或る忌子の独白
私は少し異常でした。
人の気持ちの分からない子どもでした。
興味のあることにだけのめり込み、熱し易く冷め易く、失せた興味は戻ることがありませんでした。
衝動は常に、私の手綱を握りしめていました。
規則も規範も、後から私を罰するための理由にしかなり得ませんでした。
父は私をよく殴りました。
言っても撫でてもダメでした。
いつか来るその日を幻視して、父は恐怖に震えていました。
私は父には従いました。
正しいからではありませんでした。
痛いから従いました。怖いから謝りました。
謝りながら、どうしてこうなったかと自分を責めて、けれど終わればすっかり元通りでした。
さっきまでが夢の中だったのかと、そう思えるほど薄れていました。
「いつも怒ってる」と私は言いました。
その言葉はずっと、父を虐みました。
「俺だって、いつも笑ってやりたいよ」
そう言って、父は怒りました。
「褒めてやりたいし、好きにさせてやりたいよ」
そう言って、父は泣きました。
「誰が、好きで」
父は少し、私を恨みました。
「好きじゃないんだ」と言って、
「大切じゃないんだ」と言って、
言った私は殴られました。
「愛してないなら、こんなに必死になるものか」と、怒鳴る父に殴られました。
私は痛みが嫌いでしたし、怖くて怖くて嫌がりました。
「そんな愛ならいらない」と、
「叩かれるくらいなら愛されたくない」と、
言えないほどには好きでした。
言えないほどには愛されたくて、だから我慢できるというものでもありませんでした。
父を愛しています。
お父さんが大好きです。
お父さんも私が大好きです。
父は私を愛していました。
愛してくれたのに




