走り出した。

「……鈴美麗は、自分のことよりも、おまえのことを考えろって言った」

 如月は走る。校門を出た。誰もいない。

「くそ!」

 校門を蹴る。

『キノちゃんがそう言ったなら……。じゃあ、邦彦、私のことを考えて』

「千秋……」

『私の大切な、友達……』

 立ち止まる如月。

『邦彦、お願い……』

 声が震えている。

『私の大切な友達のキノちゃんと、マコさんを助けて!』

 泣き崩れる千秋の声が、如月の耳に響いた。


 時間が経てば経つほど、如月は焦っていた。

「如月くん、何をそんなに急いでいるんですか?」

「海原!」

 海原は、真下と一緒に部室から、歩いて来ている。顔が赤くなっている如月は、かぶり寄った。

「おまえも協力してくれ!」

「なっ、何ですか! 急に!?」

 海原はその勢いに引く。それもそのはず、学校内では、美男子でクールな印象の彼が、あまりにも取り乱していたからだ。

「おいおい、海原んとこの委員長だろ。何焦ってんの?」

 あはあはと真下は笑う。

「すっ、鈴美麗と花宗院が危ない!」

 海原と真下の体が止まる。

「危ない?」

 海原は、如月の顔に近づいた。

「どういう、ことっスか……」


11

 そこは、廃墟と化した倉庫だった。もう何年もそのままの状態で、使われていない。当時に何がここにあったのかわからないが、木板や針金、鉄棒など散乱していた。辺り中が薄汚れていて、柱は錆びついている。薄暗い中にある一カ所だけ、明かりが点っていた。明かりのある倉庫の一番奥の部屋は、男たちの臭いが充満している。汚い笑い声は、騒々しく耳障りな雑音にしか聞こえなかった。マコの声は聞こえない。

 キノは勢いよく、扉を開ける。扉はガタがきていたらしく、蝶番が外れて横に飛んでいった。

「おっ、ナイトのご到着だ」

 青い髪の男は扉が開く否や言った。

「待ちこがれたぜ。どんな強者だ!」

 室内にいた男たちは、一斉にキノに注目する。

「十三人か……」

 キノは人数を確認し、呟く。

「ひぅー、女だぜ! 本当に女だ!」

「おおっ! すげぇ美人じゃねえか! うまそう!」

「こんな美少女、やっちゃっていいのか!」

 男たちの言葉は、容赦なくキノに浴びせられる。しかしキノは怯まない。気にせず、中を進んでいく。途中まで進んだ時、ひとりの男が行く手を阻んだ。

「よう、あの子と遊ぶより、俺たちと遊ばない?」

 五人の男たちが、キノを取り囲む。

「あいつら、バカが」

 青い髪の男は、舌打ちした。

「うひょー、この髪、細くて長げぇ。しかも柔らか」

「いい匂い」

 男たちは、キノの髪を持ち上げて、ぱらぱらと落としたり、匂いを嗅いだりしていた。違う男は、体のあちこちに鼻を近づけている者もいる。

「体も華奢で、細いなぁ。スタイルいい! 俺、惚れちゃいそう!」

「制服でスカート! 萌え萌えじゃん!」

「キノちゃん、大好き!」

 男たちはすすり笑いする。

「……どけ」

「はあ?」

 ひとりの男はきょとんとする。

「いいねぇ、勇ましいお姿も、最高!」

 一歩進む。男は前を詰めた。

「どけ。雑魚には用はない」

「おいおい、可愛い子が、そんな汚い言葉使っちゃだめだよ」

 キノは顔を上げ、男を凝視する。重い空気が男の顔に当たった。思わず仰け反る。

「なっ、なんだ!」

 と発した言葉が最後だった。男の顔にキノの靴のつま先がめり込む。先ほどまでいじられていた、細い髪が空気の流れに沿うように舞う。

「うびゃ!!」

 更に後方の男も、回し蹴りで踵が脇腹に突き刺さり、吹っ飛ぶ。また二人は転がされた挙げ句に、足全体で腹部を蹴られた。

「おびゅ!」

 男たちの悲痛な声が聞こえ、途絶える。舞い上がったキノの長い髪が、ようやく元の位置に戻ってきた。

 男たちの声が消え、辺りは静かになる。キノを取り囲んでいた輪は、崩れた。腰を抜かして、尻餅をつく輩もいる。

「あーあ、本当にやっちまいやがった」

 青い髪の男は、顔に手を当てた。

「ひぃぃ!」

 ほとんど秒殺された五人の姿を見て、残りの男たちはようやく事態の重大さに気づく。

「しょうがねえな、全く」

 青い男が呟いている間も、キノは男たちを踏んで、前に進んでくる。

「おい、マコを返せ」

 前方をキノは睨む。もの凄い威圧感が、空気の壁となって、男の体を後ずさりさせる。

「むう!」

 やがて、ひっくり返った。男が目を開けたときには、キノが目の前にいた。埃が立つ。胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。

