或る兵士の独白
我々が命を奪うのは罪ではない。
我々による敵の殺害は殺人ではない。
なぜか。
我々が選んでいないからだ。
命の選別を我々は行わない。
我々はただ敵を排除する。
そこに罪はない。
立場上仕方なく、命令されて粛々と、我々は敵を排除する。そこが、殺人者との違いだ。
我々は殺人者ではないからこそ、命じられたことをやったまでであるからこそ、兵士でない自己を保てる。隔てることができるのだ。
お前は今、躊躇している。
確かに、ソレは少年だ。我々とは蓄積した年月が、甚だしく乖離した未熟な生命だ。
だが、兵士だ。
敵の、兵士だ。
なぜ躊躇う?
敵兵を前にしている。
震える目でお前を見つめるから殺さないのか?
————いや、そんなものは今までもいたはずだ。それをお前は排除した。
捕虜にできるから、殺さないのか?
————いや、捕虜になら今までの敵でもできたはずだ。それも、お前は排除した。
懇願する敵がいたな。肩を負傷していた男だ。
お前は殺したぞ?
家族が待っていると泣く敵がいたな。ご丁寧にもロケットペンダントなどという小道具を用いて、こうして震える手でパカパカと。
お前は————殺したぞ?
なぜ、躊躇う?
まさか、あれらは命令であるから、敵であるから、その双方の立場ゆえに殺害せしめたのではなく、成人した男であるから殺したのではないだろうな?
それでは翻って、大人であれば死ぬべき命であったとでも、そうとでも言う気か?
それは…………それは殺人だ! 兵士ではない、殺人者の思考だ!
お前は命を選んでいる!
敵だからではない! 敵の中で、死ぬべき命とそうでないものを、したり顔で! 偽善者の醜さで! 命を握る超越者の振る舞いで選別している‼︎
お前は兵士だから殺したはずだ!
年齢でも、性別でもなく、ただ敵味方という立場のみによって、お前を超えた判断によって強いられていた! だから殺した! 殺してきたッ!
戻ってこい……ッ! そこは神の領域だ……お前は、我々は兵士だ。帰れば日常を享受する、ただの人だ。
やるのだ、お前が。
一度は躊躇し、“死ぬべきでない命”を————そして“死ぬべき命”を作ろうとしたお前自身が、殺人者でないことを示すのだ……ッ。
見ろ。震えているぞ?
お前が躊躇しなければ、震える間すら与えずに済んだものだ。お前が強制した恐怖だ。お前が与えた、身勝手な希望だ。
私は兵士だ。
お前はどうだ?
お前が————やるのだ。
そうだ、銃を構えろ。
————そうではない。苦しめる気か?
怒りにも依らず、憎しみにも哀れみにも依らず、粛々とやれ。
————————ああ——そうだ。
我々は…………兵士だ。




