豊臣秀頼に転生?え?嫌だーーー!!
俺は、35歳になるしがない零細企業のサラリーマンだ。
生まれて直ぐに父親は無くなったみたいで、それ以来母子家庭として中小企業でフルタイムで働く母親に育ててもらった。育ててくれた母親には感謝してもしきれない。そんな中、何とか高卒で入った会社で歯をを食いしばりばがら働いてきて、職場では今やベテランの域になって、少しづつ親孝行もできるようになっていた。
そんな、凡百とある普通の独身中年サラリーマンな生活を送っていた俺だが、会社帰りに運悪く工事中のビルから落ちてきた鉄骨が背中に当たり、アスファルトに倒れる中、体内の血が流れ出ていくのを感じた。
薄れゆく意識の中、声が聞こえてくる。
『今回の人生、お疲れさまでした。短い人生の中、大変ご苦労されましたね』
なんだか、凄く事務的な口調の男性の声だ。こういう時って女神様とか老人みたいな神様じゃないのか?思ってたのと違う?!
(そ、そうなんだよ。おれ頑張った方だと思うよ)
あれ、なんだか俺も返事できる?のか?
『そんなあなたには、新たな一生を生きる機会を与えましょう』
(ほ、本当ですか!これが転生ってやつか)
『今世は身分に苦労したようですね。次は高貴な身分の生まれとしましょう』
(まじで!悠々自適か!!)
『親には恵まれたようですね。今回も同じように親に恵まれるようにしましょう』
(たしかに両親には感謝している。父親の顔も覚えてないけど)
『生きていくのに、実力さえあれば、と何度も思っていましたね。力がモノをいう時代に送りましょう』
(会社では、年齢や謎の慣習で苦労したし。たしかに、実力で生きて行ければ良いのかもしれない?!)
『兄弟がいない事を寂しく思ってもいたな。兄弟もつけましょう』
(自分の立場を共有できる人がいたら、と思った時も確かにあった。兄弟がいたら良いかもしれない)
『世間では無名でした。次の人生は著名な人として過ごしてください』
(え?俺有名人になるの?だれだろう?)
『これまでの条件を踏まて、次の人生は「豊臣秀頼」として生きてください』
(え?豊臣秀頼って毒親で短命で最後自害した人?!いやだ~!!!)
『では、新しい人生を頑張ってください』
(いやだ、燃える大阪城と一緒に自害するのは嫌だ~~!!!)
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次の瞬間、目に映ったのは大きな屋敷が燃えているのを、高台から眺めていた。
周りには、昔の着物?を着た女の人達に囲まれていて、一人、馬を引いている屈強な髭面の男が俺を見ていた。
「若殿、辛いでしょうが那古野に急ぎましょう。大和守の兵に見つかると、儂一人では皆を守り切れませぬ」
どうやら、燃えているのは大阪城じゃなさそう。そうなると、豊臣秀頼に生まれ変わるって言われたけど、誰に生まれ変わったの?思ってたのと違う~~~~!!!