「ああ! あの女!」

 キノの後方に集っていた男たちが、一斉に叫ぶ。

「ひっ! やっ、やめろ!」

 青色の男は顔を引き吊らせて、懇願した。

「マコは何処だ。マコを返せ。僕は本気だ」

 キノは拳を握りしめた。男の形相が変わる。

 その時、隣の部屋の扉が開いた。

「はいはい、そこまでぇ」

 金髪の男が、手を叩きながら出てきた。

「キノちゃん、その男を放してくれないか」

 金髪をキノは睨んだ。

「はっ、放せ!」

 手を振りほどいて、青い髪の男は、金髪のもとに走り寄る。

「おせーよ!」

「すまん。内藤さん、ようやく来たから」

 キノはずっと睨んだままでいる。握り込んだ拳はそのままだ。

「おまえ、本当に強いな」

 金髪はじっくりと、直立のキノを眺める。

「マコはどうした。ここに連れてこい」

「おい!」

 奥から、二人連れが出てきた。大きな男と、その者に支えられながら歩く、小さな女の子だった。口はハンカチ、手も後ろで縛られている。歩く姿もどこか弱々しい。キノは目を見開いた。

「マコ……」

 キノは思わず呟く。

 キノの声に反応したマコは、ゆっくりと顔を上げ瞳を潤ませる。キノは目で頷いた。

「おまえら、マコに何をした?」

 マコの頬が赤くなっていた。制服の上着は着ていない。ブラウスのボタンが引きちぎられていた。

「おまえの携帯番号を聞き出すのに、協力してもらったんだ。なかなかこの女も、強いな」

 キノの心臓の高鳴る。押さえきれない怒りの感情がほとばしった。

「マコを、放せ」

 静かにゆっくりと、奥歯を噛みしめながらキノは言う。

 途端に、男たちは大笑いする。

「ハイ、と言うと思うか。おまえをここへ呼んだのは、俺らにとって邪魔な奴を、再起不能にするためだよ」

 舌を出した金髪は、満足そうに口元を緩ませた。

「俺らを怒らすと、こういう事になるんだ」

 勝ち誇った笑いが、倉庫内に響く。

「まともに闘ってもしようがないからな」

「どうしたらいいんだ?」

「簡単だ。殴られろ。倒されろ」

「それでいいのか」

 キノは冷静な声で答えた。マコが叫んでいるが、口を塞がれているのでわからない。

「そうだ。そして、二度と目の前に現れるな。ひっそりと暮らせ」

「それで、マコを返してくれるのか」

「いいさ、返してやる」

「わかった。じゃあ、僕を殴れ」

 キノは男を見据える。眼孔は鋭く、肝座った度胸は、金髪の男をたじろがせた。まだマコは唸り声を上げている。

「ちっ、面白くねぇ! 少しは楽しませろよ! 泣いてお願いしろ、許して下さいって!」

 キノは手を降ろし、直立する。

「ブツブツ言わないで、早く来い」

 一切臆していない。鋭い眼孔は、金髪をずっと凝視したままだった。

「マジ、面白くねぇ!」

 金髪はキノの目の前に来る。顎から頬を右手で掴まれた。

「本当に綺麗な顔だな。なぁ、何故だ。何故そこまでする必要がある」

 キノは答えない。鋭い視線が、男を見据えているだけだった。

「おまえ女だろ。大人しく、あの女のことなんて、ほっとけばいいじゃねぇか!」

 キノは何も言わない。表情も変えない。

「けっ! ウゼえ! 人のために、自分が犠牲になるなんて、信じらんねぇ! バカのやることだ! 自分だけでいいじゃねえか!」

 男は叫び倒し、キノの頬を叩く。そして後ろを振り向いた。

「内藤さん! やっちゃってください!」

 マコを支えていた大男が、ゆらりと前に出てきた。マコはその場に倒れる。

 キノは直立の姿勢から、少しだけ両手を動かした。能力の差が、そうさせている。金髪よりもこの大男の方が上だと、察知したからだ。海原三つ分の体格だ。

「本当にいいの?」

 内藤は可愛らしい声を出して、キノの前に立つ。男の威圧感がのし掛かった。力の均衡が不釣り合いになる。

