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人類の敵多くない?

「…………ぁ……」


声にならない声が漏れる。


あまりの絶望的な光景に、視界が白く霞み、俺は気絶する寸前だった。ちょっと漏らしかかってたし。


隣を見ると、リオが顔にびっしょりと汗を垂らし、しかし鋭い目で敵軍を睨みつけている。


その手は、いつでも魔法を放てるように、固く握られていた。


対照的に、ミアは目をキラキラと輝かせ、その光景を興味津々といった様子で見つめている。


「わー! いっぱい来た! お祭りかな?( ・∇・)」


彼女にとって、地獄の戦場は、賑やかな祭りにしか見えていない。

その価値観を今すぐ分けてくれ。


俺たちが三者三様の反応を示す中、塹壕の中の兵士たちは、冷静沈着に行動を開始していた。



「敵、地上部隊接近! !!全員、迎撃用意!!!!」



隊長の号令一下、兵士たちはあの鉄の杖を構え、塹壕の縁に身を伏せる。


さらに、後方では数人がかりで、巨大な円形の木の盤をいくつも設置していた。


その盤の上には、まるで精密な電子回路のように、複雑怪奇な「魔力の流路」がびっしりと彫り込まれている。


この世界の「魔法陣」と、いうところだろう。

それは神秘的な光の図形などではない。

魔力を特定の現象に変換するための、極めて物理的な「装置」なのだ。


兵士たちは、その魔法陣に、砲弾のような結晶?を装填していく。


(あれはもしかして魔力の結晶...?あんなものがあったのか!?)


未知の結晶に目を奪われていたが、魔物の叫び声で我に帰り、周囲を見渡す。


地平線を埋め尽くす魔物の軍勢。


物理的な魔法兵器でそれを迎え撃つ、人間の兵士たち。


そして、その最前線の塹壕ど真ん中に、俺たち三人はいた。


やがて、霧に包まれた魔物の先頭集団が、魔法兵器の射程圏内へと突入した。



「撃てええええええっ!!!」



指揮官の絶叫が、合図だった。



次の瞬間、世界から音が消え、閃光が全てを白く塗りつ潰した。




ズドオオオオオオオオオン!!!バッッッッッッズドドドドドドドォォォォン




遅れてやってきた轟音と衝撃波が、俺の体を地面に叩きつける。


設置された数十の魔法陣から、一斉に灼熱の光線が放たれ、着弾地点の魔物の群れを巨大な爆炎が飲み込んだ。


地面が激しく揺れ、塹壕の中にまで土砂が降り注いでくる。

顔に土煙が覆い被さり、目に砂が入る。



(なんだ、これ……俺のパン焼き事故や野焼きなんか、赤ん坊の火遊びじゃないか……!)



国家が本気で運用する攻撃魔法。


その、地形すら変えかねない圧倒的な破壊力を前に、俺はただ震え、全てが終わるのを待つことしかできなかった。


これだけの攻撃だ。


いくら数が多くても、いくら魔法があっても、先頭集団くらいは消し炭になったはずだ。








ーーしかし、砂塵が晴れた先に広がっていた光景は、俺の甘い期待を粉々に打ち砕いた。





「……嘘だろ……?」





魔物の軍勢は、その歩みをほとんど止めていなかった。


確かに、先頭にいた数体のゴブリンやオークは吹き飛んでいたが、後続の軍勢はほぼ無傷。


何事もなかったかのように、こちらへ向かって進軍を続けている。


(なぜだ? あれだけの威力があったのに、なぜ効いていない?あの攻撃は見掛け倒しだったのか...?)


俺は混乱する頭で、目を凝らして敵軍の奥を見た。




ーーそして、気づいた。




軍勢の後方、小高い丘の上に、精鋭兵のような豪奢なローブを纏った一団がいる。


長く尖った耳、優雅な立ち姿―――エルフだ。




彼らは全員で杖を天に掲げ、その合わさった膨大な魔力によって、自軍の頭上に巨大な半透明の障壁を展開させていた。そう、霧かと思っていたものは結界だったのだ。


先ほどの魔法攻撃は、全てあの結界によって威力を殺されていた。


(エルフまで、敵なのか……!?確かエルフ中立とかじゃなかったけ!?)


ゴブリン、オーク、オーガ、獣人、そしてエルフ。


俺は、次々と現れる敵対種族のリストに、戦慄した。


「てか、人間、ほとんどの種族と敵対してないか!?」


この戦争、もしかして、人類側が圧倒的に不利なのでは?


そんな、知りたくもなかった事実に気づいてしまった俺の隣で、


ミアが「あ、綺麗なエルフさんだ! あの子持ち帰っていい?」と呑気なことを言っていた。


もう、ツッコむ気力もない。


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