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ツンデレ令嬢

地獄のピクニックから数日後、俺たちの隊列は、ようやく王都の西門へとたどり着いた。


貴族の子弟たちは、もはや行きの頃の傲慢さは見る影もなく、ただ黙々と、疲れ果てた顔で馬車に揺られている。俺たちを見るその目には、恐怖と、ほんの少しの畏敬のような、複雑な色が混じっていた。


門の前で、俺たちの奇妙な仕事は終わりを告げた。


引率の教師が、やつれた顔で俺に近づき、小さな革袋を差し出す。


「…ご苦労だった。これが、契約の報酬だ」


中には、約束通り、金貨が五枚。俺は、これでまた数週間は食いつなげる、と安堵のため息をついた。


俺たちがその場で別れようとした、その時だった。


「──お待ちなさい、あなたたち!」


凛とした、しかしどこか不機嫌そうな声が、俺たちを引き留めた。


ロゼリアだ。


彼女は、自らの豪華な馬車の前で、ツンと腕を組み、俺たちを睨みつけていた。


「これは契約ですわ。わたくしたちを、一応は、無事に王都まで送り届けたことに対する、当然の報酬です」


彼女はそう言うと、別の、ずっしりと重そうな革袋を、こちらに放り投げてきた。


「さあ、お受け取りなさい!感謝など、これっぽっちもしておりませんからね!勘違いなさらないで!」


その顔は、怒っているはずなのに、なぜか耳まで真っ赤に染まっている。

俺は、慌ててその重い袋を受け取った。中を覗くと、信じられないほどの輝きが目に飛び込んでくる。


(……金貨が、こんなに……!?)


軽く見る限りでも金貨40枚、いや、それ100枚以上はある。


これは、ただの報酬ではない。彼女なりの、最大限の、そしてあまりにも不器用な「感謝」の印だった。命を救われたことに対する、貴族としての、プライドを賭けた返礼。


「わーい!お金!お肉いっぱい買えるね!ロゼリア、ありがとー!」


ミアが、その意図など全く気にせず、無邪気に喜ぶ。


ロゼリアは、そんなミアの姿に「ふんっ!」と鼻を鳴らすと、顔を真っ赤にしたまま、さっさと自分の馬車に乗り込んでしまった。


俺が、そのあまりにも分かりやすいツンデレっぷりに呆然としていると、ふと、隣で違う反応を示している者がいることに気づいた。


ポチだ。


彼女は、金貨の山にも、ロゼリアの態度にも、一切興味を示さない。


ただ、王都の門をくぐった瞬間に漂ってきた、あの強烈な下水の匂いに、その美しい顔を、これでもかというほど顰めていた。


そして、エルフとしての気高い尊厳も忘れ、小さな手で、必死に自分の鼻をつまんでいる。


(……ああ、そうか。お前にとって、王都はまず、この匂いか)


俺は、彼女のあまりにも人間臭い反応に、思わず苦笑した。


その隣で、リオとチャルが「おかえりなさい」とでも言うように、静かに頷いている。


こうして、俺たちの初めての「家族」としての仕事は、終わった。


手に入れたのは、予期せぬ大金と、ツンデレなライバル(?)と、そして、王都の臭いに顔を顰める、一人の新しい家族だった。

ついに記念すべき100話になりました!!

だからと言って何かがあるわけではないですが、ここまで読み進めていただきありがとうございます!!

質問があったらぜひコメントで教えてください!!絶対見ます!


そういえば、金貨一枚は日本円で2万円ほどです。

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