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124回の尋問

宿舎は、燃えている。


俺たちの、初めての「家族」としての仕事は、依頼主である貴族たちを無事に(精神的には瀕死だが)守り抜き、代わりに彼らの宿泊施設を全焼させるという、最悪の形で完了した。


王都への帰路は、行きとはまた違う、地獄のような空気に包まれていた。


先頭を歩くのは、魂の抜けたような顔をした貴族たち。

ロゼリアは中央に位置する豪華な馬車に気絶するように倒れている。


その後ろを、俺たち四人と、そして――俺たちの新しい「ペット」が、とぼとぼとついていく。


金髪のエルフ、ポチは、もはや抵抗する気力もないのか、自らの足で歩いていた。


しかし、その首には、ミアがどこからか拾ってきた蔦で作った、あまりにも粗末な首輪(?)が付けられている。まだリオを買ってしまった時の方がマシだった気がする。


その光景は、あまりにも、あまりにもシュールだった。


俺は、この気まずい沈黙に耐えきれず、そして、科学者としての純粋な好奇心に突き動かされるまま、隣を歩くポチに、素朴な疑問を投げかけた。


「...なあ、一つ聞きたいんだが」


ポチは、俺を汚物でも見るかのような目で一瞥し、ぷいと顔を逸らした。

主人以外には口を聞く筋合いはない、ということらしい。


俺は構わず、続けた。




「なんで、エルフは人間と敵対しているんだ?西部の戦場でもそうだった。何か、根本的な理由があるんだろう?」




返事は、ない。




俺は、もう一度聞いた。




「なあ、なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」




返事は、ない。




俺は、さらにもう一度聞いた。



「なあ、なんでエルフは人間と――」

「圭さん、もうやめましょうよ…」


チャルが、困り果てた顔で俺の袖を引く。


「いや、チャオ...俺は止まらないぞ!!!」


文字どおり俺は止まらなかった。


俺の脳は、一度疑問を抱いてしまったら、その答えが得られるまで、無限に思考を繰り返すように設計されているのだ。


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「....」



「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「.......」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「....」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「..」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「........」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「...」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「....!」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「....?」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「......」


「なんでエルフは人間と敵対しているんだ?」


「........???」


俺は、壊れた機械のように、同じ質問を、ただ、ただ、ひたすらに繰り返した。


最初は殺意のこもった目で俺を睨みつけていたポチの顔から、次第に表情が消えていく。


ミアは「圭、こわれちゃったの?」と心配そうに俺の顔を覗き込み、リオは「始まった…」と頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。チャオはもはや全てを諦め、空を眺めていた。


貴族たちは、もはや俺たちを存在しないものとして扱っている。


そして、俺が「124回目」の質問を口にした、その時だった。


「ああぁぁぁぁぁぁ!!!もう、うるさいッ!!!!」


ポチが、ついに絶叫した。


彼女は、心底うんざりした、魂の底から疲弊しきった顔で、俺を睨みつけた。


「分かった!分かったから!話せばいいんでしょッ!!!話せばッ!!!!!」


その、あまりにも悲痛な叫びに、俺以外の全員が、ドン引きしていた。


拷問よりも、屈辱よりも、ただひたすらに繰り返される意味不明な質問の方が、

エリート戦士の心を折るのには効果的だったらしい。


ポチは、ぜえぜえと肩で息をしながら、吐き捨てるように、その理由を語り始めた。


「理由なんて、単純なことよ。……一つは、お前たち人間が、我らの森の木を、鉱物資源採掘の邪魔だと言って、大規模な『焼き払い(放火)』を始めたから」




「……あーね」



「そしてもう一つは、お前たちの王家が、我らとの交易において、あまりにも『不平等な関税』を一方的に押し付けてきたからよ!これで満足した!?.....」


その理由は、神々の時代の因縁でも、種族間の根深い対立でもなかった。


ただ、資源問題と、経済摩擦。


あまりにも、生々しい、現実的な理由だった。


俺は、その答えに、妙な納得感と感動を覚えていた。


その隣で、リオとチャルが、そしてポチ自身でさえも、


「こいつ、本当にこれだけのために、あの奇行を……?」とでも言いたげな、


心底信じられないものを見る目で、俺を見つめていた。

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