「いいですよ、本人も了承済みです」

 金髪は笑う。

「じゃ、これで」

 内藤の大きな右掌が振り上げられ、そして真っ直ぐにキノの左頬めがけて放たれた。大きな音と風圧で辺りの砂塵とキノの髪が立ち昇る。折り返し、右頬にも、同じ掌の力が加わった。キノの体は塵で見えなくなる。

「すっ、すげえ……。どっ、どうなった? あいつ、潰れたか?」

 金髪は目を何度も擦った。

「内藤さん! 凄すぎ!」

 青い髪の男は叫ぶ。

 マコは目が開けられなかった。転がったまま、膝を曲げて小さくなって震えていた。

 やがて、砂塵が薄れていく。

「へぇー」

 内藤は少し驚いた声を上げた。

「ええ!?」

 金髪は唖然とする。

「ありえねぇー! なぜ、立ってる!?」

 マコの目が開く。大きく叫ぶ。キノは直立していた。歯を食いしばり、内藤を見据えている。

「ちょっと、手加減しちゃった」

「あれで、手加減?」

 他の男たちが口を揃えて呟く。

「今度はグーでいくよ。痛いけど我慢してね」

 内藤は頬を緩めて、少し笑った。


12

「一体、何処に?」

 如月は町中を前や後ろを振り返りながら、走っていた。海原はさっきから何かを呟いている。真下は校舎内で、手がかりを見つけようと残っていた。

「海原! おまえ、さっきから何を言ってるんだ!」

 如月は逆ギレ状態で、振り返る。海原は止まった。

「如月くん……」

「なっ、なんだよ」

 如月も走るのを止めた。

「キノさんは、何故ひとりで、そんな危険な場所に行ったんですか?」

「そっ、それは……」

 言葉に詰まる。

「鈴美麗は、おれたちを巻き込まないようにと考えたんだと思う」

「マコさんもですか?」

「恐らく、彼女も同じ行動を取ったに違いない。だが、助けを求めなければならない状態に、奴らが何かをしたんだ」

 海原は、考え込む。

「僕もきっと、友達は巻き込まない。そうする」

「海原……。大莫迦者は、俺だけか」

 如月は情けなくて、足から崩れそうだった。

「しかし……」

 海原は、如月を見る。

「仲間が困っていたら、必ず助ける」

「海原、俺は莫迦者か?」

「はい、莫迦者です。どうしようもなく、莫迦なことをしました。でも如月君、君が仲間なら、必ず助けに行くと思います」

 海原は頷いた。

「僕は必ず、二人を助けます!」

「海原、俺もだ!」


「あれ? 如月君。げぇ! 海原も」

 商店街を歩いていた、私服の石井が声を掛けてきた。海原はじっと石井を見つめる。

「どうかしたの?」

 嬉しそうに近くに寄って来た。

「いっ、いや、別にな」

 如月は表情を隠すように、愛想笑いをする。

「そう」

 石井は、海原には目もくれず、話し始めた。

「そう言えば、マコさんを見かけたのよ」

「どこで!?」

「商店街を数人の男の人たちと歩いて行ったわ。でももう大分前だけど」

「男たちって、どんな?」

「うーん、あっ! 金髪がいた! 青い髪のカッコイイ人も」

 男二人は顔を見合わせる。

「そうか……。やっぱり、奴らか」

 如月は言う。

「奴ら?」

「いや、いい。どっちに行った?」

 石井は指さす。

「その先って、何がある?」

「えーとねぇ。そうそう、貸倉庫みたいなのがある。最近は使われてはいないみたいけど。もうかなり古いから」

 その時、海原の携帯が鳴った。

「真下先輩」

『海原、とんでもない奴らだぞ。一年の奴が、体育館の物置に閉じこめられていた。見知らぬ男達にナイフで脅かされて、無理矢理制服を奪われたらしい。青い髪の男と金髪にピアスしていた男だ。一応警察に届けておくよ。で、そいつが言うには、倉庫がどうかとか言っていたそうだ』

