或る転生者の独白(1/2)
ヘェ~。じゃあアンタは“転移”の方か。
いや、まさか同郷に、それも異世界で会えるなんてな。
俺?
俺は“転生”だよ。クリフって赤ん坊に転生したんだ。だからまあ、もうそこそこ生きてるよ。
ああ、俺も日本人なんだ。こんなナリだけどさ。アンタは分かりやすいなぁ、すぐにピンと来た。だから声をかけたんだけどな。
あん? 本来のクリフ?
さあね。特に存在を感じたこともないし、俺に“上書き”されたんじゃね? まあしょうがないよな。運がなかった。
…………ふっ、ああいや、悪い。罪の意識なんて訊かれると思わなかったんだわ。
無いね。皆無。いや、そりゃそうだろ。
そもそも赤ん坊に個性だの人格だのはまだ無いって。何もなかったのとおんなじだおんなじ。
だからアンタと変わらない。何もなかったところに現れた。んで、アンタもそう。何もなかったところに現れた。……だろ?
まあこれは別に俺のせいでもないしさ、俺が選んだなら俺が悪いよ。けど俺は選んでないから、じゃあ俺は悪くないよな?
ああ、うんうん。なるほどねぇ。
アンタまだ日が浅いんだな。まだ“日本人”のつもりで言ってる。だから自責の念だの罪だの罰だの人権だの言えるんだ。
“ここ”の住民の俺が保障するわ。
アンタ長生きできねぇって、ソレ。
んじゃ、もうイイや。
俺は大体このくらいの時間に毎日ここにいる。
生きてたらまた会おうぜ。そのときは、こんな下がる話はナシな?
俺は……確か、そう……カトウ……カケル、だった。たぶん。名乗るなんて何年振りだこれ。名乗られたから名乗り返したけど、ここら辺であんまその名前はやめとけよ? いや、いいから。
んじゃ、またな~。
それ俺のオゴリだからさ、しっかり食っとけよ。この世界じゃフツーないんだぜ、こういうの。
次があったら故郷の話でもしようぜ。同じ時代なのか? 俺たち。
いや、いいか。じゃ。