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豊臣秀頼に転生!え?思ってたのと違う  作者: 水武九朗


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1564年(永禄7年) 丹羽との邂逅

新たに築かれた小牧山城は、防衛拠点と支配拠点の両方を兼ね備えた、信長様の望みを十分に満たすモノであった。


犬山攻めはそれまでの佐久間殿にかわって、丹羽五郎左にわごろうざ殿が小牧山築城の功をもって指揮を執る事になった。

すると、近くの小牧山へ拠点が移ってきた効果なのか、小口城主の中島豊後守(ぶんごのかみ)は城を明け渡し犬山城へと退却してく。


小口城陥落を機に、織田軍は犬山城攻めへと移行する。

再び信長を総大将として全軍で犬山城を取り囲む。さらに、小口城主だった中島豊後守(ぶんごのかみ)が、丹羽五郎左にわごろうざ殿が既に調略済みで、犬山城の内部から城門を開け放ち、織田軍に合流。この契機に他の織田軍が城内へ突入し、首魁の織田信清おだのぶきよは逃亡。


反乱から3年掛かりで、犬山謀反は終盤駆け足の如く鎮圧されたのだった。



「この度の犬山の反乱鎮圧、やはり第一の功は五郎左ごろうざ殿であろう。小牧山の築城に始まり、豊後守ぶんごのかみの調略、犬山の城門が開け放たれた時の衝撃は、もう開いた口がさらに開き申した。がっはっは」


こう言い放ったのは、犬山攻めの指揮を外された佐久間さくま半羽介はばのすけ殿だ、というのを聞いた時は『お前が言うのか』と口に出して言ってしまいそうになった。


そうしてようやくというか、とうとう美濃の一色と本格的に衝突する事になる。


そして、その主力として丹羽にわ殿という一手が、織田勢に加わる事となった。この時期から、丹羽にわ殿が信長様に呼ばれて登城する機会が増え、自然と馬回りや小姓との接点も増えていった。


「美濃攻略は、力攻めはいけません。時間を掛けて調略により国を手に入れるが上策です。稲葉山以外全てを調略し尽くす程に。一色の子倅こせがれは、国の治め方を解っておりません。その子倅こせがれに対する不信に便乗して美濃を信長様の国とする事です。さすれば美濃は、これから国土を広げてゆく信長様の、第2の拠点となりましょう」


この丹羽にわ五郎左ごろうざ殿の信長様への進言が、そのまま美濃攻略の方針となった。


一度、丹羽にわ殿と城内ですれ違った事がある。その時の事はとても印象深く、記憶に残っている。


それは、何度も行った取次の中の一度で、最も疑義を向けられた時でもあった。


丹羽にわ殿はこちらでしばしお待ちください」


「はい。ただ待っているだけだと勿体もったいない。では貴方、すこし話し相手になっていただけますか?」


「は?それは構いませんが」


「馬廻りのあなた、城でも戦場いくさばででも何度も見かけてはいるのですが、お名前を伺っても?」


毛利河内守もうりかわちのかみです。戦場でもお目にかかっているとは、恐れ多い」


名前を伝えると、言葉遣いは変わらないが、視線は、それまでの和やかさが無くなる。


「ほうほう、あの、ですか。お名前は色々伺っておりましたよ。それこそ、何度も耳に入ってきました」


「それは恐縮です。一体、どのような事を言われているのか知るのは怖いですがね」


「聞きたいですか?」


「差支え無いのであれば」


此度こたびの犬山の反乱、起こる前に私が聞いていたのは、旗頭としてあなたを担ぎ上げる、と。実際に反乱が起きると、貴方は変わらず馬廻りの職を変わらず務めていた」


なにそれ、知らない。


「今川の侵攻は、貴方の兄上の武衞ぶえい殿が服部党をそそのかし、海上に今川を招き寄せようとしていましたが、同様に貴方は一色に働きかけ、一色と今川で織田を挟み撃ちにしようとしていた、と。しかし、今川本陣へ攻めこむ善照寺ぜんしょうじ砦に集まった兵の中に、貴方がいた。織田を潰して尾張を手に入れるつもりだとすれば、一番危険な場所です」


初めて聞いた事ばかりで、言葉が出ない。


「……」


「さらに遡ると、信勝様の裏に貴方がいるのでは?と噂している者もいたのですよ。信長様が武衞殿を背後につけているのであれば、信勝様は貴方を尾張守護として自らは守護代として正当性を主張するだろう、と」


「……」


「あなたが毛利という、家臣団ですらない一配下の家に入る事を、良しとするはずが無い、というのが周りの、貴方と直接接しない人々の見立てだったのですよ」


「……」


「それに私も納得しました。あの武衞殿の子が今の立場に甘んじる訳はない。次に信長様に弓引くのは貴方だ、と確信しておりましたから」


「……」


「毛利の一族が、信勝様のがわだった家老の林殿と距離を縮めたのも、次の反乱の一手、と思っておりますよ。今の所は、ね」


今まで語られたのが、全て自分が知らない自分に関する事だ。


「わたしは、信長様へ背こうなどとは考えた事もございません」


「えぇ、そうなんでしょうね、今の所は。貴方がそう言おうと、貴方はいつ殿に背いても不思議ではない、というだけです。そして、それを常に気にして貴方を見ている者もいる、というだけの話ですから。お気になさらず、今まで通り殿に誠実にお仕えしていれば、なにもしませんよ、私は、ね」


「そ、それは、私が信長様へ背く『かもしれない』から、という理由で危険な目に遭わせようとする者がいる、という事でしょうか?」


目は俺を見据えたまま、口角だけが上がる。


「そうならないと良いですね。えぇ、本当に、そう思いますよ」


「……」


つまりは、丹羽にわ殿は俺がそうなろうと構わない、と思っているのだろう。

織田家に来て、馬廻りとなってからの働きも、その疑惑を払拭するに足る物では無いのだろう。



訪れた静寂に、足音が迫ってくる。


「おぉ、ここに居られましたか丹羽にわ殿。準備が出来ましたので、どうぞ殿の所へ」


「そうですか。では、話し相手になってくれてありがとうございます、河内守かわちのかみ殿。ではいずれまた」


そう言葉を残し、丹羽にわ殿は信長様の執務室へと向かっていった。



残された俺は、どれだけ自分が細い足場の上に立っているのかを思い知ったのだった。


人物紹介:

丹羽にわ五郎左ごろうざ丹羽にわ長秀。信長の兄、信広の娘を娶っており、米五郎左と言われるほど信長に必要とされた、信長家臣団を構成する主要人物。秀吉が名乗る『羽柴』の『羽』は丹羽から倣ったものと言われる。

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― 新着の感想 ―
普通は丹羽のように考えるね 本人の意思と無関係に担ぎ上げられる可能性もあるし
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