 真下はいつもになく、冷静だ。

『それで、そいつ『鈴美麗先輩がやられる』って叫んでやがった。鈴美麗が危ない。頼むぞ、海原。必ず助けろ』

「おっ、押ス!!」

 海原は電話を切った後、じっとしていた。

「海原」

 如月は声を掛けるが、彼は返事しない。

「おい、海原!」

「許せない、許せないっス」

「ひっ!」

 石井は驚いて、後ずさりした。海原をみる目が不審だ。

「如月君、行きましょう。僕、ものすごく腹が立ちました。倒します絶対に!」

 海原は目が血走っていた。いきなり走り出す。

「海原、待て!」

 如月も後を追う。

「ねえ! ちょっと! 何処行くのよ二人とも!」


13

 古い倉庫の中では、鈍い音が響いていた。振り乱れるキノの髪が、何回も宙を舞い上がる。まるで羆が小枝でもて遊ぶように、幾度となく体が上下左右に振れる。その場を見ている男達も、目を背けたくなるような光景だった。内藤の繰り出す、拳の当たる音だけは、衰えなく続いている。

「いっ、いくらなんでも……」

 青い髪の男から言葉が漏れた。

 やがて、音が止んだ。男達は目を見張った。埃まみれの空気の中に、キノは立っている。しかし、その姿からは精気は感じられなかった。キノは動いていない。

「あれ? もう、終わっちゃった?」

 内藤は拳についている、血糊をなめた。キノが本当に棒きれのように見える。やがて膝が折れ、地に付いた。前方へ転倒するのを防ぐように、両手を付く。乱れた髪がはらはらと垂れて、顔を隠した。

