或る家族の独白(1/2)
すみません、この子のためにタオルをもう一枚いただけますか?
助かります。
いや本当に、冬でなくてよかった。真冬だったらこの子は凍えて助からなかったでしょうし、私も溺れていたかも知れません。
……あの人、ずっとあの調子ですね。この子に近づけないようにお願いします、お巡りさん。
あんなに喚いてなじって。助かったこの子にまで怒鳴ってる。
本当に醜い。
ええ、私は大丈夫です。ありがとうございます。
この子も怖がっちゃって震えてますが、ああ……助かってよかった。本当に、よかった。
あの、あの人は確かにひどいことを言っていますけど、あまり乱暴はやめてあげてください。
家族を失ったわけですし、私も危うくこの子を救えないところでしたから、その辛さはわかるんです。あの人も、ある意味で不運の被害者ですから。
たまたま私が泳げて、救える距離にいただけ。目の前で救えなかったあの人の無念、どうか貴方も分かってあげてください。
ただ、しばらく様子を見てもらえれば嬉しいです。元々この子を、私の家族を悪く言うところがある人でした。この子がご飯を食べているのを「餌を与えている」とか、「ネズミそのもの」とか言っているのは知っていましたが、今回の件で本当に何かしてくるかもって。
それだけが不安なんです。
ありがとうございます。
そうだ、タオルは大人用でなくても大丈夫です。この子、まだ少し濡れていて、寒そうにしているんです。小さいので構わないので、急いでいただけると助かります。
私は本当に大丈夫です。少し川の水を飲んでしまって、ちょっと気分が悪いだけなので。しばらくすればスッキリすると思うので。
ああ、あの人が暴れてるみたいです。私たちは大丈夫なので、どうか手伝ってあげてください。
——本当にひどい人。自分だって家族が流されていたら、きっとそちらを優先するでしょうに。
可哀想な人。