「ぎゃははは!」

 金髪は大笑いする。誰もが振り返った。

「ざまあみろ! さまあみろ! ざまあみろ!」

 男はマコを引きずってくる。彼女の顔を持ち上げ、キノの姿を見せた。

「!!」

 マコは目を見開いた。

「へへへ、声でも掛けてあげな」

 口を塞いでいた、ハンカチを外す。しかし、マコはすぐには声が出なかった。

「きっ、キノ……、そんな……、そんな、そんな」

 両手を付いたまま、キノは動かない。

「あっ、あなたたち。こっ、こんな酷いこと」

 マコは男達を睨む。青い髪の男は、怯む。

「キノ!!」

 マコは力の限り叫ぶ。しかし、キノは動く気配がなかった。

「内藤さん、トドメ刺して下さいよ」

 金髪は叫んだ。

「いいの?」

 内藤は振り向く。

「いいですよ」

 口元が笑う。

「もう、やめて! もういいでしょ!」

 マコは金髪にすがるように、泣いて懇願した。

「ちぃ! こいつ!」

 マコの頬を叩いて、振り解く。彼女は力なく倒れた。

「そいつには制裁がまだ足りねぇ! 俺を怒らせたらどんな目に合うのか、思い知らせてやる!」

「神野くん、じゃあ、終わったらこの女、ボクのおもちゃにしていい?」

「どうぞ、どうぞ。お好きなように。こっちにはもうひとりいますから」

「じゃあ、ケリつけるよ」

 内藤はキノの前に仁王立ちしている。

「ボク、なかなか彼女出来なくてね。君みたいな美人だと嬉しいよ」

 内藤は鋭い蹴りを、四這いになったままのキノの腹部に、見舞う。キノの体は簡単に空中に浮き、そのまま見物していた男達のところまで、二、三回転して飛んでいった。

「きっ、きゃあああ!!」

 必死で起きあがったマコは、その光景を見て叫んだ。

 男達は動かないキノを囲み、奇異な目で見つめる。転がってきた体制のまま微動すらせず、口から血を流している。

「うっ、うわあああ!」

 男達は叫び、遠退いた。腰を抜かして、じたばたする者もいる。

「死んだ、かな?」

 内藤は呟き、キノに近づいた。

「しょうがねぇなぁ」

 金髪は唾を吐く。マコは絶叫した。


14

 扉の向こう側の海原と如月にも、マコの断末魔のような悲鳴が聞こえた。

「キノさん! マコさん!」

 如月は壊れた扉を蹴り上げる。大きな扉は回転しながら、吹っ飛んだ。

「なっ、なんだてめぇら!」

 海原は近寄ってきた男を、投げ飛ばす。如月も蹴り倒した。

「マコさん!」

「海原くん! 如月くん!」

 涙顔のマコは叫ぶ。金髪はマコを掴んだ。内藤はギロリと二人を睨む。

「キノが、キノが!!」

 海原は床で血を流しながら、倒れているキノを見た。彼の動きが止まった。

 キノの制服は汚れ、破けていた。長いしなやかな髪は、絡み光沢はなかった。細く長い手足には無数の痣が出来ている。

 海原は震えながら、拳を握る。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 激しい雄叫びを放った。体中から湯気が立ち昇る。海原はそれ以外、言葉を発することが出来ないくらいに震えていた。怒りだ。彼の怒りが体を振るわせていた。そして怒濤のように、涙が顔面を濡らしている。

「すっ、鈴美麗!? なんてことだ!」

 如月もあまりの光景に目を見開いて、言葉を失った。


「なんだ、また訳わかんねぇ奴が来やがった」

 金髪は言う。

「何人来ても一緒だよ。内藤さん!」

「神野くん、こいつらもいいの?」

 内藤は二人を指さす。

「可愛がって下さいよ」

「二人とも逃げて!」

 マコは叫んだ。

「いや、逃げない。二人を助ける」

 海原はその小さな眼で見返す。内藤は海原を見る。

「あの女より弱いね、君」

「弱いです、僕は。でも負けません」

「ふふふ。面白いですね。負けますよ、絶対」

「負けません」

「負けます」

 男の言葉の後、海原は構える。

「わからないな、君は。どうして負ける喧嘩に口出しする」

 内藤の拳が海原の頬に突き刺さり、よろめく。しかし彼は体制を戻し、再び内藤に向き直った。

「守るためです」

「守るため?」

 今度は腹部に蹴りを受ける。海原は眉間に皺を寄せて、咳込んだ。

「ボクは、何も守らない。奪うのみ。自分の好きなものをね」

 更に顔面に直撃を受ける。鼻血が吹き出した。

「守るだけでは、何も手に入らないよ」

 蹴りが左の大腿に食い込んだ。

「ぬう!」

 海原は片膝を付く。

「手に入りましたか。自分を信じてくれる人は手に入りましたか。あなたのことを考えてくれる人は出来ましたか。力ずくで、手に入りましたか」

「ほざきますね!」

 内藤は顎を蹴り上げる。後方へ仰け反り、倒れようとするが、海原は踏み留まった。口元の血を袖で拭う。

 海原はキノをかばっていた。キノの前でずっと構えていた。

「内藤さん! 何やってるんですか! 早く倒して下さいよ!」

 内藤は振り返って、睨んだ。

「ひっ!」

 男の目付きは、明らかに変わっていた。

「いい加減に、くたばれ!」

 もう一度海原の顔面に拳を振りかざした。大きな音が響く。海原の大きな体が崩れた。

「ひゃはははは!」

 内藤は連打を海原に浴びせる。

「君には信じてくれる奴はいるのか! 信じてくれる奴はいるのか!」

 海原は背中を内藤に向け、キノを守る。

「所詮、自分しかないんだ。自分でやるしかないんだよ。誰も助けてくれないよ」

 容赦無い内藤の拳が、海原の背中を執拗に襲う。


「どうしちゃたんだ? 内藤さん、おかしいぞ」

 金髪は呟く。

「おまえもな」

 背後から声がする。

「はっ?」

 如月は睨む。

「おまえ!?」

 金髪はたじろいだ。

「散々やってくれたな、俺の大事な仲間に」

「他のやつらは!?」

「あっち」

 如月は、指さす。残りの男達を蹴り倒していた。

「おっ、おおい! どうなっている?」

 ナイフを持ち出す。マコを立たせて、喉に突きつける。

「おまえ! この女がどうなっていいのか!」

「おっ、おい、神野! もうやめようぜ、こんなこと!」

 青い髪の男が間に入った。

「てめぇ、裏切る気か!」

「度を越してるぞ! 死人が出るぞ本当に!」

「びびってんのか?!」

「とにかく、俺は抜けるぞ!」

「てめぇ!」

 ナイフの先が青い髪の男の腕を突き刺した。

「がっ! 神野!」

 ぼたぼたと袖から血が流れ落ちる。

「きゃあ!」

 マコは叫んだ。如月は蹴りで金髪の男のナイフを飛ばす。金髪は流血を見て、顔を白くした。そのまま腰を抜かして、床に座り込む。如月はマコの手を引っ張って、引き寄せた。

「あんた、馬鹿だ!」

 如月は金髪を殴る。

「あんたにも、仲間がいたんだぞ。馬鹿野郎!」

 彼は上着を脱ぎ、マコに掛けた。

「使ってくれ」

「如月くん……。ありがとう」

 マコは力が抜け、腰が砕けたように倒れかかる。如月は抱き支えた。

「いや、俺に言う必要はない」


15

「あいつら、自滅しやがったか。馬鹿な奴らだ。もう、いいや」

 内藤は呟いた。

「これで、おしまいだよ。ボクのおもちゃを頂いていくよ」

 重たく沈む拳が、海原の脇腹に突き刺さる。

「ぬううううっ!」

「おらおらおら! いい加減に、くたばりなさい!」

 海原の目が正気を失うかのように、白目を向き掛けていた。体制は変わらず、キノを守っている。しかし、すでに彼の限界は越していた。

「きっ、キノさ……」

「おらぁあ!!」

 内藤のその蹴りが最後だった。海原は次第に傾き、ゆっくりと倒れていく。彼はその瞬間、微笑んだ。

 巨漢が倒れた後に、埃が立ち昇る。その中に、黒い影が見えた。

「う!?」

 内藤の動きが止まる。その目を疑い、両手で擦った。白い砂塵が舞う中、黒い影はゆっくりと立ち上がる。

「そっ、そんな……、ありえない!」

 明らかに男は、狼狽えていた。影は前に出る。口の中に溜まった、血の固まりを吐いた。

「へぇ……、驚くんだ、おまえでも」

 内藤は後ずさりする。

「ぼっ、ボクの、拳を受けて、まだ?」


 キノだ。

 キノは立ち上がっていた。

 その姿は凛々しく、先ほどの体がまるで嘘のようだ。キノは海原を見た。

「海原……、ありがと。おまえは僕の仲間だ」

 彼は失神してた。しかしその顔には苦痛の表情はなかった。

「きっ、キノ!!」

 マコは叫ぶ。キノはマコの顔を見た。

「マコ、よかった」

「鈴美麗! マコさんは無事だ! 本気でいけ!」

 如月も手を振り上げる。

「僕はいつでも本気だ。マコから離れろ、バカ」

 キノは如月を睨んだ。彼は微笑む。

「キノ! そいつ、ぶっ飛ばして!!」

「マコ、君の顔を見ると、体に力が沸く」


「なんて奴だ……。あんな奴を俺ら相手にしていたのか。ついていけない」

 青い髪の男は、目を丸くして呟く。隣を振り返る。

「そして、あんたも……」

 血が流れている腕をマコが、ハンカチで縛った。

「勘違いしないでね。怪我している人を放っておけないだけ」

「……許してもらえるとは思わないが、酷いことをした。すまなかった」

 青い髪の男は、頭が下がったまま言った。


16

「驚きはしたけど、ダメージが全く無いわけではないし。すでにハンデはついてる」

「そう。何故、この男が、ずっと打たれ続けたのか。知ってる?」

「なに?」

「弱いんじゃない、手が出なかった訳じゃない」

 キノは腰に両手を当て、構える。

 精神統一。

 倉庫内が異様な空気で張りつめていく。

「僕を待っていたんだよ。僕の力が回復するのを、待っていたんだ」

「わざわざ、打たれていたっていうのか!」

「この男は、おまえの拳など、微塵も恐れていない」

 キノの眼力が、内藤を刺した。丸い腹部が凹み、口から唾液が飛び出す。

「海原は、おまえよりも、ずっと、ずっと、強い」

「馬鹿な。ボクはこれまで、負けたことなどない」

「相手が動けない状態にしてからか。おまえはひとりよがりで、一番弱い。今まで気づかないなんて、最低最悪な男だ」

 重い空気の大きな衝撃波のようなものを、キノは放った。柔道部の扉を破壊した力だ。それは一直線に内藤の腹部を直撃し、胃液を吐き出す。

「げふっ」

 足が地に付いたまま、そのまま数メーター下がっていく。余波は如月やマコたちにも届いた。

「避けろ! 花宗院!」

 如月はマコが飛ばされないように、抱きしめて守る。青い髪と金髪は見事に吹っ飛んで、転がり、壁にブチ当たった。

「もうキノ、本気モード入りすぎよ」

 黒髪を乱れさせ、マコは呟く。


「おまえのバカなおもちゃなんかにならない。負けない。倍にして返してやる」

「ほざけ、この女!」

 内藤は、歯を食いしばって突進してくる。大きな拳を、渾身の力で振り上げた。

 キノの鋭い眼孔は、今の内藤の動きなど、意図も簡単に見抜いている。

「……やはり、殴るしか能がないか」

 その内藤の眼前から、キノは消えた。拳が風切り音鳴らして、空を割く。

「かっ?」

 内藤は勢い余り、前のめりなってよろけた。キノはその下で構えている。

「おお!」

 振り余った右腕を取り、一本背負い体制に入った。

「おおおお! ボクが負けるのか!?」

 絡んでいた細長いクリーム色の髪が舞い、顔が床寸前まで近づく。バランスを崩すキノよりも大きい内藤の足が、見事に地を離れた。

 足底は古い倉庫の天井を向く。それは天井に穴を開けるのかと思わせるほどだった。巨漢は見事に空を斬り、鋭く一回転して地面に叩きつけられた。

 瞬間男の息が止まり、がぁと、喉を鳴らして唾液を撒き散らす。

 古い倉庫が潰れたかと思うほど大きな音が鳴り響き、もの凄い量の砂塵が舞い上がる。辺りは霧がかかったように、薄暗くなった。


 マコは如月からの手を離れて、その霧の中に走っていった。

「まて、花宗院! まだ危ないぞ!」

 それでもマコは走っていく。

「構わない! キノの傍に行きたい!」


 ゆらりと動いている人影が見えた。

「キノ!!」

 マコはその人影に向かって叫んだ。

「キノ!」

 もう一度叫ぶ。

「……マコ」

 キノの声だ。マコの目の前に、両手を広げている影が見える。次第に靄が消えていく。キノの顔が見えてきた。

「キノ……」

「マコ、ごめんね。すぐに助けられなくて……」

 マコはキノに寄っていく。涙が溢れて出してきた。キノの姿を見ると、満身創痍で泥だらけだった。

「キノ、私のためにこんなになって……」

 マコは手を伸ばし、摺り傷だらけの腕に触れる。体の痣や血の後が痛々しかった。マコはポケットから黄色のハンカチを出して、腫れ上がっているキノの口元の血を拭く。

「痛かったでしょ。こんなにぶたれて。綺麗な顔なのに……」

 キノはマコを抱きしめた。持っていたハンカチが、はらりと落ちる。

「僕は、マコを守る」

「うん」

「どんなことがあっても、守る」

「うん」

「僕は、絶対マコを……」

 マコは、指でキノの唇にそっと触れた。

「もう、言わないの。顔腫れてんだから」

 マコはキノの頬を両手で包む。

「痛い?」

 守るべき澄んだ愛しい瞳が、キノを優しく見つめた。


 ゆっくりとマコの唇が……。


「き、キノさん!!」

 海原が気が付いて、起き上がった。マコの動きが止まる。

「かっ、海原くん、そこにいたんだっけ?」

「まっ、マコさん!? 大丈夫でしたか!」

「ほほほ! キノって、本当に大丈夫ねぇ、頑丈だわ!」

 両手で持った顔を、誤魔化すように思いっきり左右に振る。

「いっ、痛たたた!」

 キノは顔をしかめて叫んだ。海原は笑って、咳込む。


 ようやく、室内が晴れてきた。如月は、三人の元へ歩きだした。

「鈴美麗。君は、わずかな間合いと威圧の壁を使って、こいつの直撃を避けていたんだね」

 内藤は白目を剥き、口の周りに泡をつけて、失神している。

「海原は、それをわかっていたのか」

 如月は、キノとマコが海原を立ち上がらせるのを見ながら、呟いた。キノが海原の尻を蹴っている。

「全く、君たちの行動は破天荒だ」

 彼は千秋に携帯のコールをした。

「だが、仲間として最強で、最高だ」

 遠くからパトカーのサイレンが聞こえている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